スポーツ
F1
2019/7/27 18:15

ホンダだけじゃない! マツダ、日産がモータースポーツで相次いで優勝した背景

改めてホンダのF1復帰後初優勝を振り返ってみると、いかに快挙な出来事だったかが浮かび上がる。なにしろ、2019年のF1シーズンは、メルセデスAMGが支配していたのだ。ホンダが優勝したのは6月30日の第9戦オーストリアGPだったが、それまでの8戦はすべて、メルセデスが優勝していた(L・ハミルトン6勝、V・ボッタス2勝)。他のチームと競い合った末の優勝ではなく、ほぼ独走状態だった。

メルセデスの快進撃に歯止めを掛けたのが、ホンダのパワーユニットを搭載するレッドブルだったのだ。ドライバーはM・フェルスタッペンである。シーズンを支配してきたメルセデス(に加えフェラーリも)をコース上で追い抜いた末の優勝であり、上位が脱落した結果転がり込んだ優勝とは違って価値がある。

ホンダが初優勝を手にすることができた要因は、いくつか挙げることができる。まずはドライバーの力量。思い切りがよく、スピードがあり、若い(1997年生まれ)のに冷静沈着に判断ができるフェルスタッペンでなければ、今回の優勝はありえなかっただろう。

 

メルセデスがオーバーヒートの兆候に悩んだり、フェラーリがタイヤの性能劣化に悩んだりして、フェルスタッペンの攻めを防ぐことができなかったのも勝利の要因だ。これは、ドライバーの力もさることながら、パワーユニットの性能や耐久信頼性、車両のセットアップや戦略など、ホンダやレッドブルの力ともいえる。オーストリアでは、ドライバー、パワーユニットサプライヤー、チームの三拍子がそろい、強豪メルセデスやフェラーリを上回るパフォーマンスを見せつけることができたのだ。

 

タイミング良く(?)、ホンダが新開発のパワーユニットを前のグランプリに投入していたのも大きい。ホンダは第8戦フランスGPで、今季2回目の進化バージョンである「スペック3」のパワーユニットを投入していた。ホンダの航空エンジン研究開発部門の知見を入れて効率を高めたターボチャージャーを採用したのが特徴だ。

オーストリアのサーキットは海抜約700mの高地にあるため、平地に比べ気圧が低い。気圧が低い状況で平地と同じだけのパワーを出そうとした場合、ターボは余計に仕事をしなければならない。そんなとき、ターボの効率が高いと負担が軽くて済むのである。前のGPで効率の高いターボを投入したのが功を奏したのだ。

 

また、レース中の気温は33℃を超えたが、スペック3を投入したフランスGPも高温に見舞われた。1週間前に高温状況を体験した際には狙いどおりのパフォーマンスを発揮することができなかった。その反省から、オーストリアGPまでの1週間で制御データを見直し、ポテンシャルを引き出せる状態に態勢を整えていた。これも大きかった。

 

見方を変えれば、2週間続いた高温がホンダを鍛えると同時に、助けたともいえる。こうしてさまざまな条件が重なり、ホンダにF1復帰後初優勝をもたらした。勢いに乗ったのだろう。7月14日に決勝レースが行われた第10戦イギリスGPでは、ひと皮むけたレッドブルの姿があった。

3番手を走るS・ベッテル(フェラーリ)を追い抜いた直後にベッテルに追突されてコースアウトし、表彰台を失う不運はあったものの、フェルスタッペンは5位に入賞。レース序盤はフェラーリのC・ルクレールと数周に渡って激しいデットヒートを繰り広げた。フェラーリとホンダ(のパワーユニットを搭載した車両)が互角に戦うなど、少し前までは考えられなかったことだ。今季ずっと低調だったチームメイトのP・ガスリーが今季最上位かつ自己最上位タイの4位に入ったのも、明るいニュースだ。

 

オーストリアでの優勝でチームの士気も高まったのだろう。レッドブルはタイヤ交換を行うピットストップ時の静止時間において、これまでの記録を0.01秒短縮する1.91秒の新記録を打ち立てた。オーストリアでの初優勝で、チームが波に乗っているのは間違いない。7月28日に決勝レースが行われる第11戦ドイツGP以降の戦いぶりにも注目だ。

 

■“開眼”したマツダと後半から調子を上げた日産

初優勝を果たしたのはホンダだけではない。同じタイミングで、他の日本の自動車メーカーも初優勝を果たしている。マツダだ。マツダは2017年から、北米レースシリーズのIMSA DPiクラスにRT24-Pと名づけたプロトタイプ車で参戦している。

 

初優勝を遂げたのはなんと、ホンダがF1復帰後の初優勝を遂げたのと同じ、6月30日のことだった。「ワトキンスグレン6時間」(ニューヨーク州)において、マツダ・チーム・ヨーストから出走した2台のRT24-Pが、ワン・ツー・フィニッシュを果たしたのだ。初優勝で開眼したのはホンダと同じ(?)で、7月7日にカナディアンタイヤ・モータースポーツパーク(カナダ・オンタリオ州)で行われたレースでもワン・ツー・フィニッシュを果たしている。

7月13日には日産が、今季から参戦しているフォーミュラEで初優勝を果たした。第12戦ニューヨークでの出来事だ。ポールポジションからスタートしたS・ブエミは、決勝レースで一度もトップの座を譲ることなく、フィニッシュしたのである。翌14日に行われた最終戦でもブエミは3位表彰台を獲得し、ドライバーズランキング2位の好成績を残した(チームランキングは4位)。

 

第8戦を終えた時点でのブエミのランキングは13位だったので、いかに後半戦で調子を上げたかがわかる。今秋から始まる新しいシーズンに向けて、明るい材料だ。

 

【著者プロフィール】

モータリングライター&エディター 世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『トヨタ ル・マン24時間レース制覇までの4551日』『F1テクノロジー考』『ル・マン/WECのテクノロジー2018』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など

 

世良耕太のときどきF1その他いろいろな日々:http://serakota.blog.so-net.ne.jp/

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