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2019/12/1 20:00

「さよなら」ではなく「またね!」ーー生産終了の「VW・新世代ビートル」のラストを画像多めで濃厚インプレ

クルマとしての実力に“退場”の理由は見当たらない!

と……下手な分析はここまでにしましょう。今回は前述のイベント絡みで久々に最終型のザ・ビートルに試乗することができたのですが、クルマとしての実力は満足できる水準にあることが確認できました。

 

↑志摩地中海村にて。ビートルというと、オジサン世代はアメリカの西海岸をイメージする方が多いはずですが南欧のシチュエーションにもピッタリ

 

試乗車は日本仕様で3種類あるパワーユニットの中で最もパワフルな2Lターボを搭載するRラインでしたが、ベーシックな1.2Lターボでも実用上不足がないザ・ビートルだけに動力性能はスポーティと呼んで差し支えないレベル。組み合わせるトランスミッションは、フォルクスワーゲンお得意の6速DSG。

 

↑今回の試乗車は、ザ・ビートルで最も高性能な2Lターボ搭載のRライン。基本は「ゴルフGTI」と同系統のユニットということで動力性能はスポーティと呼べる水準ですが、写真のような路面だと乗り心地は少々ラフになります

 

一般的にはDCTと呼ばれるツインクラッチの新世代ATですが、アクセル操作に対するリニアな反応とダイレクト感は積極的にマニュアル操作したくなる出来栄え。シームレスな変速制御、という意味でもトルクコンバ―ターATやCVTにことさら見劣りする部分はありませんから、このクルマならではの外観だけでなく走りも愉しみたい人なら悪くない選択です。

 

↑日本仕様のザ・ビートルは1.2L、1.4L、2Lのガソリンターボを搭載。組み合わせるトランスミッションは1.2Lと1.4Lが7速、2Lは6速のDCT(DSG)となります

 

一方、ベーシック版より引き締まった足回りは若干ながら乗り心地がスパルタンです。今回は3名乗車でドライブというザ・ビートルにはあまり似つかわしくない使い方でしたが、前席はともかく後席だと上下方向の入力が強め。なおかつ絶対的な居住空間がタイトなこともあって、長時間の移動は「罰ゲーム」以外の何者でもありません。

 

↑2.0Rライン・マイスターのシート表皮はレザーが標準。ベーシックな仕様ではファブリックが標準となります。前席空間は十分な広さですが、後席は頭上回りを筆頭にタイト。乗車定員は4人ですが、2+2というのが実際のところ

 

ただ、基本的な骨格がしっかりしているとあって、事前に予想していたよりは文化的なライド感に踏みとどまっていたことは意外な発見でした。良い意味で緩い、ザ・ビートルらしいキャラクターに合う足回りはベーシックな1.2Lだと個人的には思いますが、事実上前席しか使わないのなら2Lターボでも許容範囲内といえるでしょう。

 

とはいえ最新の「ポロ」、あるいは現行「ゴルフ」といったフォルクスワーゲンの主力と比較すると運転支援システム回りが寂しいことは否めません。また、基本的には1世代古いハードウェアをベースとしているだけに、前述の主力たちに対して走りの質感という部分で古さを感じさせてしまう部分があったりもします。

 

↑ボディサイズに対して荷室空間は控えめ。それでも分割可倒式の後席シートバックを畳めば嵩張る荷物の積載が可能。試乗当日は撮影機材と3人分の荷物を難なく積めました

 

↑ザ・ビートルのインパネ回りは、一部グレードでボディ同色となるトリムパネルを筆頭に元祖ビートル(タイプ1)を強くイメージさせる仕立てです

 

その意味でも、やはりザ・ビートルは元祖から受け継がれた見た目に惚れた人が選ぶべき「指名買い」の1台ということができるでしょう。ただし同カテゴリー、サイズでの比較なら総合力が決して低いわけではありませんから、個性派のコンパクトカーが欲しいという理由でザ・ビートルを選んでもユーザーが後悔することはないはずです。

 

↑試乗車の2.0Rライン・マイスターは、室内に油音計やブースト計などで構成された3連の追加メーターを装備します

 

↑Rラインは、オーバーフェンダーに加えサイドスポイラー、リアウイングまで装備。ビートルというクルマは、こんなアイテムも難なく“着こなして”くれます

 

それだけに、一人のクルマ好きとしてはザ・ビートルの現役引退という事実に一抹の寂しさを感じてしまうのもまた事実。とりあえず、運転支援システム回りさえアップデートできれば現代のクルマとして何ら問題はないからです。ただ、その本質がファン・カー、いわば大メーカーの“余興”なのだと定義するならことさらに引退を嘆く必要などないのかもしれません。

 

↑ビートル(カブトムシ)という名前の通り、その外観は大きな弧を描くルーフラインと四隅のフェンダーがキャビンから独立した造形などが織りなす独自性が持ち味

 

モチーフがフォルクスワーゲンの偉大な象徴である以上、機会さえあれば復活の可能性は十二分にあるからです。その生産中止が発表されて以降、VGJが展開してきたザ・ビートル関連のキャンペーンでは「SEE YOU」という言葉が使われていますが、それは遠からずのビートル復活を意図しているのかもしれません。そう、今回の生産中止は「さよなら」ではなく「またね!」というわけです。

 

↑日本仕様のザ・ビートルには3タイプのパワーユニットが用意され、スポーティな「Rライン」グレードではオーバーフェンダーも装備されます

 

【車両スペック】

「フォルクスワーゲン・ザ・ビートル2.0 R-Line Meister」

全長×全幅×全高:4285×1825×1495mm●車両重量:1410kg●エンジン排気量/形式:1984cc/直4DOHC+ターボ●最高出力:211PS/5300~6200rpm●最大トルク:280Nm/1700~5200rpm●JC08モード燃費:13.4km/L

 

【ギャラリー(GetNavi webのサイトで閲覧できます)】

撮影/篠原晃一

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