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2019/1/26 18:00

和歌山の日本最短のローカル私鉄「紀州鉄道」―― つい応援したくなる弱小路線の旅

 

【ミニ路線めぐり1】終点の西御坊駅まではわずか所要8分

紀州鉄道の列車は朝と晩が30分間隔、日中はほぼ1時間間隔だが、御坊駅発に限っては9時台と11時台は2本が発車する一方、10時台、12時台の発車する列車はない。訪れる際には、この時刻をしっかり確認しておきたい。

 

平日と土曜・休日での時刻の違いはない。御坊駅〜西御坊駅間の所要時間はわずか8分だ。途中駅での下り上り列車の行き違いはなく、1編成が1日中、行ったり来たりしている。実にシンプルな運転方法だ。

 

運賃は御坊駅から終点の西御坊駅へ乗車しても180円、途中、紀伊御坊駅までなら150円と安い。ちなみにこの運賃、1998年4月から変更されていない。20年間、運賃が変っていないというのは何とも良心的というか、つい頭が下ってしまう。

 

2.7km、乗車8分、あっと言う間だが、写真中心にその行程をたどってみた。

↑紀州鉄道の列車は御坊駅の0番線ホームからとなる。ホームに券売機はなく、車内での支払いとなる。隣の1番線からは紀勢本線の下り列車(和歌山・天王寺方面)が発車する

 

御坊駅と次の学門駅との間が最も駅間が離れている。1.5kmもある。つまり2.7kmの行程のうち、この駅間だけで路線の半分以上、走ってしまうことになる。

 

0番線から発車した列車は左に大きくカーブしてJR紀勢本線と分かれ、御坊の市街を目指す。県道191号の踏切を横切ると、すぐに田畑が広がり始める。紀州鉄道の路線で、最も視界が開けるところだ。

↑御坊駅を発車。次の学門駅を目指す下り列車。この駅間に田畑が広がる。沿線には御坊で出荷量が多い花木を栽培する温室が多く立つ

 

↑御坊駅〜学門駅間には水田に水を引き入れるための小河川や用水路が多い。小さなガーダー橋を渡るKR205形。紀州鉄道の車両には「宮子姫」のイラストが側面に入る

 

↑御坊駅〜学門駅間の水田内にあるシンプルな踏切。警報器のない第四種踏切だ。平均時速が20kmと遅めの紀州鉄道だが、このタイプの踏切はさすがに少なくなっている

 

紀州鉄道の平均時速は20kmほど。ゆっくり走る姿が、ほほ笑ましく感じる。御坊駅から4分で、次の駅、学門駅に到着する。

 

同駅のすぐ近くには和歌山県立日高高等学校と附属中学校があり、平日の朝には、同駅で下車する学生の姿が多い。学門駅は「学問」に通ずるということもあり、学業のお守りとして入場券の人気が高い。学門駅は無人駅のため、この入場券は隣の紀伊御坊駅で販売されている。またホームの先端部(紀伊御坊駅側)には「学門地蔵」が設置されている。

 

↑御坊駅の次の駅は学門駅。路線の開業時は中学前駅と呼ばれた。開業した後の1941(昭和16)年12月8日、まさに太平洋戦争が開戦、真珠湾攻撃が行われた日に、同駅は廃止された。その後の1979(昭和54)年に元の駅跡に再び復活されている

 

 

【ミニ路線めぐり2】ぜひ立ち寄ってみたい紀伊御坊駅

御坊駅から2つめ紀伊御坊駅はぜひ降りてみたい駅だ。同駅のみ駅員が常駐している。現在の駅舎は1979年に建てられたもの。開業50周年の記念切符の売り上げ2000万円が駅舎の建築費にされたというからおもしろい。

 

↑紀州鉄道の駅の中では最も立派な造りの紀伊御坊駅。同駅が御坊市の本町通りといった市街に最も近い駅となっている

 

↑窓口では紀州鉄道のグッズ類が数多く販売されている。駅舎内にはそうしたオリジナルグッズがずらりと並ぶ。ほかにも古い鉄道用品、沿線の写真などが展示され楽しめる

 

紀伊御坊駅では記念切符をはじめグッズの販売を行っている。ちなみに紀州鉄道のグッズはホームページ上の「紀鉄ショップ」で通信販売されている。売れ筋トップは学門駅の入場券をキーホルダーとした「学門お守り(550円)」だ。

 

この紀伊御坊駅で販売される乗車券は懐かしい台紙に印刷された「硬券」。90周年の硬券セットも駅のみで販売されている(通信販売では扱いがない)。

 

紀伊御坊駅の構内には検修施設もあり、駐車場側から側線に停車している車両なども見ることができる。駅に隣接した本町603広場には、前述したようにキハ600形603号機を静態保存されている。たこ焼きや軽食処として活用されている603号機。小休止にも最適な施設だ。

 

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