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2018/8/4 18:15

そう簡単にはいかないでしょ… 「中央線グリーン車連結問題」に立ちはだかる壁

「ほんとに実現すんのかなぁ?」

炎天下の聖橋に立っているだけで、大汗といっしょに魂まで流れ出ちゃいそうな、酷暑。ここまで暑いと、こんな半信半疑で半ばあきらめモードな独り言が出てきてしまう。

 

聖橋でいろいろ思っていることは、「月曜から夜ふかし」的にいうと、「中央線グリーン車連結問題」。中央線といえば、混雑率200%超え、2分ヘッド過密ダイヤ、東京カウンターカルチャーの高円寺や吉祥寺といった人気の街を結ぶステータス抜群の「語れちゃう路線」……といったイメージ。

 

そんな中央線に、有料座席車両のグリーン車(下の写真がそのイメージ)を連結させるという計画が、静かに熱くすすめられている。

 

■グリーン車を2両プラスして12両編成に

JR東日本の首都圏を走る通勤電車には、グリーン車が組み込まれている路線がある。普通列車グリーン車というサービスで、湘南新宿ラインや上野東京ライン、東海道線、横須賀線、総武線快速、そして足立を貫き茨城へと誘う常磐線などの電車がグリーン車を連結して走っている。

 

この普通列車グリーン車がいま、めちゃめちゃ好評。平日朝ラッシュ時間帯の都心方面は、満席も続出。せっかくグリーン券を買ったのに、座れずにデッキで席が空くのを待つ人の姿も見かける。土休日になると、電車旅グループや親子、仲良し男女たちが、グリーン車を躊躇なく選ぶ。

 

この利用者増を受けてか、中央線のサービス向上計画の切り札か、JR東日本は突然、中央線にグリーン車を2両追加連結すると公表。ことし春には、2020年のサービス開始をめざしてきた計画を、2023年度末までに実現させるとプランを後ろ倒しした。

 

素人目で見ても、その実現はいろいろ難しいと感じる。車両導入、地上設備、人材確保、サービス展開、特急列車とのすみ分け……前途にはいろいろハードルが立ちはだかる。

 

■ホーム延長の壁

車両は、既存の普通列車グリーン車に似たモデルだから、そのままいけそう。ただ、中央線グリーン車計画では、両開きドアを採用したり、普通車にトイレを設置したりといった変更がある。

 

通勤や通学、仕事で中央線を使うとき、ちょっと視点を変えて見てみると興味深いのが、地上設備。グリーン車2両を増結することで、中央線は既存の10両から12両編成に変わる。車両が2両ぶん増える計画だけど、中央線の駅のほとんどが、ホームは10両ぶんの長さしかない。

 

たとえば御茶ノ水駅のホームは、東京・秋葉原方はけっこう急な勾配の途中にあって、黄色い総武線各駅停車とオレンジ色の中央線電車ののりばは、階段2段ぶんほどの大きな段差がある。さらにホーム端には詰め所もあったりで、東京方にホームを延ばすことは難しい。そうなると、新宿寄りのホームを延ばすことになるか。でも、こちらも急カーブやポイント(分岐器)がすぐ迫っていて、難工事確実。

 

■IoTのチカラを借りるか…

グリーン車を組み込む位置も気になる。車両の構造上、東京側から4両目と5両目、12両編成時の4号車・5号車がグリーン車になる計画。で、特急電車を使用した中央ライナー用のライナー券を買う場所と、グリーン車の位置も微妙に違う。グリーン券を購入できる端末は、新たにまた設置するスペースが要る。

 

ひょっとしたら、IoTのチカラを借りて、グリーン券 券売機の端末を省略するという作戦もあるか。利用者はスマホやSuicaを座席上スキャンにピッとかざすだけで、座席が確保できるという時代がくるかもしれない。

 

12両化で信号類の位置変更もあるだろうし、車両基地には車両トイレの地上処理施設もつける必要が出てくるし、グリーン車の車内サービスを担うグリーンアテンダントの人材も確保しなければならない。

 

クリアすべき課題がいろいろある中央線グリーン車連結問題。だけど、実現したらそれはまた、中央線ユーザーに好評を博すことは間違いない。中央線の競合路線のひとつ、京王線は「京王ライナー」という有料座席指定列車サービスで先手を打った。

 

中央線にグリーン車が走る日まで、あと5年。後手には後手のやり方がある。5年間で、中央線の風景が少しずつ変わっていく。実現すれば儲かることはわかっている。損益分岐点もすぐにきちゃいそう。

 

【著者プロフィール】

モビリティハッカー Gazin

GazinAirlines(ガジンエアラインズ)代表。1972年生まれ。浦和市立南高、島根大(中退)、東京学芸大を卒業。東北新社、鉄道ジャーナル社、CAR and DRIVER、TVガイドなどを経て独立。SNSなどをやってないせいか、人格の問題か、友だちゼロ&人脈ゼロ。著書に『ワケあり盲腸線探訪』(えい出版社)、『ひとり、ふらっと鉄道』(イースト・プレス)ほか。

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