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クルマ
2019/11/3 18:00

自己流ドライブの問題点をあぶり出すJAFのシニア向けスクールに1日フル密着!

【注目ポイント③】パイロンスラロームでハンドル操作を確認する

「運転の基本」が説明された後に、愛車を使っての講習を受ける。まずパイロンで造られた障害の間を抜けて走る「パイロンスラローム」からだ。

 

チーフインストラクターの善養寺雅人さんは、パイロンスラロームのポイントとして、「目線の位置」「運転姿勢」「ラインどり」が大切だと話す。参加者は3本ずつ走ったが、2本目には全力走行、そして3本目は7・8割の力で走って欲しいと、参加者へリクエストされた。

 

日ごろ扱い慣れた愛車で、スムーズなハンドル操作が行えるかどうか。さらに通常はあまり気にしていない、内輪差があるということを確認ということもポイントになる。

 

クルマはカーブを曲がる時に、前輪が描く軌道にくらべて、後輪が描く軌道は、中側へ寄る。このタイヤが描く軌道の差を内輪差と呼ぶ。ハンドルを切るのが早かったために、車体を壁にこするトラブルが生じるが、これは内輪差があることを忘れてしまったことによるミスだ。

 

↑パイロンとパイロンの間にあるスペースを走り抜けるパイロンスラローム走行。カーブを切ると前輪と後輪が通る位置が異なる。この内輪差を理解して、ハンドルを切ることが、ここでのポイントとなる

 

このパイロンスラローム走行。2組に分かれ、順番に3回トライする。25台が走ったが、目立った失敗例は見られなかった。こうした講習会に参加するドライバーは、運転への興味も高く、やはり運転も一般ドライバーに比べて上手なように感じられた。

 

それでも参加者の1人、藤咲博史さん(59歳)は、「ハンドルを切り、その戻しが遅れてしまい、次にハンドルをより大きく切ることが必要になりました。あぁ、ハンドル操作が遅れているな、その時に感じましたね」と話す。大学時代はスキー部でスラローム競技に興じたそうだが、「スキーのようには上手くいかなかったなあ」と語るのだった。

 

多くの人が、自然にポイントを実感して運転しているように見えた。しかし、実際にはハンドル操作の遅れや、切り替えしの難しさを体感していたのである。

 

↑スラローム走行を試す前に、それぞれの運転姿勢のチェックが行われた。乗り慣れた姿勢での自己流運転は、時に危険を招くおそれが。ふだん、こうした指摘を受けることがないせいか、逆にありがたく感じていた参加者も多かった

 

【注目ポイント④】バック時の急停止が強烈だった先進安全自動車

スラローム走行までで、午前の部は終了。お昼過ぎからは、先進安全自動車(ASV=Advanced Saftey Vehicle)を使った同乗体験が行われた。

 

先進安全自動車とは、先進技術を利用してドライバーの安全運転を支援するシステムを搭載したクルマのこと。国土交通省、自動車メーカーが参加し、30年にもわたり研究・実用化が進められている。

 

今回は、SUBARUのアイサイト搭載車への同乗体験が行われた。

 

↑〝壁〟に向けてバックするSUBARUのアイサイト搭載車。突然にブレーキがかかり、壁の一歩手前で停止する。前進時に比べて、後進時の方がブレーキのかかり方が過激に感じられた。とはいえ、事故を防ぐためには、このぐらい明確な動きの方が必要なのだろう

 

前進、そして後進するアイサイト搭載のクルマ。ゆるやかに進みつつも、壁を感知すると、しっかり止まった。前進するクルマに比べると、後進するクルマの止まり方は、見ていて過激な動きに感じられた。

 

体験した人たちも、前は見えているから、身体が構えることができる。後ろは見えないので、ちょっと怖かったという声があった。とはいえ、クルマの安全運転装置というのは、このようにしっかり可動しないと事故は防げないということなのだろう。

 

先進安全自動車の技術は日々、向上し、性能もアップしている。とはいえ、限界もある。あくまで運転しているのはドライバー。過信は禁物なことは言うまでもない。

 

 

【注目ポイント⑤】目からウロコの運転座学。たとえば……

先進安全自動車の同乗体験の後は、教室に入り座学が始まる。自分が続けてきた運転を見直そうという講習が開かれる。

 

参加者へワークシートが配られた。教室内には一時停止線のある交差点の映像が映される。

 

「あなたは写真左の四輪車に乗って、一時停止標識と停止線のある細い道から、2車線道路に出ようとしています。こういう交差点であなたはきちんと止まって、安全を確認していますか? 100点満点で、あてはまる点数に○をつけてください」と聞かれる。

 

挙手という形で参加者の人たちが答えた。するとほとんどが、100点の「いつも止まって、よく見て通過する」で手を上げる。だが……。

 

↑JAFの善養寺チーフインストラクターにより見通しの悪い交差点で、一時停止線での停止、さらに自車の存在を相手に知らせるための停止・自車から交差点を見渡して安全確認するための停止がいかに大切かという説明がある。例として上げられた交差点は、右下の図のようなところ。このような場所では歩行者、および歩道を走る自転車に、自分のクルマの存在を、しっかりと知らせることがカギとなる

 

見通しが悪い交差点で、歩道の前に一時停止線がある。一時停止線を越えないと、大きな道の右左を見ることができない。

 

こうした交差点の造りのせいなのか、映像を見ると、大半のクルマが一時停止線の前で止まらず、そのまま出てきてしまい、歩道内で止まって確認をする。停止しなかったクルマのみの映像をつなげているかな、と思ったが、そうでもなさそうだった。ドライバーの日頃の感覚として、見通しが悪いところでは、一時停止線よりも前に出てしまってから停止、そこから確認作業を行うということになりがちなようだ。

 

ここに危険が潜む。歩道には歩行者が歩いている。一時停止線で止まらないと、歩行者や自転車とぶるかる可能性がきわめて高い交差点だったのだ。この後の映像では、歩行者や自転車が、わき道から出てくるクルマに注意を払っているかどうか、という映像が映されていたが、ほとんどの歩行者や自転車に乗った人が、わき道を走るクルマを確認する姿がなかった。最近はスマホを見ながら歩く歩行者も多い。こんな交差点で意外に事故が多いのである。

 

こうした交差点では事故を避けるためには、一時停止線でいったん停車。さらに歩行者や自転車から見える位置で停止し、クルマの存在を知らせた上で、2車線道路に入る前でも停止して、通行するクルマが途切れるのを待って道路へ進入することが必要になる。こうした停止方法を「多段階停止」と呼ぶ。

 

これは盲点だった。再度、挙手を求めたが、前よりも必ず止まって、という答えが少なくなった。

 

参加者の久富文隆さんは、「歩道を歩いていて、一時停止無視のクルマにぶつけられて、痛い思いをしたことがあります。ですので、常にこうした一時停止の交差点は慎重にと思って走っています」。こうした経験が大きいようである。

 

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