乗り物
鉄道
2019/3/10 17:30

【2019年版】全国津々浦々を巡った鉄道ライターが薦める「桜と鉄道」撮影スポット集(後編)

鉄道おもしろ撮影旅 〜〜桜撮影スポット 関東・長野〜〜

前編では人気+定番スポットを中心に「桜と鉄道」撮影スポットを紹介した。後編では、あまり知られていないが意外に撮れる、また工夫すれば楽しい「桜と鉄道」写真が撮れる、いわゆる「穴場」スポットにこだわってみた。

 

人出が少なめ、マイペースで撮影が楽しめるのが、これらのスポットの強みだ。お気に入りのショットを狙ってみてはいかがだろう。ほか開花時期がやや遅めの長野県内のスポットと、「桜と鉄道」の撮影方法に関しても簡単に紹介した。

↑中央本線の四方津駅近くで。走るE353系特急「あずさ」の後部と四方津の桜を撮影してみた。街中の桜並木とはひと味ちがう自然の中で咲き乱れる桜を絡めてみても楽しい。同撮影地の紹介は後述。2018年4月1日撮影

 

↑同原稿では穴場(⑩以降)と長野県内の桜スポットを紹介。なお①〜⑨のポイントは前編で紹介

 

本原稿では前編と同じく撮影ポイントの「桜の美しさ」「行きやすさ」「撮りやすさ」の3つのポイントを星(☆)5つで評価した。☆が多いほど評価を高いことを意味する(※あくまで筆者が感じたままに出した評価です)。

 

また「行きやすさ」は電車、列車での行きやすさを基準とした。

 

◎おすすめ「穴場」撮影スポット

⑩北総鉄道・白井駅近く(千葉県白井市)

↑白井駅の東側にかかる陸橋・白井駅大橋の歩道から東側を撮影する。北総鉄道の両側を埋め尽く桜並木を切り取る。高速で走る京成電鉄AE形スカイライナーを上手く納めることができた。2013年4月1日撮影

 

◇桜の美しさ ☆☆☆☆

北総鉄道をはさむように東西に延びる国道464号。この国道沿いに多くの桜が植えられている。特に白井駅(しろいえき)をはさんだ東西が美しい。路線に架かる複数の陸橋から撮影が可能だ。いろいろな構図が工夫できて楽しい。

◇行きやすさ ☆☆☆☆☆

白井駅大橋へは白井駅から線路沿いを東へ220mほどで約3分と近い。

◇撮りやすさ ☆☆☆☆☆

陸橋に設けられた歩道は広々していて、歩行者も多いが、撮影していてもさほど邪魔にならない。白井駅付近にはほかに複数の陸橋も架かるので、さまざまな箇所から撮影にチャレンジしてみてはいかがだろう。

⑪西武新宿線・武蔵関駅近く(東京都練馬区)

↑西武新宿線では武蔵関駅〜東伏見駅間の桜が車窓から見ても美しい。路線の南側を流れる石神井川沿いが桜並木となっていて、その桜と西武新宿線を走る電車と絡めて撮影することができる。2013年4月1日撮影

 

◇桜の美しさ ☆☆☆

武蔵関駅〜東伏見駅間に冨士見池という湧水池があり、池を水源とした石神井川沿いが桜並木となっている。路線の南側に石神井川をはさんで並木がある。線路までのほど良い距離があり、桜と走る電車を絡めて撮ることができる。西武新宿線をはさんだ向かい側は、やや高台になっていてそこに咲く桜を入れ込むことも可能だ。

◇行きやすさ ☆☆☆☆☆

撮影ポイントまでは武蔵関駅から東伏見駅側へ300mで約4分と近い。さらに線路を500mほど歩くと富士見池が広がる武蔵関公園へ到着する。池の周囲も桜が多く散策に向いている。

◇撮りやすさ ☆☆☆☆

桜がある線路の南側の道は細め。歩道内に桜があるのだが、木が太くなってしまい歩道を塞ぐような形になっている。しかたなく歩行者は車道を歩くという状態に。そのため歩道内で撮影しているぶんには、逆に歩く人の邪魔にならない。線路の向かい側、北側の道からも撮影できるが、逆光となりがち。

 

 

⑫西武多摩川線・新小金井駅〜多磨駅間(東京都小金井市)

↑新101系のさまざまな塗装車両が走る西武多摩川線。写真は野川から新小金井駅方面へ向かう遊歩道沿いから撮影したもの。4月初頭の撮影ながら都内は早くも葉桜になりつつあるそんな週末だった。2018年4月1日撮影

 

◇桜の美しさ ☆☆☆☆

西武鉄道の路線網とは離れた単独路線となっている西武多摩川線。ややレトロな新101系が走る。沿線には桜の名所が多いが、新小金井駅〜多磨駅間が特におすすめ。両駅のちょうど中間地点を流れる野川の周辺に武蔵野公園、野川公園が広がっていて、その隣接地に自然木に近い姿で桜が植えられている。

広がるように咲き乱れる桜の花々と、西武の新101系。西武多摩川線らしい時代を感じさせる鉄塔を絡めての撮影が楽しめる。

◇行きやすさ ☆☆

新小金井駅から約900mで約12分かかる。近くに武蔵野公園があり、JR武蔵小金井駅、もしくは京王電鉄・調布駅からバス利用も可能。武蔵野公園バス停からは徒歩7分の距離。

◇撮りやすさ ☆☆☆☆☆

遊歩道沿いにある桜の木の下にはベンチがある。電車を待つ間、ベンチに座りながらのんびり撮影が楽しめる。上り武蔵境行き電車はきっちり12分おきに走るので、計算もしやすい。遊歩道を降りた下、野川沿いからは空を見上げる形での桜と鉄道の撮影も可能だ。午前中は上記の場所から、午後は野川沿いからの撮影が順光となる。

⑬中央本線・四方津駅近く(山梨県上野原市)

↑四方津駅は駅舎前、そして下り線用の3番線ホームに沿って桜が連なる。写真は東側にある歩道橋の階段からの撮影で、上り列車をとらえたもの。2018年4月1日撮影

 

◇桜の美しさ ☆☆☆☆☆

四方津駅を囲むように桜が植えられている。特に美しいのが下り路線用の3番線ホームの南側に広がる桜並木。日当たりのよい南斜面に植えられているせいか、背も高くなり、木々の勢いが良く花の広がる様子が素晴らしい。

◇行きやすさ ☆☆☆☆

上記のポイントは駅の北側にある出口から国道20号経由で東へ350m、徒歩5分ほど。民家が建つ間の小道を下に降りて行くと路線をまたぐ歩道橋の下へ着く。

◇撮りやすさ ☆☆☆☆☆

写真は歩道橋の南側、階段の途中から撮影したもの。同歩道橋は渡る人や、撮影する人が少なめで、気を使わずに撮影に集中できる。同場所の反対側、路線の北からの撮影も可能だ。北側は終日、逆光になりがちだが、花の季節ともなると太陽も高い位置にあがるようになるため、車体全体に光がまわり逆光もそれほど気にならなくなる。

 

 

⑭東海道本線・早川駅〜根府川駅間(神奈川県小田原市)

↑東海道本線の早川駅〜根府川駅間を俯瞰する。米神(こめかみ)地区に桜並木、さらに桜が点在、その中をうねるように走る貨物列車の編成が撮影できる。相模灘を目の前にした温暖な地だけに、桜とともに早くも鮮やかな緑も写り込んだ。2013年3月26日撮影

 

◇桜の美しさ ☆☆☆☆

風景の中の一部に集中して植えられた桜を写し込める山中のポイント。降りた米神(こめかみ)地区の線路沿いは古くから東海道本線の名物ポイントとして知られ、線路沿いでも桜と鉄道を絡めての撮影が可能だ。

◇行きやすさ ☆

根府川駅から1.8km、徒歩で30分ほど。海岸沿いを走る国道135号に一度出て、途中から山中へ入る。登りがあるので健脚向けポイントだ。また麓の米神地区の撮影スポットへも徒歩で30分ほどかかる。

平日のみ小田原駅から根府川駅経由の石名坂(いしなざか)行きバスが日に8本ほど走る。国道135号沿いにある米神バス停からは徒歩で20分ほど。

◇撮りやすさ ☆☆☆☆☆

米神地区か登った農道からの撮影となる。付近はミカン畑で、左下に東海道新幹線、右下に東海道本線が見下ろせ、景色を楽しみつつ撮影が楽しめる。農繁期以外、登ってくるクルマはそう多くないが、付近は細い道のみなので、クルマでの撮影には不向きだ。

 

⑮京葉臨海鉄道・北袖付近(千葉県袖ケ浦市)

↑千葉県の臨海部を走る千葉臨海鉄道。写真は袖ケ浦市の北袖付近で撮影したもの。一般の人たちがほぼ撮影に来ない超穴場といっていい。この年は4月初旬で早くも葉桜となりつつあった。2016年4月6日撮影

 

◇桜の美しさ ☆☆☆

京葉臨海鉄道とその東側を通る国道16号の間の境界には一般の樹木に混じって桜の木が多く植えられている。臨海鉄道の関係者以外あまり立ち入らない場所のせいか、桜が枝を低いところまで伸している。そんな威勢の良い桜の花と貨物列車を絡めて撮影ができる。

◇行きやすさ ☆

内房線の長浦駅から上記の撮影ポイントは2.4km、徒歩で30分と遠め。クルマでの撮影向きといえそう。

◇撮りやすさ ☆☆☆☆☆

国道16号と臨海鉄道の間似広がるスペースからの撮影となる。臨海部で土地にも余裕がある。線路に近づかない限り自由に撮影ポイントが選べるのがうれしい。国道16号側のスペースは日中がほぼ順光だ。列車のスピードも遅く、じっくりと追うことができる。

 

なお列車ダイヤは貨物時刻表で調べることが必要。土日曜日などは列車が運休になることが多いので平日に出向くことが必要となる。どちらかと言えばマニア向きのスポットだ。

 

 

◎おすすめ「長野県」撮影スポット

この原稿では長野県の「桜と鉄道」向け撮影スポットも紹介したい。関東地方に比べて春の訪れが遅めの長野県内。関東地方でまずは撮影を楽しんだ後に、満足し切れない方はさらに長野県に訪れてみてはいかがだろう。

 

広がる自然と美しい風景に囲まれて撮影が楽しめる。

 

⑯JR飯山線・蓮(はちす)駅(長野県飯山市)

↑飯山線の蓮駅はホーム1本の小さなローカル駅だ。春は桜に包まれる。北陸新幹線の飯山駅のすぐ隣の駅にこのような美しい駅があることに驚かされた。2015年4月19日撮影

 

◇桜の美しさ ☆☆☆☆

蓮(はちす)駅ホームを降りると桜が迎えるそんなローカル駅。ディーゼルカーとちょうどカーブしたホームに停車。そんな車両と桜を絡めて撮影ができる。同駅の桜の開花は4月の中旬だが、翌年4月23日に同駅に立ち寄ったところ、すでに桜の花は散ってしまっていた。地元の観光協会などに桜の開花状況を問い合わせしてから行くことをおすすめしたい。

◇行きやすさ ☆☆☆☆☆

撮影箇所は蓮駅を下車してすぐ。駅の目の前にある永国寺という寺に渡る踏切の横から撮影した。北陸新幹線の飯山駅からは乗車7分で蓮駅に着く。

◇撮りやすさ ☆☆☆☆☆

撮影ポイントは狭いが、撮る人がいなかったこともあり自由に撮影できた。写真は曇りがちの日に下り列車を撮影したもの。また好天の日には駅の横を通る県道から上り列車を撮影すると良さそうだ(上記写真の後ろ側に県道が通る)。

 

 

⑰長野電鉄・桜沢駅近く(長野県中野市)

↑桜沢駅付近を通過する長野電鉄1000系「ゆけむり」。後ろに桜沢地区の桜とともに鮮やかなハナモモなどの花木が山を埋め尽くし、見事だ。2014年4月28日撮影

 

◇桜の美しさ ☆☆☆☆

最寄り駅は桜沢駅(さくらさわえき)と、まさに桜に縁が深い駅名となっている。この駅近くの傾斜地に桜に加えて、ハナモモ、キクモモといった木々が地元の人たちにより手入れされいて、春に一斉に花開く。

写真は近くで撮影せずに全景を入れるためにやや離れて撮ったもの。背景には雪が残る北志賀の山々も写し込むことができた。

◇行きやすさ ☆☆

撮影した場所は桜沢駅から県道を南へ約1.2km、15分ほど歩いたところ。遠景として駅側を撮りつつ、大きくカーブして近づいてくる長野電鉄の車両も撮影できる。

◇撮りやすさ ☆☆☆☆☆

県道をやや線路側に入った農道からの撮影。首都圏ならば撮影に訪れる人もいるのだろうが、駅近くでもまったく見かけなかった。

 

 

⑱中央本線・大桑駅近く(長野県大桑村)

↑中央本線を走るJR東海の特急しなの383系と桜を合わせて撮影した。同地は大桑村須原と呼ばれる地区で、S字カーブを描き走る列車の名物撮影地として鉄道ファンに良く知られている。2013年4月11日撮影

 

◇桜の美しさ ☆☆☆☆

中央本線が走る堤上にある桜の自然木。本数は多く無いものの、車両とともに桜が写せるポイントとして知られている。カメラを構える箇所にも桜の木があり、花に包まれての撮影が楽しめる。特急、普通列車以外に、EF64形式電気機関車が重連で牽引する貨物列車(タンク貨車)も撮影できる。春になると石油輸送のための列車本数がやや減るのが残念だ。

◇行きやすさ ☆

大桑駅から国道19号を線路沿いに北上、伊奈川と呼ばれる木曽川の支流の流れを越えたら、線路下の道をくぐり、やや登る。駅からは約1.8km、25分の距離。付近に駐車場は無い。

◇撮りやすさ ☆☆☆☆☆

線路に続く斜面の上、道沿いにある土手の上からの撮影となる。近年、線路に近づくことないようにフェンスが設けられたが、高さは低めで、撮影の障害とはならない。

○その他の桜イベント情報

本原稿を作成中に、桜に関わるイベント情報が舞い込んできたので、一緒に紹介しておきたい。

 

◇相模鉄道・弥生台駅の桜がライトアップされる

相模鉄道いずみ野線の弥生台駅(神奈川県横浜市)は桜の木々に包まれている。花咲く時期となればホームからもその様子が楽しめ素晴らしい。同駅では3月16日(土)〜4月4日(日)の期間中、桜並木がライトアップされる予定だ。駅周辺や駅に隣接するフレンチレストラン「ペタル・ドゥ・サクラ」といった諸施設からもその美しい模様が楽しめる。

↑弥生台駅を包むように植えられた桜並木。夜はライトアップされ、さらに美しさが増す。東側にある駐輪場付近から駅と桜並木を俯瞰した。写真提供:相模鉄道

 

◇大井川鐵道がお花見夜桜SL列車を運行

大井川鐵道の沿線も鉄道と桜を絡めて撮影できるスポットが多い。そんな大井川鐵道で夜桜を楽しむSL特別列車が運行されることになった。運転日と行程は次の通りだ。

 

・運転日:2019年3月30日(土)

・行程:往路/新金谷駅18時00分発 → 家山駅18時28分着、帰路/家山駅20時14分発 → 新金谷駅20時44分着

・旅行代金:大人6000円(お座敷客車利用の場合)、6500円(展望車・普通客車利用の場合)

 

家山駅の手前、約1kmにわたり桜のトンネルが連なる。夜桜列車はその区間をゆっくり走り、車中からも夜桜を堪能することができる。

 

最後に「桜と鉄道」撮影方法に関して簡単に触れてみよう

 

 

◎おすすめ「桜と鉄道」撮影方法

一般的な桜を主題にした風景撮影と異なり、鉄道車両を絡めて撮るとなると、ちょっと撮影テクニックも異なってくる。そんなポイントを紹介したい。

 

◇主役をどちらにするか

桜と鉄道、どちらを主役にするのかを明確にしておきたい。鉄道が主役ならば、ピントは車両主体に合わせることが大切だろう。

 

加えてISO感度をあげるなり、またシャッター速度を遅くするなりして、絞りをなるべく絞った方が(もしくは絞り優先モードを利用、絞りの数値を上げる)、桜と鉄道の両者に、ピントの差が少なくなる。これで車両にピントはあったが、桜がピンボケということが解消できる。

 

◇空をより青く見せる工夫

桜の季節ともなると、意外に天気が続かない。また天気予報で晴れが予測されているにも関わらず、花曇り、春がすみと写真撮影のマイナス要素も春は増えてくる。青空が出ない日は、なるべく空を入れない構図にした方が賢明だろう。

 

さらに春になると普通に撮影していると空がやや赤みがかり、やや汚れがちに写ることがある。青空がはっきり見えている日は、ホワイトバランスを「太陽光」にして、さらにPLフィルターを上手く使うと、空の色がすっきりと仕上がる。

↑列車が近づく合間を利用して、桜の花を撮影する。桜の花が咲く時期、雲一つ無い青空は非常に貴重といって良い。写真はRAW画像で撮影したもので、桜の色をやや赤く微調整した。色はそれこそ個人の好みが強いのでいろいろ調整して試してみてはいかがだろう

 

◇露出補正はどうする?

通常の桜撮影の場合は、フレーム内にピンクの桜の花の割合が多くなることもあり、プラス補正で、と良く紹介されている。だが、鉄道絡みとなると、これはケースバイケースと言えるだろう。筆者個人はややマイナス補正にすることが多い。オーバー露出で白く写った写真よりも、ややマイナスぐらいで撮影した方が、後で調整しやすいということが多いからだ。

 

いずれにしても、撮影した後に色の微調整は可能だ。失敗を恐れず、多くの写真を撮って、「桜と鉄道」写真の楽しさを満喫していただきたい。

 

 

【ギャラリー】