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2018/9/16 19:00

【中年名車図鑑|第1世代・三菱ランサー・エボリューション】絶えず戦闘力を“進化”させてきた「武闘派セダン」

ワールドワイドなモータースポーツへの参戦に際し、ラリーの舞台を主軸に据えた三菱自動車工業。持ち前の高い技術力で勝負を挑む同社は、1992年になると新世代のホモロゲーションモデルとなる「ランサー・エボリューション」を発売した――。今回は第1世代のCD9A/CE9A型“ランエボⅠ~Ⅲ”の話題で一席。

【Vol.84 第1世代・三菱ランサー・エボリューション】

海外モータースポーツへの挑戦で世界ラリー選手権(WRC)を主戦場に選んだ三菱自動車工業および傘下のラリーアートは、1988年からギャランVR-4を駆ってWRCに参戦。徐々に戦闘力を上げていき、1989年シーズンの1000湖ラリーとRACラリー、1990年シーズンのコートジボアール・ラリー、1991年シーズンのスウェディッシュ・ラリーとコートジボアール・ラリー、1992年シーズンのコートジボアール・ラリーで総合優勝を達成した。勢いに乗る三菱自工。一方で開発現場では、ギャランVR-4に代わる新しいラリーモデルの企画を鋭意推し進める。そして、1992年9月にWRCグループAのホモロゲーションモデルとなる「ランサー・エボリューション」(CD9A型)を発表。グレード展開は、標準仕様のGSRエボリューションとコンペティション仕様のRSエボリューションを設定した。

 

■4代目ランサーをベースにホモロゲーションモデルを開発

1992年に登場したランサー・エボリューション、通称“エボⅠ”。250ps/6000rpm、31.5kg・m/3000rpmと2Lクラス最強を誇った

 

キモとなる搭載エンジンは、ギャランVR-4に採用していたターボ付きの4G63型1997cc直列4気筒DOHC16Vをベースユニットとして選択し、各部の徹底チューニングを図る。圧縮比は8.5にまで引き上げたうえで、ピストンやコンドロッド等の軽量化を実施。4バルブDOHCのヘッド回りでは、ナトリウム封入中空排気バルブを組み込んだ。また、ターボチャージャーには横470×縦256×厚65mmという大容量のインタークーラーをセットし、過給効率の向上を成し遂げる。ほかにも、専用チューニングの電子制御燃料噴射システム(ECIマルチ)や圧力検出型カルマン渦式エアフローセンサー、ローラロッカアーム、オートラッシュアジャスター、空冷式オイルクーラーなどを組み込んでエンジンの高性能化と耐久性のアップを図った。得られたパワー&トルクは250ps/6000rpm、31.5kg・m/3000rpmと2Lクラス最強を誇る。組み合わせるトランスミッションは2/3/4速をクロスレシオ化すると同時に、2速にダブルコーンシンクロを、3/4/5速にサイズアップしたシンクロ機構を導入した専用の5速MTを設定。駆動システムにはVCU(ビスカスカップリング)&センターデフ方式のフルタイム4WDを採用した。

 

ボディやシャシーの強化にも抜かりはない。ボディはベース車比でねじり剛性を約20%引き上げ、同時にアルミ製フロントフードを装着するなどして効果的な軽量化を達成。前マクファーソンストラット/後マルチリンクのサスペンションは各部の取付剛性をアップさせるとともに、専用セッティングのダンパー&スプリングの採用やピロボールの拡大展開(各アーム6カ所)などを実施した。エクステリアについては専用デザインのグリル一体型バンパーやサイドエアダム、リア大型エアスポイラーなどで武装。ボディサイズは全長4310×全幅1695×全高1395mm/ホイールベース2500mmに設定する。インテリアではレカロ製バケットシートにモモ製本革巻きステアリング、本革巻きシフトノブといったスポーツアイテムを標準で装備した。

 

■“進化”を宿命づけられたランエボ

94年登場の“エボⅡ”。最高出力は従来比で+10psをマーク。5速MTのローギアード化で加速性能にさらなる磨きをかけた

 

1994年1月になると、改良版のランサー・エボリューション、通称“エボⅡ”(CE9A型)が登場する。4G63型エンジンはマフラーの排圧を低減し、同時にターボチャージャーの過給圧を増大。また、吸気バルブと排気バルブのリフト量を増やし、バルブ開口面積を拡大させた。さらに、ピストン形状の改良やターボチャージャー本体の材質の見直し、エアインテークおよびアウトレットの容量アップなどを実施する。これらの改良の結果、最高出力は従来比で+10psの260ps/6000rpmを達成(31.5kg・m/3000rpmの最大トルクは同数値)。組み合わせる5速MTのローギアード化も図り、加速性能はさらなる高次元に至った。また、シャシー面ではホイールベースとトレッドの拡大に加え、ボディ剛性を大きくアップさせる。さらに、制動性能やトラクション性能も着実に向上させた。

 

ランエボの進化は、さらに続く。1995年1月になると、再度の改良版となるエボリューションⅢ、通称“エボⅢ”(CE9A型)が市場デビューを果たした。ターボ付き4G63型エンジンの最高出力は270ps/6250rpmにまでアップ(最大トルクは同数値)。主要変更ポイントは排気系パイプの外径拡大やターボチャージャーのコンプレッサーホイール形状の最適化、圧縮比の引き上げ(8.5→9.0)などで、主に高回転域での出力向上を狙った改良が施された。また、インタークーラーについては放熱量を高める目的で大容量化(470×256×65mm)を行い、同時にインナーフィンを細かく最適に配列。本体カラーは外熱を吸収しにくいシルバー色とした。組み合わせる5速MTにも改良を加える。第1・2速のギア比はローギアード化を実施。加えて、2~4速のギア比をエンジン出力特性に合わせてクロスレシオに設定する。同時に、2~4速にはダブルコーンシンクロを採用した。駆動メカニズムについては、いっそうの熟成と耐久性の向上を図ったVCU&センターデフ方式フルタイム4WDを採用する。加えて、ホイールの空転を防いで駆動力を確実に路面に伝えるリア1.5WAY機械式リミテッドスリップデフを組み込んだ。

大型エアダム、大型リアスポを装着した“エボⅢ”。最高出力は270ps/6250rpmまでアップした

 

エボⅢは、従来型以上に空力性能に磨きをかけたことも特徴だった。フロントバンパーは形状そのものを見直したうえで、バンパーエクステンションも大型化してダウンフォースを向上。同時に、インタークーラーやオイルクーラーの冷却性を高めるとともに、ブレーキ冷却エアダクトとトランスファー冷却スリットを新たに設置した。また、大型サイドエアダムを加えてフロア下への空気侵入を防ぎ、不要な揚力を抑制する。リア部ではスポイラーとウィッカーを大型化したことがトピック。リア揚力を抑え、後輪の接地性および操縦安定性を引き上げた。一方でボディについては、軽量かつ高剛性を誇る従来の特性をさらに補強。シャシーに関しては、前後サスのアーム類および支持部を効果的に強化し、同時にダンパー減衰力およびバネ定数の最適化を図った。

 

■WRCにおける第1世代ランエボの戦績

“エボⅢ”のインテリア。momoステアリング、レカロシートを装備

 

ランサー・エボリューションは1993年開催のラリー・モンテカルロにおいてWRC初陣を飾る。当初は苦戦を強いられるものの、緻密かつ徹底した改良によって徐々に戦闘力がアップ。1995年シーズンのスウェディッシュ・ラリーでは、エボⅡを駆るK.エリクソン選手がランエボ・シリーズでの初優勝を飾った。

 

続くランエボⅢは、1995年シーズン途中の第4戦ツール・ド・コルスにおいてWRCへの本格デビューを果たす。このレースでは早くも総合3位に入り、その後APRC(アジア・パシフィックラリー選手権)を兼ねたWRCオーストラリア・ラリーで総合優勝を達成した。結果として同シーズンでは、マニュファクチャラーズで2位、ドライバーズで3位(K.エリクソン選手)の好成績をあげる。続く1996年シーズンになると、熟成が進んだエボⅢが大活躍。スウェディッシュ・ラリーやサファリ・サリー、アルゼンチン・ラリー、1000湖ラリー、オーストラリア・ラリーで総合優勝を果たした。その結果、マニュファクチャラーズでは2位、ドライバーズではT.マキネン選手が初のチャンピオンに輝く。ちなみに、APRCでは1995年と1996年に2年連続でマニュファクチャラーズタイトルを獲得。ドライバーズでは1995年にK.エリクソン選手がチャンピオンに、1996年にはR.バーンズ選手が2位に入るという好成績を成し遂げた。

 

【著者プロフィール】

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バイク数台。趣味はジャンク屋巡り。著書に光文社刊『クルマでわかる! 日本の現代史』など。クルマの歴史に関しては、アシェット・コレクションズ・ジャパン刊『国産名車コレクション』『日産名車コレクション』『NISSANスカイライン2000GT-R KPGC10』などで執筆。

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