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2019/11/24 18:00

東京の地下鉄電車が熊本で大活躍!気になる「くまでん」12の秘密

【くまでんの秘密⑤】引退した電車も“青ガエル”など個性派揃い

現役3形式が活躍する熊本電鉄だが、かつての名車両たちも北熊本駅に隣接する車庫で保存されている。ホーム上や車庫周囲から止まる車両を見ることができるので、熊本電鉄を訪れた時は、北熊本駅で下車することをお勧めしたい。保存された車両をここで見ておこう。

 

◆5000形(元東急5000系・初代)

↑熊本電鉄5000形は前後に運転台が付き、1両での運転が可能だった。写真左の5101Aが最後まで残り、今も北熊本車庫で保存されている。右はモハ71形で、広島の可部線を走り続けた後に熊本電鉄へやってきた電車だ

 

2016年2月14日に惜しまれつつ引退した5000形。元は東急の初代5000系だ。青ガエルの愛称で親しまれた車両で、日本の電車の近代化に貢献した名車両とされる。東京・渋谷のハチ公前に保存されている車両と同じだ。

 

5000系は東急で運用終了したのち、各地の地方鉄道に引き取られた。熊本電鉄には4両が譲渡され、前後に両運転台を付け、1両で走れるように改造。長年にわたり、上熊本駅〜北熊本駅間を走り続けた。引退後も5101A号車は動態保存され、北熊本車庫内で行われる運転体験などのイベントに使われている。

 

◆モハ71形(元国鉄モハ90形・初代)

 

1928(昭和3)年製造と、誕生して90年以上という古参電車。広島県内を走るJR可部線を開業させた広浜鉄道が導入、国鉄に引き継がれてモハ90形(初代)となった。

 

可部線の電車は広島への原爆投下による被害を受けたが、同車両は幸いなことに下関の幡生(はたぶ)工場に入っていたため、被災を免れた運の良い車両でもある。1954(昭和29)年に熊本電鉄に引き取られ長年、走り続けたが、現在は北熊本車庫で保存されている。

 

◆200形(元南海電気鉄道22000系)

↑現役当時の200形。現在は在籍するすべての車両がステンレス製やアルミ合金製で無塗装またはラッピング車のため、今やこの塗装車両は貴重な存在となっている。11月30日に行われる運転体験の催しでもこの200形が使われる予定だ

 

元南海電気鉄道の高野線を走った22000系。高野線ではズームカーの愛称で親しまれた。

 

1998年に2両1編成が譲渡され、熊本電鉄にやってきた。塗り色はライトブルーとブルー、間に白い細い線入りのオレンジの帯を巻く。ちなみにこのカラーは熊本電鉄の伝統色だ。他の車両が検査されている時などに予備車として使われたが、2019年7月30日に引退。北熊本車庫に動態保存されている。5000形と同じように運転体験といったイベントに利用されている。

 

 

【くまでんの秘密⑥】熊本市内の微妙な位置にある藤崎宮前駅

ここからは熊本電鉄の沿線の様子を見ていきたい。まずは乗車する時のワンポイントアドバイスから。

 

熊本電鉄は無人駅が多い。電車には車内精算機が運転席後ろに用意され、全国の主要ICカードの利用が可能だ。わくわく1dayパスも藤崎宮前駅などで700円、900円、2000円の3種類販売している。

 

 

熊本電鉄の全区間を乗車するためには2000円券が必要になる。乗車する日にバスや市電の乗車を頻繁に行う時は2000円券の購買がお得。それ以外の場合は、700円券、あるいは900券を購入、区間外の運賃のみ支払う方が良いかも知れない。ちなみに藤崎宮前駅〜御代志駅間の運賃は片道380円だ。

 

さて、御代志駅行き電車の出発駅・藤崎宮前駅へ向かう。熊本市電の最寄り、通町筋(とおりちょうすじ)の電停から、やや歩く必要がある。ここが私鉄路線のターミナル駅なのかと思える“微妙な”位置にあることを実感してしまう。

 

通町筋電停からは上通(かみとおり)というアーケードを歩く。熊本の代表的な繁華街で、歩行者も多い。いろいろな店が並び、歩くと楽しい通りだ。上通に連なる並木坂を抜けると10分ほどで藤崎宮前駅へ到着した。

↑駅ビルの下にある藤崎宮前駅。線路は1線のみで行き止まり式となっている。平日の朝のみ改札口でも精算を行うということだったが、この日は週末ということもあり、折り返し前に運転士が精算への対応に追われていた。左手が降車ホーム、右が乗車ホームとなる

 

改札を出ると行き止まり式の線路上に6000形が停車していた。くまモンラッピングの電車だ。ホームは2つあり、右側の1番線が乗車ホームとなる。電車はすべてが2両編成、ワンマン運転のため、運転士は前側に移動、ほどなく出発時間が近づく。乗車した日は土曜日の朝ということもあり、下り列車は空いていた。

 

ほどなく発車となる。6000形は静かに走り出した。そして熊本電鉄名物の“併設軌道区間”に差しかかる。

 

↑併設軌道区間で民家の軒先をかすめるように走る6000形くまモンラッピング電車。写真の6000形はefWINGという軽量台車をはいている。efWINGは炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を採用した世界初の台車で熊本電鉄の6000形が初めて同台車を利用した

 

専用軌道の区間を通り最徐行。電車はゆっくりとカーブを描き併用区間に入る。進行左手に民家の軒先が連なり、右手にせまい市道が通る。車高の高い電車からは、市道を走るクルマを見下ろすイメージだ。

 

並走する市道はあまり広くない。にも関わらず、一方通行にはなっていない。クルマ同士がすれ違う時には、電車が走行するエリアまで入ることもある。運転士は最大限に注意を払いつつの運転を余儀なくされる。熊本電鉄の電車はみな、正面の下側に付く排障器が大きく頑丈にできているが、この区間があるからこそ、必要不可欠ということが良く分かる。

 

さて、ゆっくり併用軌道区間を通り過ぎて専用軌道の区間へ。スピードを上げる間も無く次の駅、黒髪町駅が近づく。

 

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