乗り物
2018/6/9 19:15

ヤマハが1億5000万円のボートを発売、レクサスも市場参入! 「高級ボート」市場が盛り上がる理由

ボート市場が活性化している。一般社団法人日本マリン事業協会によると、2017年のモーターボート、船外機メーカーの合計出荷額は2007年のリーマンショック前を上回る約1926億円であった。国内市場だけを見ても、モーターボート、水上バイク、船外機の国内出荷金額は約266億円、前年比約108%の伸びを見せている。その中でもモーターボートは前年比約112%と伸び率が大きく、特に10m以上の大型モーターボートの伸び率が大きい。

ヤマハ発動機が発表した高級ボート「EXULT43(イグザルト43)」。メーカー希望小売価格は1億4936万4600円

 

ボート市場が活性化している理由は一つではない。その理由を見ていくと、混沌とした「今」という時代を生きる企業や消費者の姿が見えてくる。

EXULT43のメインサロン。これとは別にキングサイズベッドを備えたオーナーズルームも用意。定員は15名。出典:ヤマハ発動機「EXULT43」HP

 

■ボート市場活性化の理由1〜日本経済の現状〜

なぜボート市場が活性化したのかを知るためには、購入者層を見てみるとわかるだろう。この点についてヤマハ発動機に話を伺った。大型ボートは、製造業や建設業、サービス業などの企業が購入するケースが増えてきており、数年前に比べると、現金支払いの割合が増加してきているそうだ。いわば、昨今の日本経済で好調と呼ばれる企業を中心にボートが購入されているということだ。

 

企業の景況感を示す業況判断指数(日本銀行 全国短期経済観測調査より)は、2017年12月まで5四半期連続で上昇していたように、企業の業績は改善傾向が続いていた。その中で製造業や建設業などの業種の業績も良かったのだ。売上や利益が当初の計画以上に良かった企業が、ボートを購入しているシーンが見えてくる。

 

■ボート市場活性化の理由2〜日本人の意識とライフスタイルの変化〜

ではなぜボートが選ばれるようになったのだろうか。そこから見えるのは、単に大きな費用を使えるようになったという「お金」の話だけではない。日本人の意識とライフスタイルのゆるやかな変化も背景に見えてくる。その一つが”自然”を生活に取り入れたいという傾向の増加だろう。

 

例えば、昨今のグランピングやキャンプのブームは、その一例であろう。平日は都市部で仕事や生活をしながら、休日はグランピングやキャンプで”自然”を楽しむというひとが増えている。手軽に”自然”を生活の中に取り入れている。

 

また都市部を離れて自然ある生活を選択する人も増えてきた。例えば、徳島県の神山町では、2000年頃から光ファイバーを整備したことにより、ITベンチャー企業などがオフィスを構えるようなり、神山町で働く人が増加した。また岡山県の西粟倉村では、地元の林や川など自然と関わる企業が多く誕生したことで、多くの人が移住し、働いている。移住してきた人の中には、日本を代表する大企業を退職し、働いている人たちもいる。

 

また普段は東京で生活しているが、夏は避暑地である軽井沢などを生活の拠点とし、新幹線で通勤するスタイルを選ぶ人たちや、海を感じながら暮らすために逗子や葉山に引越し、そこから東京へ出勤しているという人の話を聞くことも多くなった。

 

ボートは海に出て”自然”を全身で満喫することができる。ボートの売上が増加した背景には、”自然”の素晴らしさを、より身近に感じたいという人たちが増えていることがあるのだ。企業で購入したボートは、取引先などとの関係性向上に使われるだけでなく、社員の福利厚生としても有効だろう。

 

現在、政府が推進する「働き方改革」により、働き方の多様化が認められる空気が、これからますます社会、企業に浸透していけば、仕事以外の時間を充実させようという人がますます増えていくことだろう。そうなれば、もっと多くの人が”自然”を取り入れる生活をすることにも繋がるだろう。

 

■ボート市場活性化の理由3〜ブランド価値を高めたいメーカー〜

2019年、トヨタ自動車が展開している自動車ブランドのレクサスは、米国で約20mのボートを発売すると発表している。日本では2020年に発売される予定だ。なぜ、自動車ブランドであるレクサスがボート市場に参入するのだろうか。その裏には、ブランド価値を向上させたいレクサスの意向がある。

 

1989年に誕生したレクサスは世界の高級車市場では歴史が浅い。誕生以来、一貫してブランディングには力を入れてきたが、世界の高級車市場で選ばれるためのブランドを作ることは、そう簡単ではない。一時期、アメリカを中心に人気は高まり、売上も増加したものの、100年を超える歴史を持つヨーロッパの高級車のブランドのような存在には、すぐになることはできなかった。レクサスがボート事業に進出したのは、ブランド価値を高め、確固たるものにする目的が強い。

 

自動車ブランドでは、アストン・マーチンやブガッティなど多くの高級車ブランドがボート事業を手がけている。また、世界を代表するラグジュアリーブランドであるルイ・ヴィトンは世界的なヨットレース、アメリカズカップをスポンサードしており、船とラグジュアリーブランドの関係作りに影響を及ぼしているだろう。このように、さまざまな形で、船とラグジュアリーブランドの関連性は強く、だからこそレクサスはボート事業に参入したと言えるのだ。

 

こうした背景を元に、大型ボート市場のトップシェアを持つヤマハ発動機も、従来よりもさらに高級ボートにあたるEXULT43の発売を開始した。ブランドイメージを高めたい企業、売上を増加させたい企業、企業ごとに目的は異なるものの、ボート市場に魅力を感じている企業は増加している。消費者意識の変化もあり、今後ますます注目が必要な市場になりそうだ

 

【著者プロフィール】

マーケティングコンサルタント 新井 庸志

マーケティングコンサルタント。「ワールドビジネスサテライト」「スーパーJチャンネル」などのニュース、情報番組や「日本経済新聞」「日経ビジネス」「財界」「宣伝会議」など、新聞、雑誌での執筆多数。経営から広告・PR、営業、現場を知り抜いた幅広い知識と経験に裏打ちされたマーケティング視点でニュースやトレンドをわかりやすく解説。その他、各種団体、イベント、クライアント企業、広告会社などでセミナーや講演も行っている。 株式会社アサツーディ・ケイにて国際的なエレクトロニクス企業のアカウントを統括し、アジアパシフィック地区のディレクターを経験。数々の競合コンペによるアカウント獲得により、最高賞を含む社内表彰多数受賞。約15年の勤務後、外資系メディア企業にて広報関連のコンサルティングサービス業務のマネージャーに就任。2007年株式会社ホワイトナイトを設立。 企業への戦略立案、経営、PR、ソーシャルメディアまで、マーケティングに関するあらゆる側面からのサポートを提供し、確実に成果が出るコンサルティングは人気を博している。

 

Twitterアカウントは@yasushiarai

 

マーケティングの現状と未来を語る:http://yasushiarai.hatenablog.com/

TAG
SHARE ON