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2019/1/14 17:30

関東平野の最西部を縦断するJR八高線 — 米軍基地に眺望がすぐれた橋、合流する他社線など見どころ満載

【八高線の沿線模様4】東武のリバイバル塗装車と出会える駅は?

八高線の1日あたりの平均通過人員を見ると、八王子〜高麗川間は2万555人(2015年調査・以下同)、高麗川〜倉賀野間は3010人とぐっと乗客が減る。高麗川駅から以北は4両から2両と編成が少なくなるが、それでも車内は空き気味になる。

 

反面、沿線の風景が鄙びて楽しい区間だ。美しい自然とともに、鉄道好きにとっても楽しみがある。他社線と連絡している駅が多いことだ。他社のホームに果たしてどのような電車が停車しているか、楽しみな区間でもある。

 

↑高麗川駅の北側、八高線と川越線が分岐するちょうど間からかつて引込線が設けられていた。太平洋セメント埼玉工場へ延びる引込線で、現在、旧路線跡は遊歩道「ポッポ道」として整備される。駅から近い元踏切には警報器がそのまま残されていた

 

他社線と接続駅を順にあげると東武鉄道越生線との接続する越生駅。さらに東武東上線の接続する小川町駅がある。

 

東武東上線とは、その先の寄居駅でも接続する。この寄居駅は秩父鉄道とも接続している。八高線は他社線と駅で接続する以外に、一部路線が他社線と平行して走る区間があり、こうした箇所での他社の電車とのすれ違いも楽しめる。

 

↑越生駅に停車する東武8000系電車。東武越生線や、東武東上線の小川町駅〜寄居駅間は8000系のみが走る線区。写真のツートンカラー復元塗装車や、セイジクリーム、フライング東上といったリバイバル塗装車が走り八高線からもこれらの電車の姿が確認できる

 

【八高線の沿線模様5】明覚駅そば清流が魅力のときがわ水辺の道

もし高麗川駅から先で、どこかで途中下車したい時には、明覚駅(みょうかくえき)をお勧めしたい。駅があるのは埼玉県ときがわ町。東武の路線がそれぞれ接続する越生駅と、小川町駅のちょうど中間にある駅だ。こうした所に、長閑な“いなかの風景”が残ることに驚かされた。

 

駅舎はログハウスふうで、駅舎内には蒸気機関車が運行されていたころの写真が展示されている。「関東の駅百選」の第1回選定駅で、「地元産の丸太で造り、周辺の山とマッチしたカナダ風ログハウスの駅」が選定された理由にあげられている。

 

↑八高線の明覚駅の北側で都幾川を越える。水辺は「ときがわ水辺の道」として整備されている。訪れた日は好天に恵まれ、見上げるキハ110系がきれいに写り込めた

 

さらに駅からほんの500mという場所に都幾川(ときがわ)が流れる。都幾川は荒川の支流でもあり、八高線もこの川をガーダー橋で渡る。この都幾川、本当にきれいに澄み切る。首都圏に、これほどまで清流があることに驚かされた。八高線の下には小さな堰が設けられる。この堰のそばにカヌー店があり、レンタルカヌーを借りて、水辺で遊ぶことができる。

 

都幾川沿いには「ときがわ水辺の道」が整備されている。水辺で憩いのひと時を過ごすのも良いだろう。一つ難点を上げるとしたら、水辺の道沿いの家で飼う犬たちが人の姿を見ると吠えること。もちろんリード付きで安心なのだが、突然に吠えられた時はちょっとびっくりさせられた。訪れる時は番犬たちに多少吠えられることは覚悟して出向いた方がよさそうだ。

 

 

【八高線の沿線模様6】高崎線が目の前を走る北藤岡駅の不思議

寄居駅から先は急に視界はひらけ、路線の左右に田園風景が広がる。

 

旧児玉町(現本庄市)の中心部に近い児玉駅、その次の丹荘駅(たんしょうえき)に停車、神流川(かんながわ)を越えると列車は埼玉県から群馬県へ入る。

 

↑埼玉県と群馬県の県境には神流川が流れる。河川敷に樹林がこんもり茂り、それが帯状に延びているのが神流川の特徴。八高線の車窓からは遠く赤城山を望むことができた

 

群馬県に入ると沿線に藤岡市の市街が広がる。この藤岡市の中心駅が群馬藤岡駅だ。この駅からは乗車する人ががぜん増える。ローカル線の趣は薄れ、高崎市の近郊路線という印象が強まる。

 

さらに高崎線に合流する手前に北藤岡駅がある。この駅は藤岡市内にあり、高麗川駅〜倉賀野駅間の駅の中では、それなりの乗降客がある。列車の本数が多い高崎線がすぐ横を通るため、北藤岡駅の高崎線用ホームを設置できないか、地元では何度も請願してきた。だが、新駅誕生までにはいたっていない。北側に国道17号も走り、また住宅も多い地区だけに、高崎線側にも駅ホームを造れば、一定の利用客は見込めるだろうと思うのだが、ちょっと残念に感じた。

 

↑八高線の北藤岡駅(写真左)。高崎線の列車が目の前を通り過ぎる。駅周辺は住宅街で乗降客も八高線の駅では多いほうだ。高崎線の倉賀野駅〜新駅間は6.1kmと駅間が長いこともあり、地元では駅の新設を求める声が多いのだが残念ながら実現していない

 

北藤岡駅の北側ですぐに高崎線に乗り入れる。さらに八高線の列車は高崎線の路線を3.6kmほど走り路線の終点、倉賀野駅へ滑り込む。ただ倉賀野駅で終着となる列車は1本もなく、次の高崎駅が、八高線の列車の終着駅となっている。

 

高崎駅の2・4番線ホームの南端に設けられた3番線ホームが八高線の列車が到着した。列車の始発駅・高麗川駅から1時間半。さらに八王子駅からを加えると約2時間ちょっと(乗継ぎ時間を除く)で到着した。2時間の乗車時間ではあったが、中身が濃いローカル線の旅が堪能できた。

 

↑八高線の終点駅、倉賀野駅から日本オイルターミナルの高崎営業所に向けて引込線が延び、石油輸送が行われている。倉賀野駅からは1945年まで岩鼻軽便鉄道という鉄道線が走っていた。その廃線跡が引込線として今も利用されている

 

 

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