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2018/2/25 15:00

神奈川東部方面線/おおさか東線/七隈線ーー開業が近づく「鉄道新路線」3選+α

10年、20年という長い期間をかけて進む鉄道の新線計画。気の長い話ながら、工事が終了に近づいた路線もある。今回は開業を数年後に控えた新線づくりの進捗状況と、未来に向けて描かれる代表的な新線プランをチェックしていこう。そこには鉄道新線による“夢の未来図”も見えてくる。

【その1】相鉄線とJR線、東急東横線を結ぶ「神奈川東部方面線」

本サイトでも以前に新駅の開業情報をお伝えしたように、首都圏で最も完成に近づいている新線が神奈川東部方面線だ。鉄道・運輸機構が整備主体となり、西谷駅〜羽沢横浜国大駅間の2.7kmと、羽沢横浜国大駅〜日吉駅間の10.0kmの工事が進められている。

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相模鉄道(以下・相鉄と略)は横浜駅〜海老名駅間の本線と、二俣川駅〜湘南台駅間のいずみ野線の計35.9kmの路線を持つ。相鉄は大手私鉄としては珍しく、他社との乗り入れを行っていない。将来に向けて、他社と相互乗り入れを行い、自社の電車が東京の都心まで走ることは、相鉄の長年の悲願でもあった。

 

今回の神奈川東部方面線と名付けられた新路線の建設により、いよいよ相互乗り入れが可能になる。

 

工事はまず西谷駅〜横浜羽沢駅間が先行して行われ、2019年度に完成の予定。途中に羽沢横浜国大駅もつくられる。同駅の先でJRの東海道貨物線とのアクセス線が造られ、JRへの路線との相互乗り入れが可能になる。

 

アクセス線がつながるJR東海道貨物線は、横浜羽沢駅からトンネルで横浜市内を抜け、京急の生麦駅付近で地上に出る。完成後の具体的な乗り入れ案はまだ発表されていないが、東海道貨物線がその先、横須賀線とレールがつながっていることから、横須賀線・湘南新宿ラインへの乗り入れが検討されているようだ。

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↑相鉄本線の西谷駅からのトンネルはすでに完成し、羽沢横浜国大駅の地下ホームにはすでに線路が敷かれている。駅の先でJR線とのアクセス線が設けられる

 

新駅の羽沢横浜国大駅の先の東急東横線の日吉駅までの路線も進められ、2022年度に完成の予定だ。すでに東急東横線に乗り入れ用の20000系も誕生し、相鉄線内を走り始めている。ちなみにJRへの乗り入れ用には既存の相鉄10000系や11000系が使われると見られる。両車両ともJR東日本のE231系やE233系をベースに造られていて、共用しやすいからだ。

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↑相模鉄道の新型20000系。東急東横線への乗り入れ用に造られた車両で、すでに2月11日から相鉄線内を走り始めている

 

当初の予定よりも1〜2年ほど、新線の完成が遅れたものの、新横浜駅や都心へのアクセスが便利になる。横浜市近郊に変革の波がやってきそうだ。

 

【その2】新大阪駅からの直通電車でより便利になる「おおさか東線」

大阪でも新線の工事が着々と進んでいる。大阪市の東側を走るJRおおさか東線だ。このおおさか東線、すでに片町線の放出(はなてん)駅と、関西本線の久宝寺(きゅうほうじ)駅間の9.2kmは2008年に開業している。2018年度中の開業を目指しているのが新大阪駅〜放出駅間11.1kmの北新線区間だ。

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おおさか東線の北新線区間だが、実は大半の区間、すでに線路が敷かれていた。吹田貨物ターミナル駅から百済貨物ターミナル駅の間を日々、貨物列車が往復する城東貨物線という路線がすでにあるのだ。

 

第三セクター方式の大阪外環状鉄道株式会社が、この城東貨物線の施設や用地を整備、さらに駅や新大阪駅へのアクセス線の建設を行った。

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↑放出駅〜久宝寺駅間のおおさか東線の南区間はすでに2008年に開業している。大阪外環状鉄道株式会社が線路や駅などを建設、JR西日本が電車の運行を行う

 

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↑城東貨物線の淀川橋梁。こうした既存の施設が生かされた。写真の撮影時は遊歩道が併設され歩けたが、現在は新線建設のため、歩行者は通ることができなくなっている

 

すでにある貨物用の線路を利用して旅客新線に整備して誕生するおおさか東線。なかなか手堅い新線建設の方法と言えるだろう。このことで大阪市の北東にある各区、東大阪市など沿線に住む人たちは、新大阪駅へのアクセスが非常に便利になる。

 

さらに同線は将来的に、大阪駅の北側にできる北梅田駅(仮称)にも電車が乗り入れる計画がある。不便だった地域が一転、脚光を浴びるというのも新線ならではの恩恵といっていいだろう。

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↑大阪駅の北側を通る梅田貨物線。貨物列車と特急の運行本数が多く、開かずの踏切となることが多い。渋滞を改善するため地下化、北梅田駅の工事が進められている

 

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↑2013年までは大阪駅の北側には広大な梅田貨物駅が広がっていた。この跡地に2023年度を目指して、北梅田駅の開業工事が進められている

 

2023年度に開業が予定される北梅田駅(仮称)はおおさか東線の乗り入れだけでなく、今後、大阪の鉄道網に大きな変革をもたらす可能性がある「なにわ筋線」の北側の起点となる。なにわ筋線は市内を南北に通る「なにわ筋」の地下を通る新線計画。北梅田駅から中の島を通りJR難波駅まで至る出来れば非常に便利な路線だ。

 

この計画にはJR西日本だけでなく、南海電気鉄道(南海)や、阪急電鉄も参画を予定しており、新線への期待は大きい。開業は2031年春とかなり先だが、同線ができ上がったら、大阪の人の流れも大きく変わっていきそうだ。

【その3】博多駅への乗り入れを目指す「福岡市営地下鉄七隈線」

福岡市は地下鉄路線が非常に便利な町だ。福岡空港から博多や天神といった繁華街へも地下鉄1本で行けてしまう。

 

とはいえ、福岡市営地下鉄のなかでも便利な空港線、箱崎線にくらべて、やや不便でもあったのが七隈(ななくま)線。現在の東の起点は天神南駅だが、空港線の天神駅からやや歩かなければならない。

 

そんな不便さを解消しようと現在、工事が進められているのが、天神南駅〜博多駅間の約1.4km区間。当初、2020年度までには延伸の予定だったが、道路の陥没事故が起きてしまい、開通は2022年度に延びる見込みとなったのがちょっと残念だ。

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↑福岡市営地下鉄七隈線の3000系。鉄輪式リニアモーター方式の電車で通常の電車よりもやや小ぶりだ。現在の七隈線の路線は橋本駅〜天神南駅間の12km

 

◆4:その他の新線計画の可能性は――?

新線計画といえば、大規模なリニア新幹線や整備新幹線が注目されがちだが、ここでは、都市で計画され、より現実化しそうなプランに関していくつか触れておこう。

 

■羽田空港アクセス線

現在、羽田空港へのアクセスといえば、東京モノレールと、京浜急行電鉄空港線の2つのルートがある。このルートに加えて、都心や成田空港へのアクセスをよりスムーズにしようという新線が「羽田空港アクセス線」だ。

 

計画された路線は、羽田空港新駅と、空港の北側にある東京貨物ターミナル駅の間の約6kmに新線をまずは敷設。この東京貨物ターミナル駅からJR山手線の田町駅へ、またりんかい線の東京テレポート駅と、大井町駅へのアクセス線を整備する。実は、この路線、非常に現実味があると思われる。

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↑JR田町駅東口から見た新線となるだろう予定の敷地。いまは使っていない東海道貨物線の路線が新線となる予定。2016年12月には草が生い茂り、廃線という趣が強かった

 

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↑上写真と同じポイントから見た2018年2月の状況。草がきれいに刈りとられ、東海道新幹線の線路に併設された元東海道貨物線の線路も見えるように整備された

 

上の2枚の写真はJR田町駅東口から見た状況だ。東海道新幹線に沿って敷かれた線路は、以前の東海道貨物線で、古くは汐留駅(1986年に廃止)〜東京貨物ターミナル駅間の貨物列車の運行に使われていた。1998年までは浜松町駅起点で貨車に自家用車を載せ、クルマの所有者は寝台客車に乗車するカートレインという列車の運行にも使われていた。それ以降、この東海道貨物線は休線扱いになっていた。

 

それから20年あまり、雑草が生え、荒れた状況が続いたが、久しぶりに訪れると、きれいに整備された状況になっていた。工事開始という状況ではまだないようだが、新線整備を進める布石ととらえてもよいのかもしれない。

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↑JR田町駅付近からは東海道新幹線の大井車両基地へ向けて伸びる引込線にそって東海道貨物線が伸びている。写真の手前側に東京貨物ターミナル駅がある

 

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↑りんかい線の東臨運輸区。この運輸区の西側に東京貨物ターミナル駅がある。りんかい線は当初、国鉄が武蔵野線なども含め東京外環状線として計画した路線を元に生まれた

 

今回のルートに含まれる東京臨海高速鉄道りんかい線は、国鉄が東京外環状線として計画した鉄道路線で、JR京葉線や東京貨物ターミナル駅へもアクセスできるように路線プランが立てられた。実はいまも新木場駅の先で京葉線と線路がつながっている。また上の写真の東臨運輸区は東京貨物ターミナル駅に隣接しており、線路をつなげるのも難しくない。

 

あとは東京貨物ターミナル駅と羽田空港新駅と新線、ならびに田町駅と、大井町駅のアクセス線の整備ということがカギになるだろう。2024年に全線開業という情報もある羽田空港アクセス線。より便利な空港アクセス線の開設だけに期待したい。

 

■宇都宮LRT(ライトレール)

宇都宮市のLRT計画が本格化しはじめている。路面電車というと古いイメージがつきまとうが、最近、各地の路面電車で導入されるLRT(ライトレール)形路面電車は低床形が主体。乗り降りしやすく、またスムーズに走る軽量形電車というイメージが強くなっている。

 

宇都宮市が新設する路線は、優先着工区間が14.6kmで、道路上を走る併用軌道区間が76%を占め、ほかが専用軌道区間となる。既存の鉄道路線などの転用をしないで、まったくの新規のLRT路線は国内では初めて。2022年の開業と一般の鉄道に比べて工期は短く、また工賃、車両導入など、LRT導入のハードルは鉄道に比べて低い。宇都宮の例が、どのような結果となるのか注目される。

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↑まずはJR宇都宮駅東口と隣接する芳賀町にある本田技研北門間の14.6kmの路線が優先整備区間とされた。将来は西口や東武宇都宮駅前などにも延伸が計画されている

 

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↑写真の福井鉄道のF1000形FUKURAMU(ふくらむ)や、富山ライトレールの低床形車両がLRTを導入するうえで参考にされた

 

■都営大江戸線の延伸計画

都営大江戸線は現在、都内をめぐる環状区間と都庁前駅〜光が丘駅間の路線がある。この光が丘駅から先の新線プランが立てられいる。路線は、ちょうど西武池袋線と東武東上線の中間にあたる地域を走り、JR武蔵野線の東所沢駅まで至る計画。現在は、まだ都や国が優先的に進めるべき路線として位置づけされた段階だが、練馬区の大泉学園町など、鉄道の最寄り駅まで遠い地区では、延伸促進運動が高まりを見せている。

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↑都営大江戸線の終着駅・光が丘。この先、埼玉県まで至る新線の計画が立てられている