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2019/7/28 18:00

間近に迫るJRとの相互直通運転 −− 活気づく「相鉄線」の工事進捗をレポート!

私鉄乗り歩き探訪記 〜〜相模鉄道・相鉄本線(神奈川県)〜〜

 

相鉄線とJR東海道本線(貨物線)を結ぶ「相鉄・JR直通線」2.7kmの開業が2019年11月30日になることが発表された。いよいよこの秋に、新線を使って、相鉄線とJR線との相互直通運転が開始されることになる。

 

新線開業を目前にして、相鉄線はどのように変わろうとしているのだろう。直通線が乗り入れる西谷駅(にしやえき)や、新駅を巡った。これまで現地取材で追い続けてきた工事による変貌ぶりと合わせてお届けしたい。

 

↑相鉄・JR直通線用に用意された相鉄12000系。2019年4月20日から運行されている。相鉄の新車両は12000系をはじめみな「YOKOHAMA NAVYBLUE」で統一されている。新路線開業までに10両×6編成の増備が進む

 

【変わる相鉄線①】11月30日からJRと相互直通運転を開始

2010年3月25日に起工した相鉄・JR直通線。ほぼ10年の歳月をかけ、相鉄線の西谷駅とJR東海道本線貨物支線の羽沢貨物駅まで、地下連絡線が新設され、新駅・羽沢横浜国大駅を開設される。運転開始日は11月30日と決まった。同駅からJR東海道本線への連絡線を通って、JRとの相互直通運転を始められる。

 

11月30日は土曜日にあたるため、12月1日までは土休日ダイヤで運行、12月2日から平日ダイヤで運行される。新線の開通は、まさに相鉄沿線に住む人たちへ一足早い“クリスマスプレゼント”になりそうだ。

 

↑横浜市神奈川区に誕生する羽沢横浜国大駅(はざわよこはまこくだいえき)。ちょうどJR東海道本線貨物線の羽沢貨物駅に隣接して設けられる。この先、JR線への連絡線と、さらに東急電鉄の日吉駅まで延びる「相鉄・東急直通線」の新線工事が進められている

 

具体的には、どのように電車の運行が行われるのだろう。次に概要を見ていこう。

 

【変わる相鉄線②】日に46往復、朝は1時間に4本を運転予定

相鉄・JR直通線を使った相互直通運転の運行区間は相鉄線・海老名〜JR線・新宿となる。相鉄本線からの直通運転が行われるわけだ(現在、相鉄いずみ野線からの直通運転の予定はない)。

 

終日の運転本数は46往復となり、計92本となる。かなりの本数が直通運転されることがわかる。

 

列車本数は朝のピーク時が1時間に4本の割合で、その他の時間帯は1時間につき2〜3本という運転になる。朝の通勤時間帯の一部列車は大宮方面まで直通運転が行われる。

 

つまり朝は15分に1本、日中は20分〜30分間隔となる。将来的には、東急電鉄との相互直通運転も行われる予定で、こちらの電車も加味されれば、相鉄線は、ほかの大手私鉄路線と同様に、東京都心と沿線を直結した東京近郊路線そのものになるわけだ。

 

↑相鉄・JR直通線の開業により、相鉄沿線からはJRの新宿駅、渋谷駅などへのアクセスが飛躍的に改善される。都内を相鉄線の電車が走る姿も近いうち当たり前のことになりそうだ

 

この直通運転により二俣川駅〜新宿駅間の到達時間は最速で44分(現行は1時間前後)。大和駅〜渋谷駅間が最速で45分(現行は1時間弱)となる。15分という時間の短縮のみならず、現状の横浜駅での乗り換えることなしに、都心へ行けるようになる。これは何よりのメリットと言えるだろう。

【変わる相鉄線③】JRとの相互直通運転で使われる車両は?

相鉄・JR直通線では相鉄の新型12000系と、埼京線用のJR東日本のE233系が使われる。

 

とくに12000系はJR線への乗り入れがスムーズに行われるように、JR東日本の通勤用電車を代表するE233系と機器類を、極力合わせて造られている。言わずもがなだが、自社線は自社の運転士が、乗り入れ先では他社の運転士が行うわけで、扱い慣れている車両が直通運転では必須なわけだ。

 

12000系は、総合車両製作所(横浜市金沢区/JR東日本の子会社)で製造された。ちなみにE233系も総合車両製作所で造られており、12000系とE233系はいわば兄弟車両と言って良いだろう。

 

ただし個性的な正面のデザインや、内装など相鉄流のおしゃれな“味付け”が行われている。E233系に乗り慣れた乗客が、12000系に乗った時にどのような“反応”が見せるか、このあたりも直通運転当初のお楽しみになりそうだ。

 

↑相鉄への乗り入れに使われる埼京線のE233系。埼京線のE233系は7000番台に区分けされている。相鉄・JR直通線の開業予定に合わせ、7編成70両が増備された。JR側もすでに準備万端といった状況だ

 

ちなみに相鉄では11000系という車両も走っているが、この車両も12000系と同じように、JRのE233系とほぼ同機能。同性能を持っている。この11000系だが、現状では直通運転には使われないとのことだった。今後、増便などがない限りは相鉄の12000系を使っての運行が進められる。

 

 

【変わる相鉄線④】すでに新線では試運転電車が走り始めていた

相鉄線と相鉄・JR直通線が分岐する駅は西谷駅。現在は「各停」しか停車しない駅だが、開業後は大きく変わる。急行を除きすべての電車が停車するようになる。急行も通勤急行は西谷駅に停車するようになる。

 

乗り換えという重要な役割を持つ駅に“格上げ”されるわけだ。そんな西谷駅に訪れた。駅近くの跨線橋に上がると。

 

あれ〜! トンネル内を電車が走ってくるような耳慣れない走行音がする。しばらくすると12000系が新線のトンネルを出てきた。そう! 試運転が始まっていたのである。12000系を利用、すでに西谷駅〜羽沢横浜国大駅の間で試運転が連日、続けられている。

 

↑西谷駅を発車する羽沢横浜国大駅行き試運転電車。相鉄本線はホーム中側の2・3番線を利用。新線は外側の1番・4番線が使われる。ホームや駅周辺では改良工事が続けられていた

 

西谷駅すぐ近くの跨線橋からは、駅ホーム側と、逆側の新線のトンネルの出入り口が見ることができる。上写真が駅ホーム側、下写真が相鉄・JR直通線のトンネル入口の様子だ。試運転がすでに開始されているだけに、トンネルの出入り口の付近の工事はほぼ終わっているように見えた。

 

↑西谷駅から相鉄・JR直通線へ走る試運転電車(左側)。右側には新線のトンネルの出口があり、試運転電車は西谷駅の1番線ホームへ上がっていく様子が見えた(右上写真)

【変わる相鉄線⑤】工事の進み具合を西谷駅で定点観測した

すでに試運転電車が走る西谷駅〜羽沢横浜国大間だが、この夏には、試運転電車の運転区間が伸び、12000系のJR線への乗り入れも始められるだろう(すでに7月26日未明に品川まで試運転が行われた)。さらにJR東日本のE233系もこの西谷駅まで足を延ばす様子が、間もなく見られることになりそうだ。

 

今後とも気になる西谷駅の状況だが、筆者は昨年秋に、この西谷駅を訪れていたので、その時の様子と現在を見比べておきたい。

 

↑2018年11月に撮影した西谷駅近くの跨線橋から見た新線の様子。作業車両がトンネル内にいることがわかる。この新線と相鉄本線を間にも半年前には足場が組まれ、作業が慌ただしく進められていたことがわかる

 

昨年の11月、同じ跨線橋から撮ったトンネルの入口部分。作業用の事業用車両がトンネル内に停まっていて、ちょうど架線を張る作業が行われていた。

 

また西谷駅の逆側には、新線用の折り返し線の整備が行われていた。現在は、すでにこの折り返し線を利用しての試運転列車の運転が続けられている。半年で、この変わりよう。新線の整備は確実に進められていた。

 

↑西谷駅の先には下り上りの2本の線路の間に折り返し線が設けられる。2018年11月は、まだ重機が線路上に置かれていたものの、工事は最終盤を迎えていた

 

↑2019年7月から始められた試運転。でき上がった折り返し線を利用して試運転電車が頻繁に行き来。西谷駅に停車したのち、羽沢横浜国大駅を目指して走り出す

 

【変わる相鉄線⑥】新駅・羽沢横浜国大駅の工事の進み具合は?

新線の途中には羽沢横浜国大駅(はざわよこはまこくだいえき)ができる。この駅の最寄りにはJR東海道本線の横浜羽沢駅(羽沢貨物駅)という貨物専用の駅がある。正式にはこの路線は東海道本線貨物支線と呼ばれる路線で、鶴見駅から東戸塚駅間の16.0kmを走る。

 

1979(昭和54)年10月1日に、当時の国鉄が旅客列車の多い横浜駅を避けて貨物列車を走らせるように、バイパス線用に設けた貨物専用線だ。

 

東海道本線は、首都圏と関西、中国、九州を結ぶ貨物列車の幹線ルートでもある。早朝から深夜まで東西を結ぶ貨物列車が引っ切りなしに走る。とはいえ、国鉄が路線を開業したころに予測した貨物輸送量ほどには至らず。現在は、ホームライナーなどのJRの旅客列車も利用するなど、多少、ダイヤに余裕のある路線となっていた。

 

新駅から、この東海道貨物支線との間に連絡線を設け、この連絡線を通って相鉄とJR東日本の車両が相互乗り入れを行う。羽沢横浜国大駅と駅周辺には何度か訪れていたので、こちらの工事の進み具合も振り返ってみよう。

 

↑2018年1月の新駅・羽沢横浜国大駅の状況。駅舎は骨組みが組み上げつつある状態だった。ホームは同駅舎の地下に設けられている。構内の工事は駅舎の建築と平行して進められていた

 

↑羽沢横浜国大の近況。すでに駅名表示まで付けられほぼ整備が終わった状況だった。駅前の舗装が終了すれば、いつでもオープンできそう

 

【変わる相鉄線⑦】新駅の構内と連絡線の様子も見ておこう

駅構内にも2度にわたり現地取材をしたので、ここで再録しておこう。

 

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↑2018年1月17日の羽沢横浜国大の構内の様子。一部に線路が敷かれていたものの、路盤には枕木など、これから工事に使う材料が多く積まれていた

 

羽沢横浜国大駅の2018年1月と2019年3月の様子を対比した。地下で進められていた工事も、1年ほどの間にこれほど進展するものなのかと実感させられた。

 

この春に訪れた新駅のホームには安全対策用のホームドアも設置され、構内の信号も点灯していたことがわかる。すでに試運転電車が同駅に入線してきていることもあり、さらに完成度は高まっていることだろう。

 

↑羽沢横浜国大のホームから、JRとの連絡線がある側を見る。先で中央と、右側に線路が分かれていることが分かる。同位置の線路の様子は後述

 

↑羽沢横浜国大駅から西谷駅側を見る。この先は西谷駅の手前までトンネルとなっている。運転開始後、列車は新線を一気に駆け抜けることになりそうだ

 

羽沢横浜国大駅の東側で、JR東海道本線貨物支線と合流する。駅側からそのポイント部分の様子は見えないが、駅近くの跨線橋から連絡線の様子を推測することができる。昨年秋と現状を比べてみたのが下の写真だ。

 

↑羽沢横浜国大駅からJR線へ入る連絡ルートが左側に見えている。右側がJR横浜羽沢駅の構内で、この撮影時には構内の線路整備も行われていた

 

↑上の写真と同地点から写した近況。連絡線にはすでに線路が敷かれ、架線も付けられている。JR横浜羽沢駅の構内の工事もすでに完了していた

 

↑報道公開時に撮影したポイントの様子。羽沢横浜国大駅の東側で、このように線路が分岐している。左右の線路がJR線との連絡線、真ん中の2本は、この先に伸びる相鉄・東急直通線だ。日吉駅まで地下路線を通って結びつく予定だ(詳細後述)

 

 

【変わる相鉄線⑧】変化が予想される羽沢横浜国大駅の駅模様

新駅・羽沢横浜国大駅付近の現在は、横浜市内とは言っても不便な場所となっている。現在の公共交通機関はバスのみ。しかも本数が少ない。

 

↑新駅・羽沢横浜国大駅の建物の裏手に東海道本線貨物支線の列車が走る。早朝、関西発の貨物列車が頻繁に通り抜ける。駅周辺にはマンションも見えるが、横浜市内とは言っても駅周辺は閑散とした状況だ。新駅誕生でこの付近も大きく変貌しそうだ

 

よって筆者も報道公開で訪れた時以外は、最寄りの上星川駅や西谷駅(徒歩で約30分〜、2.5km〜ほど)から徒歩か、バスを利用した。バス利用の場合には新横浜駅〜保土ケ谷駅西口間を走るバスを利用する。このバス、時刻表を見て驚かされる。1時間にほぼ1本、一部の時間帯でも2本といった様子なのだ。

 

横浜市内とは言ってもかなり辺鄙な土地に感じた。地元に住むという鉄道ファンは本数が少ないこともあり、バスの発車時間を諳んじていた。さらに「今は自転車で上星川駅まで通っています」。だが、そんな暮らしも11月末で終わりとなる。彼は「ここから電車に乗れるのは素直にうれしい」と話すのだった。

 

↑現在は、新駅の近くに神奈川中央交通のバス停「羽沢貨物駅」がある。新横浜駅前〜保土ケ谷駅西口間を走るバスで、途中、相鉄の上星川駅前を通る

 

羽沢貨物駅というバス停名も11月30日になればがらりと変わることになるのだろう。駅周辺がどのように変貌していくか、楽しみでもある。

 

【変わる相鉄線⑨】東急との乗り入れ工事の進捗状況は?

先の羽沢横浜国大駅の分岐ポイントでは、東急東横線への連絡線の工事も進んでいた。ここからは相鉄・JR直通線とともに、建設される相鉄・東急直通線の現状を見ておこう。

 

相鉄・東急直通線は路線距離が約10.0km。羽沢横浜国大駅から新横浜駅(仮称)、新綱島駅(仮称)を通り、東急電鉄の日吉駅の間が結ばれる。完成は2022年度(下期)の予定で建設が進められる。

 

すでに路線名も正式に決まり、新横浜駅を境に西谷駅〜新横浜駅間を「相鉄新横浜線」(6.3km区間)、日吉駅〜新横浜駅間を「東急新横浜線」(5.8km区間)と呼ぶことになる。

 

↑日吉駅から綱島駅方面へ向かった先に地下へ入る新線の建設現場がある。2018年11月でこの状況。地下部分の整備を中心に行われていた

 

現在、日吉駅は東急目黒線の電車が始発駅となっている。その折り返し線につがなるように連絡線が造られていることもあり、将来は、相鉄線と、東急目黒線との間の直通運転が行われることになる。

 

新線がつながることにより、二俣川駅〜目黒駅間は約38分となる。これは現状と比較して16分程度の短縮につながる。さらにこれまで、やや不便だった、東海道新幹線の新横浜駅へのアクセスが格段に改善される。

 

東急新横浜線の開業で、渋谷から新横浜まで約30分になる。約11分の短縮につながる。東京都の西部や神奈川県に自宅がありながら、新横浜駅はややアクセスが不便だった、という人も多かったのではないだろうか。新線開業後は、新横浜駅で乗降しようとする人が格段に増えそうだ。

 

↑上写真と同じ区間の近況。すでに地下へ入る新線の建設が進み、同位置から上は望めないようになっていた。周りの東横線の高架橋の整備もつづけられていた

 

 

【変わる相鉄線⑩】相鉄・東急直通線の完成で一連の工事も終了へ

相鉄・東急直通線の工事が進むとともに徐々に車両の準備も進められている。

 

相鉄では12000系がデビューした1年前、2018年2月に20000系を登場させた。この20000系こそ東急電鉄との相互乗り入れを目指して造られた車両だ。車両幅が東急電鉄の車両幅に合わせている。まだ10両1編成のみだが、12000系の増備後には、この20000系の増備を進めることになるだろう。

 

↑東急電鉄との相互乗り入れように造られた相鉄の20000系。現在は10両1編成のみだが、将来は増備されそうだ。その時には目黒線の運用に合わせて8両化されるのだろうか

 

さらに東急電鉄では目黒線用の3020系という車両を登場させた。2019年秋から本営業に使われる予定になっている。この3020系、気になるところは、その車両編成数。当初は、今の目黒線に合わせて6両編成で運行されているが、新線が開業する2022年度までに徐々に1編成が2両ほど増やして8両編成となる。

 

東急目黒線は東京メトロ南北線と、都営地下鉄三田線、埼玉高速鉄道との相互直通運転が行われている。現状、どの路線も6両編成で運行されているが、都営などでは8両化に踏み切るという話も出てきている。

 

その他の路線ではどうするのだろうか? 2022年度の完成予定とされる相鉄・東急直通線。この新線完成に合わせて、これらの路線の電車も大きく変って行くことになりそうだ。

 

2022年度の相鉄・東急直通線の開業で、相鉄線を取り巻く一連の工事も終了、新線計画も完結を迎える。

 

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