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2018/3/4 19:00

【中年名車図鑑】セリカから完全独立、ソアラとも性格を変える…80年代後半、トヨタ・スポーツモデルの頂点はこうして生まれた

セリカのFF化が決まった1980年代初頭、その上級版であるセリカXXの次期型はFR方式のままで、しかも次期型ソアラ(Z20型系)と基本コンポーネントを共用化することに決定。セリカの呪縛を解かれた開発陣は、思い切ったハイパフォーマンス・スペシャルティカーの創出を画策した――。今回は「TOYOTA 3000GT」の別名で1986年にデビューした初代(輸出仕様を含めると3代目)スープラで一席。

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【Vol.57 初代トヨタ・スープラ】

 

セリカの上級モデルに位置づけられたセリカXX。その第3世代を企画するにあたり、開発陣には新たな路線が示される。ベースモデルとなるセリカの次期型(4代目。1985年8月デビュー)は、パッケージ効率に優れるFF方式を採用する。一方で長大なストレート6エンジンを搭載するセリカXXをFF化すると、意図する高性能な走りを実現できない。かといって、すべての機構を新開発するのはコスト面でも期間面でも無駄が多い。よって、FR方式の次期型ソアラ(2代目。1986年1月デビュー)と可能な限りコンポーネントを共用化して開発する――。セリカから完全に独立し、かつソアラと性格の異なる上級スペシャルティに仕立てることが、次期型セリカXXの企画方針となったのだ。

 

「これを機に、やりたいことを全部やろう」と考えた和田明広主担率いる開発チームは、次期型セリカXXを「国際水準を超える走りのハイパフォーマンスカー」に昇華させる旨を画策。具体的には、意のままに走るシャシー、スポーティかつパワフルな走りを生み出すエンジン、走りのロマンを感じさせる内外装デザイン、といった内容の実現を目指す。さらに、車名ついてはセリカXXの輸出モデルに冠していた、ラテン語で“超えて”“上に”を意味する「スープラ(Supra)」を日本仕様にも使う決定を下した。

 

■「TOYOTA 3000GT」のキャッチを謳って市場デビュー

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2代目ソアラとコンポーネントを共用しながらも、ソアラとは性格の違う上級スペシャルティを目指すことが要求された

 

トヨタの新しいハイパフォーマンス・スペシャルティカーとなるスープラは、A70の型式をつけて1986年2月に市場デビューを果たす。キャッチフレーズは「TOYOTA 3000GT」。名車としての誉れも高いトヨタ2000GTの、開発精神と魂を継承して現代に甦らせた新世代のGTであることを、このフレーズに込めていた。

 

シャシーについては、アルミ鍛造のアッパーアームや新開発のボールブッシュなどを組み込んだ専用セッティングの4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションを採用する。ホイールベースは2代目ソアラよりも75mm短い2595mmに設定。ダンパーの減衰力を自動制御する電子制御サスペンションのTEMSや制動時の安定性を高める電子制御式スキッドコントロール装置の4輪ESCも採用した。搭載エンジンは7M-GTEU型2954cc直列6気筒DOHC24V空冷インタークーラー付ターボ(230ps)を筆頭に、1G-GTEU型1988cc直列6気筒DOHC24V空冷インタークーラー付ツインターボ(185ps)、1G-GEU型1988cc直列6気筒DOHC24V(140ps)、1G-EU型1988cc直列6気筒OHC(105ps)という計4機種を用意。トランスミッションには7M-GTEUエンジンに電子制御式2ウェイ・OD付4速AT(ECT-S)、1G-GTEUおよび1G-GEUエンジンに5速MTまたはECT-S、1G-EUエンジンに5速MTまたは2ウェイ・OD付4速ATを組み合わせた。

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ディメンションは全長4620×全幅1690×全高1310mm。ソアラよりも短くて低い

 

エクステリアに関しては、ハイパフォーマンスを具現化するスタイリングで構成した。造形テーマは“ドラスティック・パフォーマンス・デザイン”。大きな平面絞りのフォルムを基本に、リトラクタブル式のヘッドライトや大きく傾斜したフロントピラー、太いセンターピラー、ラウンドしたリアおよびクォーターウィンドウなどを採用し、力感あふれ、かつ空力特性に優れるエクステリアを実現する。ボディサイズはソアラよりも短くて低い全長4620×全幅1690×全高1310mmに設定した。一方、内包するインテリアは“GTとしての充実感”をテーマにアレンジする。具体的には、大きなカーブを描く超ラップラウンド・インスツルメントパネルや走行状況が色でわかるパノラミックデジタルメーター、調整範囲を広げた新パワースポーツシートなどを導入し、高級感とスポーティ感あふれるキャビン空間を創出していた。

 

■エアロトップとワイドボディを追加設定

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“GTとしての充実感”をテーマにしたインテリア。大きなカーブを描く超ラップラウンド・インスツルメントパネルや走行状況が色でわかるパノラミックデジタルメーターを導入し、高級感とスポーティ感あふれるキャビン空間を創出した

 

新世代の高性能スペシャルティカーとしてデビューと同時に高い人気を獲得したスープラは、その新鮮味を失わないよう、積極的に車種ラインアップの拡充や機構面の進化を図っていく。まず1986年6月には、脱着式ルーフを備えたエアロトップを発売。1987年1月には7M-GTEUエンジンに5速MTを設定し、さらにブリスター形状のフェンダーを組み込んだ輸出型と同仕様のワイドボディ(全幅1745mm)仕様「3.0GTターボリミテッド」を追加する。同時に、1G-GEUエンジンの改良や一部装備の変更を行った。

 

1988年8月になるとマイナーチェンジを敢行し、内外装デザインの一部変更や3.0モデルの全車ワイドボディ化、1G-EUエンジンから1G-FEエンジン(1988cc直列6気筒DOHC。135ps)への換装、ターボエンジンのハイオク仕様化による性能向上(7M-GTEUが240ps、1G-GTEUが210ps)などを実施。また、同時期にグループAのホモロゲーションモデルとなる「3.0GT ターボA」を500台限定で発売する。搭載エンジンは7M-GTEUユニットをベースに専用開発のターボタービンや大型インタークーラーなどを組み込み、最高出力を270psへとアップ。さらに、フロントバンパー中央部への“ターボAダクト”の採用やブラック基調で彩ったボディカラーおよびアルミホイールの設定、8ウェイレザースポーツシートの装備などでスペシャル度を引き上げていた。ちなみに、ターボAは公認取得後の1988年11月に全日本ツーリングカー選手権第6戦インターTECに出場し、関谷正徳/小河等選手組(ミノルタスープラターボ)が第2位に入るという健闘を見せた。

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1986年6月に登場した、脱着式ルーフを備えたエアロトップ

 

1989年8月にも一部改良を行い、ボディカラーの設定変更や3.0ターボSおよびワイドボディの2.0GTツインターボの追加などを実施する。1990年8月になると、エンジンの変更をメインメニューとしたマイナーチェンジを敢行。トップユニットの7M-GTEUエンジンに代わって1JZ-GTE型2491cc直列6気筒DOHC24Vツインターボエンジン(280ps)が採用され、グレード名も2.5GTツインターボに改称する。同時に、ビルシュタインと共同開発した専用ダンパーやトルセンLSD、レカロ製シートなども設定した。また、このモデルからフロントエンブレムの七宝焼きがトヨタマークへと変更。コアなファンからは惜しむ声が多く聞かれた。

 

1991年8月には安全装備の拡充を主体とした一部改良を実施。そして、1993年5月になるとフルモデルチェンジを行い、日本市場においては第2世代、輸出モデルを含めると第4世代となるA80型系スープラに移行した。一方、A80がデビューしてからしばらくすると、A70が再評価されるようになる。曲線を多用したグラマラスなエクステリアのA80に対し、直線を基調としたシャープなスタイルを纏うA70は、いかにもスポーツカーらしい精悍なルックスで、またカスタム映えがしたのだ。80年代後半から90年代初頭のトヨタ製スポーツモデルの頂点に位置したA70型系スープラは、生産中止後もその車名通りに時代を“超えて”高い人気を維持し続けたのである。

 

【著者プロフィール】

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バイク数台。趣味はジャンク屋巡り。著書に光文社刊『クルマでわかる! 日本の現代史』など。クルマの歴史に関しては、アシェット・コレクションズ・ジャパン刊『国産名車コレクション』『日産名車コレクション』『NISSANスカイライン2000GT-R KPGC10』などで執筆。

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