乗り物
2018/4/15 18:00

自動運転中の事故の責任はメーカーか、所有者か、それとも…?

3月18日、米国アリゾナ州でウーバー・テクノロジーズ社が公道で実験走行中の自動運転車が死亡事故を起こしたことは、日本でも多くのメディアが報じたが、筆者にとっては別の意味で衝撃的だった。同じ3月上旬、ペンシルバニア州ピッツバーグの公道で同社の自動運転車についてプレゼンテーションを受けたあと、2人のオペレーターが乗る車両の後席で体験したばかりだったからだ。

すでにウーバーは遺族との間で和解したというニュースも入ってきており、今後は本格的な事故原因の究明に興味が移る。そんな中、日本政府が自動運転中の事故について、原則として車両の所有者に賠償責任を負わせる方針を決めたという報道を目にした。

 

この文面を見て、これでは自動運転車は売れないのではないかと思った人がいるかもしれない。昨年、新型A8を市販車初の自動運転車という触れ込みで発表したアウディは、自動運転システムが正常に作動しているときに万一事故が起きたら、責任はアウディが負うと明言しているからだ。

 

どちらが正しいのか。多くのクルマ好きはドイツのアウディの主張が正論だと思うかもしれない。しかしじっくり考えると、この2つのメッセージは基本的に同じ内容であることが分かる。

 

記事を読み進めると、今回の内容は運転席に人間が乗った状態で、基本はシステムに運転を任せつつ、システムが要求した際には人間が運転を肩代わりする自動運転レベル3が対象とある。アウディA8と同じだ。運転席に人間が座らないレベル4以上は今後検討するとしている。

 

筆者は昨年「これから始まる自動運転 社会はどうなる!?」という書籍を執筆するにあたり、多くの自動運転関連情報を集め調べた結果、システムが正常でありながら事故を起こした際はメーカー(製造者)、システムが人間に運転を代わるよう要請したのに人間がそれに応えず事故を起こした場合はオーナー(所有者)に責任があると考えている。

 

つまりアウディの主張は前者だけ、今回の報道は後者だけを取り上げているのである。報道では後半に、メーカーの責任は車両のシステムに明確な欠陥がある場合のみとするという文言もあるけれど、ジャーナリストの立場から言えば、両方を並立して書くべきだろう。

 

記事のほうは「自動運転であっても責任はオーナー」という点だけを最初に取り上げることで、センセーショナルな話題作りを狙った感がある。一方アウディの場合は記事ではないが、オーナーのメリットをアピールするために、あえて片方しか言及しなかった可能性がある。

 

人間のミスかシステムのミスかを判別するには、飛行機のフライトレコーダーのような記録装置が必要となるはずで、レベル3以上の自動運転車には搭載が義務付けられるだろう。また記録装置の解析には時間が掛かるので、事故のもろもろが決着するには、現在よりもむしろ時間を要するかもしれない。

 

解析の結果、メーカーにもオーナーにも責任がない場合も出てくる。外部からのハッカーの侵入だ。筆者は今後の自動運転社会で、これをもっとも危惧している。今年1月の仮想通貨流出事件では、セキュリティ対策が十分でなかったことが原因に挙げられたが、自動運転車では最悪の場合、命を落とす危険性があるだけに、この部分はメーカー側に万全な対策を義務付け、違反した場合には責任を負わせることが必要だろう。

 

ちなみに先月のウーバーの死亡事故の場合は、同じレベル3ではあるが、アウディを含めた一般的な自家用車とは状況が少し異なる。運転席に座るのはオーナーではなく、ウーバーが用意したオペレーターであり、車両の所有者はウーバー自身だからだ。これに限らずシェアリングで自動運転を提供する場合は、運転席に座るオペレーターがオーナーではなく、運行管理者がオーナーとなる。当然ながら運行管理者に責任が及ぶ場合も出てくるだろう。

 

つまり事故当時の状況によって責任問題はいかようにも変わる。ウケ狙いの断定型記事に左右されず、冷静な判断が求められていると言えそうだ。

 

【著者プロフィール】

モビリティジャーナリスト・森口将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・講演などで発表するとともに、モビリティ問題解決のリサーチやコンサルティングも担当。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。日本デザイン機構理事、日本自動車ジャーナリスト協会・日仏メディア交流協会・日本福祉のまちづくり学会会員。著書に『パリ流環境社会への挑戦(鹿島出版会)』『富山から拡がる交通革命(交通新聞社)』『これでいいのか東京の交通(モビリシティ)』など。

TAG
SHARE ON