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2019/7/26 21:30

eスポーツプレイヤーの喜びと執念、そのリアルをみた。「モンスト」のXFLAGによる総合エンタメイベント「XFLAG PARK 2019」レポ

GetNavi webでは、先日、モンスターストライク、アジアチャンピオンシップ関東予選の模様をお届けしました。その予選では、LM BULLDOZER、Catsの2チームが大会を制し、決勝への切符を手に入れましたが、7月14日、ついにそのチャンピオンを決めるアジア大会決勝が幕張で開催されたのです。前回同様、今回も、会場の熱気そのままのレポートをお送りします!

 

XFLAG PARKは、幕張メッセ8ホールを使用した一大イベント!

モンストアジアチャンピオンシップの決勝が行われたのは幕張メッセ。XFLAG PARKはモンストを中心としたコンテンツの一大イベントで、この1〜8ホールを使って行われた超大型イベントです。いまゲームの祭典、eスポーツのイベントとしてここまで大規模なものは国内では存在しません。その規模感をダイジェストになりますがご覧ください。

 

【XFLAG PARKフォトレポート】※GetNavi web本サイトでのみ閲覧できます

 

 

これら常設展示のほかに、氣志團やよしもと芸人、人気声優のステージが盛りだくさんで連日熱量の高い催しとなっていました。なかなか写真だけではその規模感、熱をお伝えしづらいのですが、現場での感想は素直に「こんなにモンストを好きな人たちがいるのか!」ということ。本記事で語るアジアチャンピオンシップのeスポーツとしての盛り上がりはもちろん、老若男女の人々がただゲームとしてでなく、アニメ、音楽、フードとカルチャーとしてモンストを楽しんでいるのです。モンストが大きく発展していることは知っていましたが、実際に目の当たりにした規模感は想像をはるかに超えていました。

 

熱狂のモンストアジアチャンピオンシップ決勝

 

多数のモンストファンを集めたXFLAG PARKのなかでも、最大のメインイベントがモンストスタジアムのアジアチャンピオンシップ決勝です。モンストスタジアムは、チーム対抗で競い合うタイムアタックバトル。本大会では大会指定のルールに則って、選抜したモンスターを使って4人1チームで戦います。

↑大会は、声優・小西克幸さんの朗読で幕を開けました

 

戦いは2Daysで行われ、まず初日に行われたのがタイムアタックラウンドです。各地域の予選を突破し、決勝進出を決めた10チームが、同一ステージのクリア時間を競い、2日目に行われるノックアウトトーナメントの組み合わせを決定します。

 

タイムアタックラウンドで下位になった2チームが優勝するには、トーナメントで1つ多く勝ち抜く必要があるほか、上位になればより下位のチームとトーナメントで当たれるため、初日から重要な戦いとなります。そのタイムアタックラウンドの結果は以下の通りです。

 

1ピクセル、1000分の1秒の世界で競い合う

2日目行われたのが決勝ラウンド。初日のタイムアタックラウンドで決定したトーナメント表にしたがって試合を行なっていきます。

 

タイムアタックラウンドと異なるのは、キャラクターピックがある点です。2チームがドラフト形式でキャラクターを選択し、重複するキャラクターは使用できません。自チームの望むキャラクターを選択できるかどうかがかかるために、大きな駆け引きが発生します。

↑会場の大型モニターに映された、ピックシステムの解説

 

最初に登場したチームは、関東予選Bブロックで圧倒的な強さを見せつけた、LM Blludozer。モンストプレイヤーの投票でも、最大の優勝候補と目されていたチームです。しかし、そんな大本命チームが今大会では精彩を欠きました。3本勝負の初戦からミスが出て、北海道・東北ブロックチャンピオンの早撃ち0.3秒に劣勢の戦いを強いられると、2戦目も僅差の戦いで破れ、本命チームがいきなり敗退してしまいます。

関東予選を観戦した筆者も、LM Blludozerが優勝筆頭候補のチームだと感じていただけに、この敗退には驚かされました。高い実力を誇るチームでも、ひとつのミスから簡単に敗北してしまうという事実に、eスポーツの厳しさを感じました。

 

↑大会屈指の人気チーム、LM Blludozer

 

チームメイトをして「天才」といわしめるプレイングを誇るLM Blludozerのリーダー・ありすぅさんは、沈痛な表情でミスを謝罪。さすがに落胆を隠せない様子でした。一方の早撃ち0.3秒リーダー・ふうやさんは勝利者インタビューに「今日はボルダリングを我慢してきた」と答え、会場を笑わせる余裕を見せました。

 

↑勝利者インタビューで会場を笑わせる早撃ち0.3秒のリーダー

 

続いて登場したのが、香港ブロック代表の台妹愛港彈と、中部予選Aブロックを勝ち抜いたとろけるフレンチトースト。この勝負で注目したのが台妹愛港彈の彈彈哥選手です。というのも彼、2人目のお子様が誕生するタイミングでの出場だったそう。「奥さんに勝ったら日本へ行っていいよ」と言われ、決意をしての来日でした。

↑試合中の一コマ。左下が、彈彈哥選手

 

しかしバトルでは、とろけるフレンチトーストがミスのない展開で初戦を圧勝。2戦目こそ、台妹愛港彈が一矢報いましたが、3戦目は超僅差の勝負をとろけるフレンチトーストが制し、準々決勝に駒を進めました。

 

試合に敗れこそしましたが、日本チームとも十分に渡り合える実力を見せた台妹愛港彈。モンストの人気はもちろん、プレイヤーの洗練性も海外まで十分波及していることを示しているように感じられる試合でした。ちなみに、台妹愛港彈の選手によると、「日本のチームのキャラクターピックのやり方は別次元」だとか。モンストにも国民性の違いが現れているようです。

 

↑勝利者インタビューに応じる、とろけるフレンチトーストのリーダー

 

ベスト8の2試合目は、優勝候補LM Blludozerを倒して勝ち上がった早撃ち0.3秒と、中部予選Bブロック優勝のどんどんススムンガの対決です。初戦、たった1つのミスを突いたどんどんススムンガが快勝したあと、2戦目は大いに盛り上がる試合となりました。

その勝敗は100分の2秒差を争う超絶僅差の決着となり、数分に渡る判定の結果、勝利したのはどんどんススムンガ! 判定中、選手たちは双方祈るような様子でしたが、時には両チームのメンバーが会話し、談笑する場面も。お互いにできることをやりきった達成感ゆえの笑顔だったのでしょう。結果として敗着となった 早撃0.3秒のリーダーは敗戦後のインタビューで号泣しながらどんどんススムンガにエールを送りました。きっとこの上ない悔しさだっただろうと思います。モンストの魅力と、それにかける選手の想いが読み取れる試合でした。

↑対戦後、早撃ち0.3秒のリーダーは涙を流しながらも、相手チームにエールを送りました

 

次の試合には、タイムアタックラウンド首位の関東予選Aブロック覇者Catsが登場。台湾代表の邊緣肥宅と激突します。実はこのCats、今大会が初出場。リーダーは「強いCatsをやっとみんなに見せられる」と並並ならぬ自信を持っています。国内モンストプレイヤーによる投票で2位と、下馬評も高いチームです。関東予選大会を観戦し、Catsへのインタビューもしていた筆者は、彼らの勝負にかける執念を知っています。応援する気持ちを込めての観戦となりました。

↑Catsのメンバー。勝利への執念は人一倍強いチームです

 

↑邊緣肥宅の入場シーン。入場シーンも毎回豪華な演出です

 

試合では、Catsが3本勝負の2本目を落とすも、残る2戦は圧勝を収めました。毎日3時間以上の練習を積んできたというCats、リーダーの言葉に違わぬ強さだったといえるでしょう。

 

ベスト4を決める最後の試合でようやく初登場したのが、九州予選覇者・ろくまる◢⁴です。初戦を制した、とろけるフレンチトーストとの対戦カードになりました。

 

試合では、初戦から0.1秒差の決着となり、会場は大盛り上がり。序盤はリードしていたのはとろけるフレンチトーストでしたが、最後の1手を慎重に行ったところでろくまる◢⁴が逆転。差し切った形となりました。続く2戦目も制したろくまる◢⁴。ベスト4最後の席をゲットしています。

 

敗れたとろけるフレンチトーストのリーダー・えむさんは、試合後のインタビューで「負けたけれど嬉しいです」と笑顔で語り、敗れながらも笑顔を見せてくれました。「やれることをやったうえで負けた」という感情があったのだと思います。インタビューでの彼の様子は、真剣勝負を見届けた筆者をも、清々しい気持ちにしてくれました。

↑勝利を決めた、ろくまる◢⁴のメンバーたち

 

大会ももう準決勝。もうアジアの頂点はすぐそばにきています。

ここまで駒を進めたのは、どんどんススムンガ、アラブルズ、Cats、ろくまる◢⁴の4チーム。先に行われたのが、どんどんススムンガとアラブルズの対戦です。アラブルズは大会唯一のプロチームですが、ここでリードを取ったのはどんどんススムンガでした。先ほどの僅差の戦いを制したことから緊張もほぐれたのか、全くミスのない立ち回りを見せます。1戦目で快勝を収めるとすると、2戦目はアラブルズにミスが出て、「夢にまで見た」という決勝進出を決めました。

↑「夢にまで見た」決勝進出を決めた、どんどんススムンガのリーダー

 

もうひとつの準決勝は、Catsとろくまる◢⁴の顔合わせ。ここまで、上位チームはキャラクターピックの先攻を取ることが多かったのですが、ここでCatsは「もちろん後攻」を選択し、会場を沸かせます。そして初戦を制したCats。まさに「魅せて勝つ」快勝劇を見せてくれました。続く2戦目をダウンで落としてしまったものの、3戦目は相手のミスにつけこんでCatsが決勝に進出!初出場での優勝まで、あと白星1つとしました。

これを観た筆者も、すごいぞCats!と、筆者もCatsを応援するテンションに。

↑Catsの勝利に会場も盛り上がります

 

そして、ついに決勝戦、泣いても笑っても、これで最後の1戦です。どんどんススムンガのリーダーが「この勢いで中部にトロフィーを持ち帰る」と意気込みを語れば、Catsも「勢いなら僕らのほうがあるので全力で勝たせていただきます」と応じます。両チームともに笑顔を見せますが、見えない火花がばちばち散っているようでした。

↑決勝戦前、両チームの入場の様子

 

勝負で先行したのはどんどんススムンガ。解説に「かなり早い」と言わしめる立ち回りを見せ、危なげなく初戦を制します。すると2戦目はCatsに痛恨のミスが! 途中で一度挽回したものの、最後はどんどんススムンガがねじ伏せ、2連勝でアジアのチャンピオンの座を手にしました。

↑対戦中の一コマ。Catsリーダーの♡るんるん♡さんは常に立ったまま端末を操作しているのが印象的です
↑どんどんススムンガ、勝利の瞬間!

 

どんどんススムンガのリーダー・ぴよまるさんは感極まった表情で「いままで何度も挑戦してきたので、うれしい」、「プロになるだけでなく、幕張の全国1位の夢がまで叶った」と喜びを語りました。惜しくも敗れたCatsも、「相手がとても強かったので終始勝てる気がしなかったです。優勝おめでとうございます」と敗戦の弁を述べています。

↑優勝トロフィーを掲げるどんどんススムンガの4人

 

今大会通して筆者の印象に残ったのは、真剣勝負の末に生まれた敗者の美しさ。敗戦後のインタビューでは、「楽しかった」「強かった」「次、頑張ってください」など、相手を讃えるコメントが多く、対戦後にはハグをする姿も見受けられました。

 

もちろん選手たちの技術にも脱帽の一言です。1000分の1秒の時間差、1ピクセル、2ピクセルの誤差で勝敗が分かれてしまう世界ゆえ、プレイングにはとてつもない精緻さが求めれます。解説のタイガー桜井さんによれば、1回13時間もの練習をするチームもあるそうです。今大会の優勝賞金は4000万円とかなりの金額ですが、彼らの努力を鑑みれば、それに見合ったものだと納得させられました。

 

↑今大会上位のチームには、賞金以外にも多数の副賞が贈られます
↑しかし大きいのは何といってもこれ!4000万円の賞金です

 

プロライセンス取得は、4000万円の賞金よりもうれしい

表彰式では、まだ”不慣れ”なところも見せたどんどんススムンガのメンバー。彼らは、囲み取材で意外なことを語りました。「4000万円の賞金よりも(今回の大会結果により手に入る)プロライセンスのほうがうれしい」というのです。

↑笑顔にもまだぎこちなさが残るどんどんススムンガのメンバー。左端がリーダーのぴよまるさん

 

プロライセンスとは、日本eスポーツ連合が発行しているもので、「国内eスポーツの発展に寄与」するなど、一定の条件をクリアしたプレイヤーに交付される、いわば”人気・実力を兼ね備えているというお墨付き”のようなもの。モンストにはプロだけが参加できるツアーがあるなど、プロライセンスを得ることで活動の幅が広がります。今大会では、上位4チームにこのプロへの推薦権が与えられることになっていました。

 

どんどんススムンガのリーダー・ぴよまるさんは、そのプロライセンスについてこのように語ります。

「モンストが好きだし、もっと流行らせたい。そんな活動をするにはプロライセンスが必要でした。イベントをしてもプロでないとお客さんが集まらないし、YouTubeで活動をしているメンバーもいるけれど、プロじゃないうちは視聴者がなかなか増えないですし。そういった意味では、これからいろいろできると思うとうれしいですね」

試合の勝因についても、「とても僅差な試合(100分の2秒差で決着した試合)で勝って、当初の目標だったプロライセンス獲得が叶いました。それで緊張がほぐれて『あとは楽しもう!』と気持ちを切り替えられた」と、やはりプロライセンスの存在が彼らにとっては相当に大きかったよう。

4000万円にも勝る彼らのモンスト愛が優勝を引き寄せたのでしょう。

↑報道陣からの質問に「なんて答えたらいいんだろう」と頭を悩ませるシーンも

 

ちなみに、今回初優勝&プロ入りを飾ったどんどんススムンガのメンバーのなかには、まだインタビューに不慣れなのもあって、報道陣を前にしてなかなか言葉が出てこない場面もありました。これからプロとしての活動を続けていくなかで、だんだん慣れも出てくるのかなと考えると、今回の新王者誕生の瞬間を取材した筆者としては、これから”プロとして成長する”どんどんススムンガを追いかけていきたいと思わされました。

 

4万人超が来場したという今回のXFLAG PARK。日本のeスポーツシーンを牽引するこの盛り上がりが、来年以降にも続いていくことを願ってやみません。

 

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