文房具
手帳
2018/3/18 19:00

「異常」なほど手帳好き? 日本人はなぜ手帳を使い続けているのか?

日本の大型書店、文房具店、ロフトやハンズなどに行くと、必ずといっていいほど手帳コーナーがあり、様々なタイプの手帳が売られています。毎年市販用と法人用を合わせて1億冊程度の手帳が出荷され、推定ですが440億円前後の市場規模となっています。

例えば、銀座伊東屋には約3,500種類の手帳が揃いますし、糸井重里氏が立ち上げた「ほぼ日」は、全体の7割の売上を占める「ほぼ日手帳」人気が牽引し、2017年に上場を果たしました。「逆算手帳」「マンガ手帳」「鉄道手帳」「電気手帳」「自衛隊手帳」「阪神タイガース手帳」「子ども手帳」などなど、オリジナリティ溢れる手帳の数々はもはや数え切れないほど……。ちなみに私自身が最初に買った手帳は、サンスター文具の「スパイ手帳」。当時の小学生の必須アイテムでした。

 

書籍、雑誌、ウェブメディアでも「どのように手帳を使うべきか」「どの手帳を選ぶべきか」などが様々な観点から論じられています。特にビジネスパーソンにとっては手帳術は仕事術の一つであり、手帳が使いこなせる人はできる人というイメージが出来上がっています。

 

■諸外国における手帳の位置づけ

海外にも手帳はあります。というか、日本の手帳の起源は、福沢諭吉が1862年にフランスから持ち帰った「西航手帳」とされています。私も昔使っていましたが、英国で1921年に設立されたシステム手帳の元祖「ファイロファックス」は代表的なブランドです。また、最近ではブルックリンのデジタルデザイナー、ライダー・キャロル氏が発案した「バレットジャーナル」という手作り手帳法にも人気があります。

 

しかし、私自身長い間外資系企業で働いてきましたが、海外の人は日本人ほど手帳を使っていません。デジタルでのスケジュール管理が普及する前から、もともと日本人が使っているようなスケジュール管理のための既成の手帳というよりもノートに自由に書いている人の方が多かった印象です。

 

お隣の中国でも最近日本から逆輸入された(真偽のほどはわかりませんが、中国メディアによると「手薄」と呼ばれる手帳がもともと中国にあって、それが日本に輸出されて根付いたらしい)手帳文化が注目をされているとのこと。どちらにしても、手帳は海外から輸入されて、日本で独自に進化した文化とも言えるでしょう。

 

■スマホがあれば手帳なしでもやっていける

手帳の機能を分解してみると、基本的に以下に分かれます。これらは特に入力時での使いやすさや使用率の違いはあるものの、ほぼスマホで置き換えることができます。一例として、私が使用しているiPhoneアプリで示してみました。

 

・スケジュール管理→カレンダー、Googleカレンダー
・TO DO→リマインダー
・アドレス帳→連絡先、LINE、Messenger、Eightなど
・メモ→メモ、CamScanner(カメラで撮影した文書をOCRで認識させるアプリ)
・便覧(例:路線図、度量衡表など)→Googleマップ、便利帳、手帳の付録、Google検索

 

クラウド化ができるようになった現在、データ消失のリスクも手帳より低いと言えます。手帳使用者でもアドレス帳はスマホに依存している人がほとんどでしょう。便覧も手帳的な情報を掲載したアプリが存在し、欲しい情報はググった方が早いでしょう。好みはあるでしょうが、デジタル手帳とも言えるスマホがあれば、アナログ手帳がなくてもやっていけます。

 

■それでも手帳を使い続ける理由

こんな状況の中、手帳はやや頭打ちとは言えるものの、市販用を中心に高いレベルで安定した市場を維持しています。また、もともと手帳が日本ほど普及していない海外に進出すれば伸び代もあるでしょう。手帳にとってスケジュール管理は毎年買ってもらうための最重要コンテンツです。2016年のDIMSDRIVEの調査によると、スケジュール管理には以下の方法が使われています(スケジュール管理をしない24.3%は除く)。

 

・手帳・カレンダーなどのアナログのみを利用 46.3%
・併用するが、アナログを主に利用 18.0%
・併用するが、デジタルを主に利用 17.2%
・スマホ・パソコンなどのデジタルのみを利用 18.5%

 

全体としては手帳などのアナログがまだまだ優勢です。女性のアナログ比率は男性よりもかなり高く、30代以降はアナログ比率は高くなる傾向です。複数の調査結果や記事から、アナログでスケジュール管理をする理由として代表的なものとしては以下となります。

 

・《惰性》使い続けている・慣れている(旧来のものを使い続けようとする“ラガード”の典型的な理由)
・《便利性》手書きの方が楽・早い(場合によるが、スマホは改善の余地あり)
・《記憶性》書くことによって覚えられる(脳科学的にはそうだけど、書かないと覚えられないわけではない)
・《不安》スマホは故障したりデータがなくなるかもしれない(手帳も落としますけどね)
・《体裁》取引先などの前でスマホを使うのは気がひける(えー、そうなの?)

 

最後の「取引先などの前でスマホを使うのは気がひける」と考える人が若い人ほど多いというのは結構驚きです。実際に「営業先などでスケジュール確認や記録でもスマホを使うのは失礼」という意見の人もいるようです。お客様には気を使うべきみたいな思考回路なんだと推測しますが、「そんなもっともらしいマナーよりも、主体性を持って物事の本質を考えようよ!」というのが私の本音です。

 

■手帳市場“安定”の裏には…

スマホが普及し始めたのが2011年あたりですから、まだ10年も経っていません。もともと手帳文化が根付いていた日本ではゆっくりとスマホに移行しているのでしょう。でも、手帳市場は安定しているというのは不思議ですね。仮説ですが、手帳メーカーの努力や書店などとの連携(7割程度の手帳はISBNコードがある定価販売の書籍)によって、例えば小学生への普及など、スマホへの移行を補う形で新しい手帳ユーザーを獲得している可能性が高いです。

 

手帳メーカーは「スマホが普及したからといって、紙の手帳が危機にさらされているわけではありません」などと強気の発言もしていますが、今後も、スマホが改良され続け、会社とプライベートのスケジュールが一括管理できるようになると、スケジュール管理のツールとしては若年層を中心にジワジワとデジタルの比率が高くなっていくと予測します(スマホとの親和性がいいアドレス帳はすでにデジタルが主流)。

 

■という私も手帳を使っている

「そんなことを言っているお前は手帳を使わないのか?」と言われてしまいそうですが、実は私も手帳を使っています。しかも2冊使い!

ただ、手帳の機能としてあげたものは、基本的にスマホ・PCを使っています。昔は毎年ダイアリー用リフィルも買っていましたが、デジタルとアナログで併用すると効率も悪く、ミスも起こり得るのでやめました。しかし、もともと文房具が好きというのもありますが、カスタマイズが楽しいトラベラーズノートの「パスポート」と「レギュラー」の手帳2サイズをカバンに入れています。

 

パスポートサイズにはジッパーケースを挟んで、名刺、付箋、切手、替芯など入れています。名刺入れの方が小さいですが、見つけやすい大きさというのも気に入っていて、たまに走り書き程度のメモにも使います。長細いレギュラー・サイズはA4を三つ折りにして入れるのにちょうどいいサイズなので展示会の招待券やe-チケットなどのプリントを入れておきます。こちらにもジッパーケースを挟んで、財布に入りきらないカード類を分類して12個のポケットに入れています。以前よりもカードが見つけやすくなりました。まだまだ電子化対応には限界があるお薬手帳も挟んでいます。トラベラーズノートはパーツも多く、挟んだり入れたりしやすいので、“収納できる手帳”としてオススメです。

 

スケジュール管理はスマホ派が増えていくとの予想はしているものの、手帳が絶滅するわけではないでしょう。手帳の新しい使い方、便利な使い方などを考えていくと、愛着が持てるパーソナルなアイテムになると思います。例えば、何度でも使える未来のノート「Everlast」というのがあります。フリクションペンを使えば、濡れタオルで消せて、データ化して保存できるノートです。トラベラーズノート・サイズの同様の機能を持ったノートがあれば、ぜひ試したみたいです。

 

【著者プロフィール】

四方宏明

1959年京都生まれ。神戸大学卒業後、1981年にP&Gに入社。以降、SK-II、パンパースなど、様々な消費財の商品開発に33年間携わる。2014年より、conconcomコンサルタント、WATER DESIGN顧問として、商品、サービス、教育にわたる幅広い業種において開発コンサルティングに従事する。パラレルキャリアとして、2001年よりAll Aboutにてテクノポップ・ガイドとしてライター活動を始め、2016年には、音楽発掘家として世界に類書がない旧共産圏の電子音楽・テクノポップ・ニューウェイヴを網羅する『共産テクノ ソ連編』を出版。モットーは「“なんとなく当たり前”を疑ってみる」。

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