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2019/9/15 18:00

昭和初期の風景がそのまま残る!「天浜線」11の秘密

【天浜線の秘密③】遠州鉄道から天竜二俣駅まで列車が乗り入れた

天浜線は西鹿島駅(にしかじまえき)で遠州鉄道と接続している。遠州鉄道は浜松市近郊と市の中心部を結ぶ通勤・通学路線で、利用者も多い。西鹿島駅はこの遠州鉄道・遠州鉄道線の終点駅となっている。

 

かつて遠州鉄道のディーゼルカーがこの西鹿島駅から天竜二俣駅まで乗り入れた時代があった。1958(昭和33)年から1966(昭和41)年まで続けられ、最盛期には遠州森駅(その当時は遠江森駅)まで運転されている。

 

↑遠州鉄道と天浜線が接続する西鹿島駅。かつてはこの駅から遠州鉄道のディーゼルカーが現在の天浜線、天竜二俣駅や遠州森駅まで直通運転されていた

 

その当時に使われたディーゼルカーは遠州鉄道キハ800形。計3両を国鉄から購入、直通運転に使った。当初は利用者も多かったものの、徐々に利用者が減っていく。また車両自体が古く(1933〜34年製)、スピードアップが出来なかったことがあり、8年ばかりでその使命を終えた。

 

実は遠州鉄道キハ800形そのものを今も見ることができる。鉄道博物館(埼玉県さいたま市)に保存されているのだ。車両名は国鉄キハ41307(キハ41000形)。この車両こそ元遠州鉄道のキハ802そのものだ。同車両は遠州鉄道で働いた後に、北陸鉄道へ譲渡され、その後、筑波鉄道へ移り、引退後、愛好家たちに守られ、鉄道博物館へ寄贈された。数奇な運命をたどっていたわけだ。

 

ちなみに近年になり、浜松市の新市建設計画を企画するにあたり、遠州鉄道から天浜線への直通運転の検討が行われた。この直通運転は実を結んでいないものの、両線の列車の接続ダイヤ、天浜線の宮口駅(一部列車は西鹿島駅発)〜天竜二俣駅間の短区間列車の運転など、一部の計画は実施に移されている。かつての直通運転の歴史が、違う形で活かされていた。

 

 

【天浜線の秘密④】国鉄時代は遠江の名前が付いた駅が多かった

天浜線が走る静岡県西部には、遠江(とおとうみ)という地域名(国名)が残る。この遠江という名称は、7世紀前後から江戸時代まで続いた令制国(りょうせいこく)の遠江国(とおとうみのくに)に基づくものだ。

 

今も天浜線では遠江一宮駅と、遠江を頭に付けた駅名が一駅のみある。実は、国鉄二俣線時代には、他にも遠江という名前を付けた駅があった。

 

↑天竜二俣駅の扇形車庫に隣接する建物内に設けられた鉄道歴史館。天竜浜名湖鉄道に残された古い資料を展示している。その中の駅名表示板には、遠江森駅、遠江桜木駅、と現在では使われない古い駅名表示が残されている

 

国鉄二俣線の時代には、遠江桜木駅(現・桜木駅)、遠江森駅(現・遠州森駅)、遠江二俣駅(現・天竜二俣駅)と、遠江一宮駅以外に、3駅が「遠江」という名称を使っていた。この3駅ともに、国鉄から天竜浜名湖鉄道の路線に転換された時に、一緒に駅名も変更されている。

 

静岡県中部は令制国の呼び方では駿河国となる。駿河という地名は今も様々なところで使われている。比べて静岡県西部の遠江は近年になり、あまり使われていないのが実情だ。これが駅名の変更にも影響している。

 

静岡西部では、むしろ遠江の別称「遠州」という地域名の方が親しまれてきた。旧・遠江森駅が遠州森駅と名を変更したのが良い例である。ちなみに遠江の読みは「とうとうみ」ではなく「とおとうみ」。しっかり打ち込まないと、キーボード変換が難しく、また誤読しやすい地域名でもある。

 

余談が過ぎた。ここで天浜線を走る車両に関して簡単に触れておこう。

 

◇走る車両

現在、天浜線には3種類のディーゼルカーが走っている。まずは主力車両のTH2100形。当初はTH2000形として導入された車両だが、後に改造されてTH2100形となっている。車両の長さは18.5m、セミクロスシートの座席配置で、全車が前後に運転台を持つ。

↑天竜二俣駅でTH2100形同士が行き違い。右は2018年に緑とオレンジの「湘南色」にラッピングされた車両。「Re+(リ・プラス)」という愛称が付けられた。「Re+」には復活や再生、レトロといった意味が込められるとされる

 

↑丸みを帯びた車体が特徴のTH3000形。この車両のみ窓明けが可能な車両となっている。TH9200形は団体列車用に用意された。宝くじの助成を受けて導入されたこともあり「宝くじ号」の表記が入る。ちなみに9200の「92」は宝くじの「くじ」にちなんだもの

 

TH2100形以外には全席が転換クロスシートというTH9200形と、やや丸みを帯びた屋根が特徴のTH3000形の2形式があり、それぞれ1両ずつ使われている。

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