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2018/4/28 18:00

いまのF1パワーユニットはプリウスと同じ!?  かつてのV12、V10時代から何が変わったのか

F1は2014年から、1.6L・V6直噴ターボエンジンにハイブリッドシステムを組み合わせたパワーユニットを搭載している。ハイブリッドシステムは2種類で、1つは運動エネルギー回生システムだ。トヨタ・プリウスなど、量産ハイブリッド車が積むのと同様のシステムと思えばいい。

運動エネルギー回生システムを構成するモーター/ジェネレーターユニット(MGU-K)の出力は、レギュレーションで約160馬力に規制されている。エンジンの方は2018年現在、800馬力は出ている(熱効率は50%前後だ)。開発サイドは数字を少なめに公表する(活動を止めた途端に、いやぁ、あの頃はもっと出ていて……と大きなことを言う)のが常なので、もっと出ているメーカーもあるだろう。エンジンとMGU-K合わせてざっと1000馬力出ていると見積もっていい。

 

さらにF1のパワーユニットは、排気の熱を電気エネルギーに変換する熱エネルギー回生システムを搭載している。量産化への期待がかかる技術だが、4月17日に発表された2021年のレギュレーション変更で廃止が議論されていることが明らかになった。提案どおりになると、2021年のF1のパワーユニットは、現行システムから熱エネルギー回生システムを取り除いたシステムになる。

 

純技術的な視点で見れば、明らかに後退だ。技術開発のハードルを下げることで、新規参入メーカーを呼び込む狙いだろう。

 

■かつては3.0リッターV10エンジンもあったが…

2002年のBMWエンジンはV10

 

F1はさまざまな背景から、エンジンの排気量を変更してきた。富士スピードウェイで日本初のF1が開催された1976年の時点では、最大排気量は3.0L(自然吸気の場合)に規定されていた。「F-1世界選手権イン・ジャパン」のエントリーリストに並んだ27台のうち、22台がV型8気筒(V8)のフォード・コスワースDFVを搭載していた。フェラーリの2 台とアルファロメオの2台は水平対向12気筒を搭載。残り1台はマトラで、V型12気筒(V12)を搭載していた。

 

このように、当時は排気量の上限は定められても、気筒数やシリンダーのレイアウトに縛りはなかった。転機が訪れたのは1977年だ。ルノーがターボエンジンを引っ提げてF1に参戦を始めたのである。レギュレーション上はターボチャージャー付きエンジンの参戦も認められてはいたが、ルノーが乗り込んでくるまで、挑戦するメーカーはいなかった。

 

ターボに限らず過給機付きエンジンを選択した場合、排気量は最大1.5Lに定められていた。ルノーは当初、1.5L・V6のシングルターボで臨んでいたが、1979年からツインターボに変更。この年の地元フランスGPで、ターボエンジンによる初めての勝利を手に入れた。

ルノーのV6ツインターボ(1980年)

 

ターボは急速に進化して出力を高め、3.0L自然吸気(NA)エンジンを駆逐していった。1987年にはターボエンジンとNAエンジンの出力差を是正しようと、NAエンジンの最大排気量を3.5Lに引き上げた。それでもターボエンジン優位の状況が変わることはなく、1988年限りでターボエンジンは禁止され(84年から段階的にターボエンジンの出力抑制策を打ち出していた)、1989年から3.5L・NAエンジンに一本化されることになった。

 

ターボ最終年の1988年シーズンを席巻したのはアイルトン・セナとアラン・プロストがドライブしたマクラーレンMP4/4で、その心臓部には1.5L・V6ツインターボエンジンのホンダRA168Eが収まっていた。1986年、87年のチャンピオンエンジンもホンダ(ウイリアムズ)であり、ターボ時代を支配した(終焉に追い込んだとも言える)。

 

1994年に相次いだドライバーの死亡事故を受け、1995年にレギュレーションが変更され、エンジンの最大排気量は 3.0Lに引き下げられた。スピード抑制が狙いである。当時はV8/V10/V12のシリンダー形式が存在したが、1998年には事実上V10エンジンに統一された。高回転化による高出力化と小型・軽量化による運動性能向上のバランスの点で、V10に収束していったのだ。この流れを追いかける格好で、2000年には最大気筒数を「10」とする規則がレギュレーションに盛り込まれた。

 

2006年には2.4L・V8エンジン規定が導入された。3.0L・V10から2.4L・V8への変更なので、数字的には単純に2気筒切り落とした格好になる(そう簡単な話ではないのだけれど)。排気量を減らしたのは3.5Lから3.0Lに変更した際と同様、スピードの抑制だ。さらに、Vバンク角を90度に固定したり、最低重量を95kgに設定したり(3.0L・V10の方が軽かった)、高価な材料の使用を禁止するなど、コスト抑制を狙っていた。

2016年のホンダエンジン。1.6L・V6直噴ター

 

2014年に1.6L・V6直噴ターボエンジンに規定を変更したのは、当時の流行りで現在ではあたり前の「過給ダウンサイジング」のコンセプトを取り入れたからだった。当初は直列4気筒(直4)で検討が進んでいたが、「そんなしょぼいの積めるか!」という旨の意見をフェラーリが押し通し(たと、ルノーは証言した)、V6になった経緯がある。

 

同時に、2種類のエネルギー回生システムを組み合わせることになったのは、冒頭に記したとおり。2013年までの高回転エンジンから、高効率のパワーユニットに切り替わったわけだ。2021年には一歩後退することになりそうだが……。

 

著者プロフィール

モータリングライター&エディター・世良耕太

モータリングライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1世界選手権やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など

世良耕太のときどきF1その他いろいろな日々:http://serakota.blog.so-net.ne.jp/

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