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2018/9/9 18:00

【中年名車図鑑|2代目・日産キャラバン】アウトドア好きスタッフが生み出した乗用1BOXの先駆け

1970年代に入って徐々に浸透し始めた日本のアウトドアレジャーによって、ユーザーは多人数での移動を1台でまかなえるクルマを求めるようになった。日産自動車はその回答として、乗用1BOXカーの刷新を画策。1980年には同社の旗艦1BOXカーであるキャラバンおよびホーミーの全面改良を敢行した――。今回は本格的な乗用1BOXの先駆モデルであり、念願のトヨタ車超えをも成し遂げたE23型系2代目キャラバン(と3代目ホーミー)の話題で一席。

【Vol.83 2代目・日産キャラバン】

モータリゼーションの発展と道路交通網の整備とともに浸透した1970年代の日本のアウトドアレジャーは、ユーザーのクルマに対する要求性能に変化をもたらすようになる。単なる郊外への移動手段から、荷物がたくさん積めて、その積み下ろしが楽で、しかも多くの人間が乗車できるモデルが求められるようになったのだ。さらに、レジャーユースにふさわしいおしゃれなスタイリングや居住空間の快適性も、より重視されはじめる。この市場動向にいち早く気づき、新たな1BOXカーの企画作りに勤しんだのは、日産自動車の開発陣だった。当時の日産スタッフによると、「あの頃の開発陣は、クルマを使って海や山やモータースポーツに出かける趣味人がとても多かった。開発・生産拠点の神奈川県は、どこの遊び場所に行くのにも近かったので。だから、アウトドアレジャーにふさわしい1BOXカーの企画には、とても熱心に取り組んだ」という。アウトドアレジャーの遊びが大好きという開発陣の特性と開発・生産拠点の地の利が、新しい1BOXモデル、具体的には旗艦1BOXカーの新型キャラバンおよび兄弟車のホーミーを造り出すバックボーンとなったのである。

 

■アウトドア好きスタッフの「ほしい」を詰め込んだ

直線基調のフォルムに、シャープなベルトラインや新造形のグリル、大型化したウィンドウを採用。大開口のサンルーフも外観上のアクセントとなった

 

1980年代に向けた新しいキャラバンを企画するに当たり、開発陣はまず経験則を踏まえて「ほしい装備」や「所有して楽しくなる内外装」を検討する。そして、居住性の向上、運転疲労の軽減、利便性のアップ、機能的で遊び心も備えたデザインの構築、安全性の向上などを商品テーマに掲げた。また、ユーザーの多様な使用パターンを鑑み、豊富な車種ラインアップを設定する方針も打ち出した。

 

エクステリアに関しては、従来型のキャラバンで好評だった機能美あふれる直線基調のフォルムをベースに、シャープなベルトラインや新造形のグリル、大型化したウィンドウなどを採用し、現代的で調和のとれた外装を演出する。アウトドアレジャーにふさわしいクルマであることを強調するために、明るいカラーの専用デカールも用意した。また、680×1000mmの開口面積を確保した電動サンルーフを開発し、乗員の開放感を高めるとともに外観上のアクセントとしても昇華させる。ボディサイズは全長4350(長尺バン4690)×全幅1690×全高1925~1950(ハイルーフ2220)mmに設定した。

 

インテリアについては、荷室寸法の拡大やドア開口部の大型化で積載性および乗降性の向上を図ったほか、運転席から荷室への移動が可能なウォークスルー機構を採用して乗員の利便性を引き上げる。さらに、固定フックの設定(バン)や回転対座シートの装着(コーチ)、最後部座席のシート折りたたみ機構の採用、フロントエアコン/リアクーラーの設定、マイクロバスの全車ハイルーフ化などを実施し、多目的車としての実用性と快適性を高めた。また、開発陣はシート表地の素材や柄、クッション厚にもこだわり、乗用車に匹敵する見栄えと座り心地を実現した。

 

メカニズムに関しては、従来のワンボックスカーで見落とされがちだった「運転のしやすさ」を鑑みた改良が実施される。具体的には、パワーステアリングの設定やオートマチック車の拡大展開、運転席のリクライニング機構と120mmのシートスライド機構の採用、ウィンドウ面積の拡大、セーフティウィンドウ(助手席側ドアの視認用の小窓)の装着などを敢行した。また、サスペンションは一般的な1BOXカーと同様のフロント・ウィッシュボーン/トーションバー、リア・縦置き半楕円リーフを踏襲するが、乗り心地とハンドリングを重視した入念なチューニングが施される。ホイールベースは2350(長尺バン2690)mmに設定した。さらに、ブレーキにはバンの一部車種を除いてフロントベンチレーテッドディスクと9インチ大型マスターバックを採用し、制動性の向上と踏力の軽減を図る。搭載エンジンはZ20型1952cc直列4気筒OHC(105ps)、H20型1982cc直列4気筒OHV(92ps)、J16型1567cc直列4気筒OHV(80ps)のガソリンユニットとSD22型2164cc直列4気筒OHVディーゼル(65ps)を設定し、このうち乗用ユースのワゴンモデルにはZ20型とSD22型が組み込まれた。

 

■ワイドな車種展開で市場デビュー

パワーステアリングの設定やオートマチック車の拡大展開で「運転のしやすさ」を追求した

 

1980年代に向けた新しい1BOXカーは、E23型系キャラバンおよびホーミーとして1980年8月に市場デビューを果たす。車種展開はワゴンモデルのコーチ(9~10人乗り)、ロングボディで15人乗りのマイクロバス、商用モデルのライトバン/ハイルーフバン/ルートバンをラインアップ。グレード展開はDXを基準車として、廉価版のCT、上級仕様のGL、高級モデルのSGLを用意し、エンジンやトランスミッションなどの組み合わせによって計55グレードものワイドバリエーションを設定した。また、日産モーター店系列から販売されるキャラバンと日産プリンス店系列で売られるホーミーでは、フロントグリルやエンブレムなどの一部装備で差異化を図った。

回転対座式のシートは多人数乗車の1BOXならではの機構としてユーザーに喜ばれた

 

市場に放たれたE23型系キャラバンおよびホーミーは、従来の1BOXカーとは明確に異なる見栄えの良さや充実した装備、さらに乗用車に匹敵する快適な走りなどで大好評を博す。当時のコーチのユーザーによると、「これほど快適な乗り心地で、しかも運転しやすい1BOXカーは70年代にはなかった。回転対座の機構も、友人や家族にとても喜ばれた」という。また、トランスポーターとして活用していたハイルーフバンのユーザーは、「積載性のよさに加え、ウォークスルー機構がとても便利だった」そうだ。さらに、キャラバンとホーミーは当時のクルマ文化の流行のひとつだった“バニング”のベース車としても用いられ、部品メーカーからは様々なドレスアップパーツが発売された。ちなみに、バニング(Vanning)は元々アメリカの西海岸で1960年代から流行ったピックアップ/バン・ベースのカスタム手法(当初はピックアップが主流で“Truckin’”などとも呼ばれた)で、若者たちがこぞって趣向を凝らした内外装に仕立てる。日本では1970年代ごろから徐々に発展。日産のキャラバンやトヨタのハイエースなどをベースに、外装にはエアロパーツと派手な塗装、内装にはレザー表地のソファーや豪華なオーディオなどを組み込んで個性を競った。並行輸入されたシボレーやダッジのバンも、バニングのベース車として人気を集めた。

 

■車種ラインアップと機能装備のさらなる拡充

1983年のマイナーチェンジで角形4灯式のヘッドライトを採用

 

従来の1BOXカー・ファンだけではなく、一般的な乗用車やボンネットバンのユーザーからも大注目を集めたE23型系キャラバンとホーミーは、デビューから間もなくして最大のライバルであるトヨタ自動車のハイエースの販売台数を抜き去り、クラスのトップシェアに君臨する。他カテゴリーではなかなか達成できなかったトヨタ車超えを、1BOXカーのセグメントでついに実現したのだ。

 

この勢いを維持しようと、日産の開発陣はキャラバンおよびホーミーの改良とラインアップの拡充を次々と実施していく。まず1981年7月には、充実装備の特別仕様車を発売。同年10月の第24回東京モーターショーでは、1BOXカーの新提案形である「キャラバン・フレグラント」と「ホーミーRV」を参考出品した。1982年5月にはマイナーチェンジを実施。コーチのディーゼルエンジンがLD20T型1952cc直列4気筒OHCターボに換装され、またコーチのトランスミッションのフロアシフト化や新グレードの7人乗り仕様(2列目にキャプテンシートを装着)の設定などを敢行する。同時に、バンのディーゼルエンジン(SD22型→SD23型)とガソリンエンジン(H20型→Z18S/Z20S型)の変更も行われた。

 

1983年4月になると、内外装をメインとした仕様変更が実施される。フロントグリルはより豪華な演出がなされ、さらにコーチSGL系には角型4灯式ヘッドライトを装着。SGLとGLの中間に位置する新グレードのFLも加わった。1985年に入ると、1月にバンモデルのラインアップ拡大や安全装備の強化を図り、5月には8人乗りのキャラバン「SGLシルクロードリミテッド」とホーミー「SGLアビィロード」を発売した。

 

■約6年の長寿命を全うする

4年サイクルのフルモデルチェンジが一般的だった当時の日本の自動車業界のなかにあって、E23型系キャラバンおよびホーミーは、6年1カ月もの長きに渡って販売され続ける。そして1986年9月にはE24型系のニューモデルが登場するが、ライバル車の成長などもあって、デビュー時のE23型系ほどの高い人気は獲得できなかった。

 

本格的な乗用1BOXカーの先駆モデルであり、念願のトヨタ車超えをも達成したE23型系キャラバンとホーミー。日本の自動車史では隠れがちな出来事ではあるが、その偉大なる業績は1980年代の日産自動車にとって欠くことのできないトピックなのである。

 

【著者プロフィール】
大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バイク数台。趣味はジャンク屋巡り。著書に光文社刊『クルマでわかる! 日本の現代史』など。クルマの歴史に関しては、アシェット・コレクションズ・ジャパン刊『国産名車コレクション』『日産名車コレクション』『NISSANスカイライン2000GT-R KPGC10』などで執筆。

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