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2019/1/26 18:00

和歌山の日本最短のローカル私鉄「紀州鉄道」―― つい応援したくなる弱小路線の旅

おもしろローカル線の旅29 〜〜紀州鉄道(和歌山県)〜〜

和歌山県の御坊市(ごぼうし)を走る紀州鉄道。紀伊水道の沖を流れる黒潮の影響で四季を通じて温暖。陽光かがやく紀州路を1両の気動車がのどかに走る。

 

「日本最短のローカル線」をうたう紀州鉄道。同鉄道も例外ではなく乗客の減少に悩む。苦境をどう乗り越えてきたのか、90年にわたる歩みをたどりつつ、今を見つめた。興味深い車両の変遷や沿線の風景とともに、魅力を楽しみたい。

↑紀州鉄道は御坊臨港鉄道として創業。2018年に90周年を向かえた。記念のヘッドマークを付けて走るのはKR205形気動車。元信楽高原鐵道の車両で、2017年4月から走り始めている

 

 

【紀州鉄道の歩み】和歌山県内で唯一の非電化路線として残る

和歌山県は古くは紀伊国(きいのくに)と呼ばれた。「紀州」はこの紀伊国の別称だ。そんな“壮大な”名を名乗る紀州鉄道。さぞや広がる路線網を持つのだろうと思ってしまうが、現状は御坊市のみを走る小さな鉄道会社だ。同社のホームページには自らを「日本最短のローカル私鉄」と紹介している。

 

実際には千葉県の「芝山鉄道」(路線距離2.2km)、あるいは南海和歌山港線の一部路線を所有する「和歌山県」が日本最短の路線を持つ鉄道事業社とされる。だが、芝山鉄道は京成電鉄からのリース車両を1編成所有するのみで、実際は京成線からの乗り入れ車が走ることも多い。「和歌山県」(路線距離2.0km)は線路を維持管理するのみで車両は所有していない。対して紀州鉄道は“立派”に自社車両を所有して、運行させている。健気な鉄道会社なのだ。

 

ちなみに和歌山県内を走る鉄道路線で、非電化路線は紀州鉄道のみ。非常に貴重な路線になっているわけだ。

 

そんな小さなローカル私鉄、紀州鉄道の概要を見ておこう。

路線開業1928(昭和3)年に御坊臨港鉄道株式会社を設立。1931(昭和6)年6月15日、御坊駅〜御坊町駅(現・紀伊御坊駅)間が開業
現在の路線と距離御坊駅〜西御坊駅間2.7km
駅数5駅(起終点を含める)
軌間と電化1067mm、全線非電化

 

1931(昭和6)年に御坊駅から御坊町駅(現・紀伊御坊駅)までが開業、さらに1934(昭和9)年に日高川の河畔近くの日高川駅間まで路線が延長された。当初の鉄道名が御坊臨港鉄道だったことから地元の人たちには、今も「臨港(りんこう)」と呼ばれ親しまれている。

 

その後の1984(昭和59)年には国鉄の経営合理化のあおりをうけ貨物営業を廃止。1989(平成元)年には西御坊駅〜日高川駅間の路線(0.7km)が、廃止されている。

 

紀州鉄道の歴史は路線の存亡を賭けた歴史でもある。特に1953(昭和28)年7月18日の紀州大水害により全線が水に浸かり、各所で路盤も破壊された。さらに多くの車両も水に浸かってしまう。運転再開までは2か月かかった。最近には2017年1月に脱線事故が発生。復旧までちょうど1か月を要した。

 

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