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2019/2/2 17:30

平成最後の春のダイヤ改正で注目したいポイントは? ―― 鉄道会社の狙いとその効果を探る【前編】

平成最後の春のダイヤ改正 〜〜JRと大手私鉄各社など〜〜

 

この春、JRや多くの鉄道各社がダイヤ改正を予定している。

 

看板列車の時間短縮や、新特急の運転開始、新車両の導入、新路線の開業と話題はつきない。東日本大震災で不通となっていた区間の復旧に合わせ、三陸鉄道のダイヤ改正も予定されている。

 

今回は平成最後のダイヤ改正となる。各社が予定している改正点で、特に注目したいポイントを前後編の2回に分けてピックアップした。さらに鉄道会社の狙いはどこにあるのかを含めて検証してみた。

 

 

【ここに注目!①】ダイヤ改正のラッシュ日となる3月16日

↑東京メトロ丸ノ内線の新型2000系。丸ノ内線のダイヤ改正はすでに2019年1月26日に終了している。この日に合わせて2000系が投入されるかと思われたが、2月中に運用開始と発表された

 

まず、この冬から春にかけてダイヤ改正を行う大手私鉄各社とJRグループの日程を見ておこう。すでにダイヤ改正を済ませた会社もある。

 

■ダイヤ改正済みの鉄道各社

2018年12月8日(土曜)京成電鉄、京浜急行電鉄、相模鉄道
2019年1月19日(土曜)阪急電鉄京都線
2019年1月26日(土曜)東京メトロ丸ノ内線

 

京成電鉄、京浜急行電鉄は都営浅草線を通して相互乗り入れをしていることもあり、同じ日にダイヤ改正を済ませた。さらに相模鉄道は星川駅の高架化に併せてダイヤ改正を行っている。東京メトロでは、丸ノ内線のダイヤ改正を同社他線よりも早めに行った。この日から、新宿駅止まりの一部列車を荻窪駅まで延長し、増発するなどしている。

 

■今後にダイヤ改正を予定する鉄道各社

2019年2月22日(金曜)京王電鉄
2019年3月16日(土曜)JR各社、東武鉄道、小田急電鉄、西武鉄道、東京メトロ各線(東西線・千代田線・有楽町線・副都心線・半蔵門線・日比谷線)、名古屋鉄道など
2019年3月24日(日曜)三陸鉄道

 

鉄道各社が通勤・通学客が減る週末にダイヤ改正をするのに対して、京王電鉄では平日の金曜日というタイミングで、ダイヤ改正を予定するというのが興味深い。昨年も同じ日だったが、「222」という語呂の良さを狙った感も。他社よりも先にダイヤ改正に取り組めばもちろん注目度も高くなる。京王線と相互乗り入れを行う都営新宿線もこの日にダイヤ改正を行う予定だ。

 

3月16日に多くの鉄道会社がダイヤ改正を予定している。JRグループ各社は発足した当時は日が揃わずに、10月にダイヤ改正を行った時期もあった。2010年ごろから全社が一斉に3月中に行う傾向が強くなっている。さらに、JRと相互乗り入れを行う各社も合わせてこの日に行う。2019年の3月16日は、まさにダイヤ改正の“ラッシュ日”となった。

 

三陸鉄道では、3月24日にダイヤ改正を行うとともにJRの路線を引き継ぐ記念すべき日となる。本原稿でも取り上げておきたい。

 

さて、平成時代の最後となったダイヤ改正だが、次は注目したいポイントを見ていこう。まずは日付順に2月22日にダイヤ改正を行う京王電鉄から。

 

 

【注目はここ!②】朝に走る上り「京王ライナー」を4本増発!

他社よりも早い2月22日にダイヤ改正を行う京王電鉄。大きな変更点は京王線を走る有料座席指定列車の「京王ライナー」の増発だ。「京王ライナー」は2018年2月22日、1年前のダイヤ改正時から走り始めた。運転開始からちょうど1年たつことから今回、見直しが行われた。

 

↑「京王ライナー」は、平日20時以降、土・休日17時以降、新宿駅→京王八王子駅、新宿駅→橋本駅というルートで運転を開始した。ロングシートからクロスシートへ転換可能な5000系が利用されている

 

◇朝は2分間隔という過密なダイヤの壁

「京王ライナー」で大きく変わるのは、朝に走る列車が登場すること。平日は橋本駅発→新宿駅着の2本、京王八王子駅発→新宿駅着の2本が走り始める。土・休日は橋本発が2本、京王八王子駅発が1本走る。

 

朝に座って行きたいという利用者にぴったりの朝の便。特に停車する途中駅からの利用者が多くなるのではないだろうか。京王線の沿線に住んでいる筆者としても歓迎すべきことだと思う。しかし、ラッシュがピークとなる時間帯(新宿駅着7時過ぎ〜9時)に走らせることができなかったのがちょっと残念だ。

 

平日の上り「京王ライナー」は、橋本駅から6時20分発(新宿駅7時着)と、8時49分発(新宿9時29分着)、京王八王子から6時5分発(新宿6時47分着)、8時31分発(新宿9時16分着)が走る。いずれの列車も過密となるピーク時間を避けている。

 

列車の本数が多いのが京王線の調布駅〜笹塚駅間で、7〜8時台は列車の間隔が最短2分間隔となる。1時間に26〜27本の上り列車が集中するのだ。列車の本数が極端に過密化している。今後、2022年度に完成予定とされる笹塚駅〜仙川駅間の立体交差事業が進み、優先して走らせる線路などを設けない限りピーク時の増発は難しいように思われる。

【注目はここ!③】最短3時間58分で走る「北海道新幹線」

ダイヤ改正が集中する3月16日。列島の北、JR北海道からダイヤ改正のポイントを見ていこう。

↑青函トンネル(写真)区間の最高時速が140kmから160kmに早まる。同青函トンネル区間では貨物列車と線路を共用しているため、思うようにスピードアップできない課題が以前から指摘されていた

 

2016年3月26日に開業した北海道新幹線。新青森駅から新函館北斗駅までが延伸され、東京と北海道が新幹線の線路で結ばれた。とはいうものの、津軽海峡の海底をくぐる青函トンネル内で、貨物列車と線路を共用しているため新幹線の列車も最速140kmとスピードが抑えられていた。

 

この春にようやく青函トンネル区間での最高時速が160kmに引き上げられる。最高時速を引き上げることで東京駅〜新函館北斗駅間の所要時間がやや短縮され、最短3時間58分と4分間短縮される列車が登場する。

↑新函館北斗駅と函館駅を結ぶのが「はこだてライナー」。新函館北斗駅〜函館駅間を約20分で走る。乗換え時間を含めると東京駅〜函館駅間は最短4時間49分ほどかかる

 

◇飛行機に対抗できるとされる“4時間の壁”は切ったものの

新幹線の所要時間では “4時間の壁”という言葉が良く使われる。ライバルとなる飛行機を利用するか、新幹線を利用するかの境目が4時間だというのである。だが、北海道新幹線の現状を見るとより厳しく映る。

 

札幌駅を最終目的地としてルート設定を行ったことから、函館市内と最寄りの新函館北斗駅が、かなり離れてしまった。ちなみに函館駅と函館空港間のバスが所要約20分。函館駅と新函館北斗駅間を結ぶ「はこだてライナー」が約20分だ。空港、かたや最寄り駅からかかる時間は変わりないが、待合せ時間などを加えると北海道新幹線では最短4時間49分(それでも4分短縮した)となってしまう。しかも3時間58分で走る列車は下りが2本、上りが1本と少ない。

 

JR東日本では、盛岡駅〜新青森駅間の最高時速を320kmまで引きあげる計画を検討していると伝わる。こうしたスピードアップが実現して本来の速さが、より活きてくるのではないだろうか。

↑石勝線、釧網本線を走る特急「スーパーおおぞら」。石勝線では途中での停車駅が増えたものの、一方で普通列車の本数が減ることなった

 

◇石勝線の新夕張〜夕張駅間が4月1日で廃止に

JR北海道の在来線で目立ったのが石勝線のダイヤ改正。札幌駅〜釧路駅間を走る特急「スーパーおおぞら」のうち、追分駅と新夕張駅に停車する列車が3本増える。一方で追分駅〜新夕張駅間を走る普通列車が改正前に、上り下りで計10本走っていたが、ダイヤ改正後はわずか5本に減便される。

 

石勝線では3月31日で夕張支線の夕張駅〜新夕張駅間16.1kmが廃止される。産炭地として栄えた夕張で、最後の路線となっていた元国鉄夕張線も127年の栄光の歴史を閉じることになった。石勝線の普通列車の減便と夕張支線の廃止。地方路線を存続していく難しさを如実に物語っているようだ。

 

 

【注目はここ!④】新設の特急「はちおうじ」「おうめ」が登場

JR東日本の路線で大きく変るのが中央線を走る列車それぞれ。上げてみると。

 

・特急「あずさ」「かいじ」の全列車がE353系に

・東京駅〜八王子駅間に特急「はちおうじ」を新設

・東京駅〜青梅駅間に特急「おうめ」を新設

・富士急行線に直通の特急「富士回遊」を新設

 

といったことが挙げられている。それぞれの列車ともに増備が進むE353系によって運転される。

↑2017年12月から運行が始まったE353系。増備が進みE351系、E257系と入れ替わるとともに、新たな特急列車にも使われることになる。9両と3両に編成を分割することができる利点を活かして、富士急行線内はその3両で走ることになる

 

◇新車両E353系の強みを活かした新着席サービス

増備が進んだ特急用車両のE353系。3月のダイヤ改正からは「あずさ」だけでなく「かいじ」の全列車にも使われるようになる。

 

E353系は働き場所が広がり、特急「はちおうじ」、特急「おうめ」が朝晩に運転される。新特急の創設は、やはりライバルとなる京王電鉄の「京王ライナー」や、西武鉄道の「拝島ライナー」といった有料座席指定列車に対抗する意味合いが強いように思われる。

 

加えて、中央本線から富士急行線へ乗り入れる新特急が登場。新宿駅〜河口湖駅間を特急「富士回遊」が毎日2往復で走り始める。海外から訪れる旅行客の増加に合わせた新特急の創設となった。

 

定期的に運行される特急すべてがE353系の運用となり、座席上に設けられたランプを活かした新着席サービスも採り入れられる。既存の特急で見ると常磐線のE657系を利用した特急「ひたち」「ときわ」と同様のサービスとなる。

 

座席指定券と空席があれば座れる座席未指定券も発売される。ちなみに座席指定券も座席未指定券も料金は同じだ。また「えきねっとチケットレスサービス」を利用すると100円の割引となる。

 

今年はまだ導入されなかったなが、中央線の普通電車には将来、グリーン車が連結される予定だ。さらに数年後、中央線は大きく変っていきそうだ。

 

【注目はここ!⑤】上越新幹線のE7系導入で変ることは?

この春から北陸新幹線を走ってきたE7系が上越新幹線にも導入されることになった。ダイヤ改正後には計5往復に利用され「とき」と「たにがわ」として走る。

↑北陸新幹線専用だったE7系だが、増備され上越新幹線も走るようになる。上越新幹線用の車両はまだ未発表だが、新潟へ走る車両らしく「とき色」になるという話も

 

E7系の上越新幹線への導入はこれが初めてとなる。さらにE7系の増備が進む予定で、これまで走っていたE2系やE4系と入れ替わっていく。すでに発表されているが、2020年度内には新幹線の車両としては唯一の2階建てだったE4系が消えていくことになる。

 

E4系は通勤客など新幹線の利用者の増加に対応してきた車両。自由席の2階スペースは1列に6席が並ぶという特異な車両だった。2階からの眺望の良さが魅力だったE4系も、近々、見納め、乗り納めの時を迎えそうだ。

 

◇山手線の内回り最終電車が品川駅行きでなく大崎駅止まりとなる

今回のJR東日本のダイヤ改正で注目されているのが、山手線の終電車に関する話題だ。内回りの最終電車が品川駅止まりから大崎駅止まりに変更となる。

 

現在、内回り電車は渋谷駅1時07分発、品川駅行きが最終だった。この品川駅行きの電車が0時40分発に早まり発車となる。以降に渋谷駅を発車する0時54分発、1時7分発は大崎駅止まりとなる。大崎より先に電車がないということになりかねないので要注意だ。

↑今回は品川駅の山手線用の留置線が廃止されるによる変更。山手線内回り、品川駅止まりの最終電車が、渋谷駅に例を見れば27分ほど繰り上げられての運転となる

 

 

【注目はここ!⑥】近未来的なデザインの新特急が走り出す

西武鉄道の特急といえば、これまでレッドアロー号の愛称で親しまれてきた。3月16日のダイヤ改正からは新型特急車両001系「Laview(ラビュー)」が走り始める。本サイトでもすでにその一端を紹介した。

 

今まで見たことのない新しい車両 — 鉄道車両のデザインに一石を投じる「西武新型特急」

 

「次の100年」を見据えた車両とPRされる001系。ざん新なスタイルと、上下に広げた大きな窓から沿線の眺望が楽しめる。乗ってみたい特急列車として注目を集めそうだ。

↑西武鉄道の新型特急001系「Laview」。2018年の12月からすでに試運転も開始され、注目を浴びている

 

西武鉄道ではほかに平日の朝、所沢駅発の豊洲駅行きの有料座席指定列車「S-TRAIN」が1本増発される。所沢8時37分発、豊洲駅9時46分着の予定だ。これまでは朝の上りは6時24分発のみだった。平日朝の有料座席指定列車は利用者の人気も高さに対応した増発なのだろう。西武新宿駅発、拝島駅行きの有料座席指定列車「拝島ライナー」も利用者が順調に推移していることから、西武新宿駅17時15分発の下り列車が増発される。

 

一方、夕方から夜にかけて走っていた所沢駅発、豊洲駅行きの「S-TRAIN」の運転が取りやめとなる。

 

 

【注目はここ!⑦】東武東上線TJライナーが座席指定制に変更

東京を走る大手私鉄では、有料座席指定列車の導入が盛んになってきた。このシステムの元祖ともいうべき列車が東武東上線を走る「TJライナー」だ。座席をロングシートからクロスシートに転換できる50900系を利用、「座席定員制」という形での運行を2008年6月から始めた。

 

このTJライナーが3月16日から「座席指定制」に変更される。これまでは空いた席に座るシステムだったが、座席表から希望の席を選べるようになる。

↑東武鉄道「TJライナー」用の車両・50090型。写真の50092編成は2月上旬まで「フライング東上」と呼ばれるレトロカラーだったが、2月12日に模様替え、「池袋・川越アートトレイン」として走る。「川越特急」としても運行予定だ

 

さらに「TJライナー」に利用される50090型は「川越特急」としても走るようになる。2月12日からは川越の魅力が描かれたラッピング車両「池袋・川越アートトレイン」も登場する。この「川越特急」は、運賃のみでの乗車が可能。土休日には下り2本、上り2本、平日は下り2本、上り3本が池袋駅〜川越駅間を最短26分で走り、小江戸・川越の魅力をPRする。

 

川越へはJR埼京線(川越線)と、西武鉄道の特急「小江戸」が走っている。こうしたライバルと競おうと、東武鉄道も強力な観光列車を投入してきたわけだ。

 

【注目はここ!⑧】北綾瀬駅へ10両編成の直通運転が始まる

東京メトロの路線では千代田線に注目したい。ダイヤ改正後、千代田線の綾瀬駅〜北綾瀬駅間に初めて10両編成の直通電車が走ることになる。

 

北綾瀬駅は、綾瀬車両基地(1969年に創設)周辺に住む人向けに1978(昭和53)年に設けられた駅だ。当初は利用者が見込めなかったことから綾瀬駅〜北綾瀬駅間のみを走る3両編成の電車が用意された。綾瀬駅の北側にある0番線ホームから電車が発車した。北綾瀬駅を利用する人は綾瀬駅での乗換えを余儀なくされるなど不便を強いられてきた。

 

誕生して40年たった北綾瀬駅は近年になり利用者が急増。2017年には1日平均の乗降客が初めて3万人を越えた。そうした乗降客の増加に合わせて本線の電車が北綾瀬駅に乗り入れ可能なように、ホームも10両編成用に延伸工事が行われた。そしてダイヤ改正後は晴れて、10両編成の電車が走り出すことになる。

↑綾瀬駅0番線ホームに停車する05系。元は東西線を走っていた車両で、改造した上で転籍した。同3両編成の05系はダイヤ改正後も10両編成の車両とともに綾瀬駅〜北綾瀬駅間のみの区間運転に使われる

 

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