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2018/11/18 19:15

【中年名車図鑑|2代目 ホンダCR-X】走りにマトを絞ったVTEC搭載のサイバースポーツ

バラード・スポーツCR-Xの発売によって“FFライトウェイトスポーツ”という新ジャンルを確立した本田技研工業は、この分野でのさらなる進化を狙って全面改良を画策する。目指したのは、データや性能ではない、人間の感性を軸にした“ヒューマン・フィッティング・テクノロジー”に基づく小型FFスポーツモデルの創出だった――。今回は単独ネームで1987年に登場した「CR-X」の話題で一席。

【Vol.94 2代目 ホンダCR-X】

軽自動車および高級乗用車カテゴリーへの参入や既存モデルの全面改良の成功、海外市場への進出拡大、そしてF-1での大活躍など、順調に業績とブランドイメージを高めていった1980年代前半から中盤にかけての本田技研工業。さらなる発展を目指す同社は、1980年代後半に向けて新たな開発指針を打ち出す。独自の発想と先進の技術力を駆使して、今までにない高いレベルでひとつの感性に心地よくフィットする、人間と技術の融合“ヒューマン・フィッティング・テクノロジー”の創出だ。この概念のもとにフルモデルチェンジを果たしたのが、1987年9月にデビューした4代目シビック(通称グランド・シビック)、そしてシビックの一部コンポーネントを流用して製作する2代目「CR-X」だった。

 

■“サイバースポーツ”のキャッチを冠してデビューした2代目

セダンのバラードが1986年に生産を中止していたことから、単独ネームに切り替わった第2世代のCR-X(EF型系)は、コンパクトサイズで軽量ボディ、そしてドライバーの感性に訴えかける爽快な走りがアピールポイントだった。キャッチフレーズは人とメカの一体化=サイボーグという意味を込めた“サイバースポーツ(CYBER SPORTS)”。車種展開は1.6Lエンジン搭載のSiと1.5Lエンジン搭載の1.5Xという2タイプでスタートした。

 

新しいCR-Xで当時のクルマ好きが注目したのは、その斬新なメカニズムだった。懸架機構は前後ともダブルウィッシュボーン/コイルで、トーコントロール機能や低フリクション&ガス封入ダンパーなどを採用する。搭載エンジンは電子制御燃料噴射のホンダPGM-FIを組み込んだZC型1590cc直列4気筒DOHC16V(130ps)とデュアルキャブレターを装着するD15B型1493cc直列4気筒OHC16V(MT105ps/AT100ps)の2機種を用意。人気が高かったのはZCユニットを搭載したSiグレードで、ボンネットに配したパワーバルジが高性能の証だった。ちなみに、このバルジは単に飾りで膨らましたものではなく、タイミングベルトを覆うヘッド部とボンネットとの干渉を防ぐための処理だった。

 

■凝ったウィンドウグラフィックを採用

個性的なスタイリングもCR-Xの訴求点だった。曲面で構成した新感覚の“フラッシュ&ブレンディ”フォルム、流麗で整流効果の高いボディライン、細部まで徹底したフラッシュサーフェス化などにより、空気抵抗係数(Cd値)は0.30を実現する。ボディサイズは全長3755×全幅1675×全高1270mm、車重は820~900kgに設定。ホイールベースの延長(初代モデル比+100mmの2300mm)や前後トレッドの拡大(同・前+50mm/後+40mm)も実施し、走行安定性は大きく向上した。

 

もう1点、CR-Xのエクステリアには大きな特長があった。ルーフとボディ後端のウィンドウグラフィックである。ルーフ部はアウタースライドサンルーフのほかに、グラストップと名づけたスモークガラスの屋根を備える仕様を用意。ボディ後端には、ハッチゲート下部にエクストラウィンドウを組み込んだ。当時の開発スタッフによると、「初代の欠点として指摘された後方視界の悪さを解消するために、エクストラウィンドウを配備した」という。広大なガラス面積を持つCR-Xのルックスは当時のコンパクトスポーツのなかでも一際異彩を放ち、走りとともにそのインパクトは非常に大きかった。

 

インテリアについては、ドライバー優先の本格的なコクピット感覚を演出したことがトピックとなる。具体的には、インパネ前縁部にゆるやかな傾斜をもたせたうえでドライバーを包み込むようにサイドにまで大きく回り込んだ新ラップラウンド形状のインストルメントパネル、ドライバーの方向に向けたツイステッド・センターコンソール、薄くコンパクトに設計したメーターバイザーおよび機能的なアナログ表示式2眼メーター、バケットタイプのフロントシートなどを採用した。

 

■VTECエンジン仕様の登場

より上質でワイド&ローのルックスに変身した2代目CR-X。一方でファンからは、不満の声も聞かれた。搭載エンジンが従来の改良版にとどまっていたからだ。こうした意見が出ることは、ホンダ側もある程度予想していた。そして、1989年9月になると2代目の真打といえるパワーユニット、新設計の可変バルブタイミング機構“VTEC(Variable Valve Timing&Lift Electronic Control System)”を組み込んだB16A型1595cc直列4気筒DOHC16Vエンジン(160ps)を積むSiRグレードを設定した。過給器を持たない自然吸気エンジンでリッターあたり100馬力の高性能を誇るB16Aユニットは、当時の走り好きの注目を大いに集める。また、エンジンのパワーアップに伴って各部のチューニングも大幅に変更。専用ギア比の5速MTの採用、サスペンションとブレーキの強化、195/60R14 85Hサイズのタイヤ(ヨコハマAVS)の装着など、高性能化に対応した。装備面でも標準モデルとの違いを設け、専用テールゲートスポイラーや大型メガホンタイプのエグゾーストパイプ、モケット+レザー地のバケットシート、本革巻きステアリングなどをセットした。

 

走りにマトを絞って進化し続けたサイバースポーツことCR-X。しかし、この路線は2代目で幕を閉じる。1992年2月に発表された後継の第3世代CR-Xはデルソル(del Sol)のサブネームを付け、電動オープンルーフの“トランストップ”を最大の売りモノにしていたのだ。この時点で購入層は大きく変わり、CR-Xはおしゃれな小型スペシャルティカーとして市場から認知されるようになったのである。

 

【著者プロフィール】

大貫直次郎

1966年型。自動車専門誌や一般誌などの編集記者を経て、クルマ関連を中心としたフリーランスのエディトリアル・ライターに。愛車はポルシェ911カレラ(930)やスバル・サンバー(TT2)のほか、レストア待ちの不動バイク数台。趣味はジャンク屋巡り。著書に光文社刊『クルマでわかる! 日本の現代史』など。クルマの歴史に関しては、アシェット・コレクションズ・ジャパン刊『国産名車コレクション』『日産名車コレクション』『NISSANスカイライン2000GT-R KPGC10』などで執筆。

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