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2019/12/15 18:00

六本木で開催中の鉄色濃厚の「天空ノ鉄道物語」−−特別展の見どころに迫った

〜〜六本木ヒルズ 森タワー52階「特別展 天空ノ鉄道物語」〜〜

 

東京の六本木ヒルズ、森タワー52階で、2020年3月22日(日曜日)までの期間限定で「特別展 天空ノ鉄道物語」という催しが開かれている。

 

略して「天鉄展」は鉄道好きのための催しである。鉄道会社の博物館で開かれる催しとはちょっと異なる。老若男女を問わず楽しめる仕掛けがずっしりと詰まる。かなり濃厚な“鉄色”企画も含む。そんな天鉄展の見どころに迫ってみた。

*一部写真は「特別展 天空ノ鉄道物語」広報事務局提供、ほか筆者撮影

 

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【天鉄展レポート①】レアな鉄道関連用品が1000点以上ズラリ

最初に「特別展 天空ノ鉄道物語」の催しの概要を見ておきたい。

会期2019年12月3日(火)〜2020年3月22日(日)
時間10〜20時(ただし火曜日は〜17時)*入館は閉館の45分前まで
会場森アーツセンターギャラリー&スカイギャラリー(六本木ヒルズ 森タワー52階)
交通東京メトロ日比谷線・六本木駅1C出口から徒歩3分
入場料一般2500円、高校生・大学生1,500円、4歳〜中学生1,000円 *3歳以下は無料

主催は日本テレビ放送網、森アーツセンター、日テレイベンツ。JR各社、大手私鉄各社などが協力して、開かれている。

↑国内を最初に走った蒸気機関車「一号機関車」の実寸大スケールモデル、“製造当初の姿”が段ボールによって再現された。制作はアーティストの島英雄氏。後ろに天空駅ホームが設けられた。背景には東京タワーも見える。全面ガラス窓のスクリーンに映像が映し出され幻想的な雰囲気となる

 

【天鉄展レポート②】鉄道大好き中川家・礼二さんらが盛り上げる

天鉄展が開始された前日に、オープニングセレモニーと内覧会が開かれた。その模様からお届けしよう。オープニングでは壇上に主宰者および、今回の催しを監修した川西康之氏らが並ぶ。

 

ちなみに川西氏は建築家であり、デザイナーの肩書きも持つ。えちごトキめき鉄道(新潟県)の観光列車「雪月花(せつげつか)」をプロデュース、デザインしたことでも知られる。

 

さらにお笑い芸人の中川家・礼二さんと鉄道好きで知られる女優の松井玲奈さんがアンバサダーに就任。登壇してオープニングセレモニーを盛り上げた。

↑アンバサダーに就任した中川家・礼二さんと松井玲奈さんが登壇。礼二さんは新幹線のトイレが流れる音を再現して場を和ませた。礼二さんの左隣が監修者の川西康之氏。川西氏は「東京オリンピックを目前に控えた東京の上空で、新しい未来の鉄道の姿を共有したい」と意気込む

 

天鉄展は1964年から2020年と前後のオリンピックイヤーの間に見られた、鉄道の移り変わりが展示の中心となる。特に日本で独自に育まれた「食」「旅」「アニメーション」「ゲーム」「テクノロジー」といった“鉄道文化”に注目。子どもから大人まで楽しめる体験型の展覧会としている。

↑「鉄道車両ドアインスタレーション」と呼ばれるコーナー。ドアに触れると、背景のイラストが変化、全面、電車に変わって走り出すなど、“触ってびっくり!”のコーナーとなっている

 

さて、天鉄展。何をおしゃれな六本木の街でやろうとしているのだろう、しかも六本木ヒルズだぞ、と筆者は疑問を持ちつつ、訪れたのであった。想像の範囲で言えば、鉄道会社の博物館で行われる展示内容とかぶる気がしたのだが。

 

内覧会を見た感想を先に言ってしまえば、こだわっていて楽しい、と感じた。場所が一等地のため、入場料もそれなりだが、楽しむ目的をしっかり見いだせば無駄はない。すでに、期間中に何度も入場できる「超・特急定期券(1万900円)」や、数量限定のオリジナルグッズが付く「グッズセット券(4600円)」は販売終了と、前人気も上々だった。

 

今回の展覧会を監修した川西康之氏は次のように話す。

 

「日本テレビさんが主催されているので、鉄道会社の垣根を越えてご協力体制をしいていただけました。これは既存の鉄道会社の博物館ではできないことだと思います」。

「2つめにテレビ局ならではの持っている映像アーカイブスをお楽しみいただけるところが、従来の催しとは違うところかと。あとは52階で、今までにないコンテンツをお見せできるところでしょうか」。

 

天鉄展、どのあたりが見どころなのか、具体例を見つつ、さらにお好みに合わせた楽しみ方を紹介していこう。

【天鉄展レポート③】気持ち良く感じる1964年からの歴史展開

天鉄展は1964年から鉄道の軌跡を見る催しである。前述したように1964年と2020年と、前後の東京オリンピックイヤーを結びつけ、その間の鉄道の移り変わりを中心に紹介している。

 

太平洋戦争前後、さらに大正・昭和の鉄道の歴史となると、多くの人が見ず知らずの世界になってしまう。身近さが感じられない。ところが、1964年のオリンピックイヤーは、ちょうど東海道新幹線が開業した年であるし、60歳前後から上の年齢ならば、何らかの記憶が残っている時代にあたる。1964年は、シルバー世代からは、懐かしい記憶を呼び起こすのにちょうど良い年と言えそうである。

↑新幹線の展示コーナーには開業当時の鉄道地図とポスターなどが貼られる。0系の2列シート、さらに0系の実物のノーズ部分が展示されていた。筆者の家にもここで展示されていた新幹線開業時の記念乗車券と同じものが残っていたなあ、などと思いつつ見て回った

 

 

【天鉄展レポート④】上野駅はやはり“心の駅”なのです

今回の展示では、52階の中側を回る「内周」と窓側を回る「外周」の展示に分かれている。さまざまな鉄道関連用品や、鉄道の歴史が主に展示されるのが「内周」である。

 

さて「内周」の入口。このコーナーに郷愁を覚える方が多いのではないだろうか。

 

井沢八郎の「あゝ上野駅」という唄が耳に残っている世代には、当時の上野駅を再現した改札口がやはりお勧めだろう。駅員が中に立つスチールの改札ボックス。その上には発車する列車の時刻を示す木の札がかかっていましたっけ。シルバー世代にとって上野駅はやはり“心の駅”なのかも知れない。

↑上野駅の改札口を再現したコーナー。改札ボックスの上には東北方面、新潟方面行き列車の札が下げられる。左から青森行急行十和田、急行北斗と並ぶ。特急というのは、後の時代に現れたという時代設定なのだろう

 

 

【天鉄展レポート⑤】寝台列車にロマンを感じる方におすすめなのは

1964年は新幹線開業の年でもあり、夜に列車で移動するため、多くの寝台列車が運転開始され、全盛期へ移りつつある時代だった。夕方まで出張先で仕事、夜は寝台列車の食堂車で食べて、2〜3段ベッドで寝て、翌朝、出社という、それこそ“猛烈サラリーマン”ご用達の列車が、当時の寝台列車でもあった。

 

そんなかつての寝台列車に、ロマンを感じてしまう人にうってつけのコーナーが充実している。

↑東海道・山陽本線を走った寝台列車のヘッドマークがずらり。今振り返ると、こんなに寝台列車が走っていたのだ、と改めて驚かされる。ちなみに2009年3月31日に走った「はやぶさ・富士」が東海道・山陽本線を走る最後のブルートレイン寝台となった

 

その後、寝台列車の旅は優雅に華やかになっていく。国鉄の分割民営化に合わせて、JR東日本が特急「北斗星」を、JR西日本が特急「トワイライトエクスプレス」を走らせたのは、記憶に新しいところだ。

 

今回は、大阪駅〜札幌駅間と日本一長い距離を走った記念すべき豪華寝台特急「トワイライトエクスプレス」の、長さ11メートルという原寸大レプリカが、展示された。同列車が走った糸魚川の杉材で造られたものだそうだ。台車をはいていないものの、外から見た限りは木製と感じられず、鋼製車体の本物のように感じられた。乗車した経験がある方は、きっと懐かしく感じられることだろう。

↑寝台特急トワイライトエクスプレスの原寸大で再現したレプリカが展示される。1号車と3号車(食堂車)を合わせた造り。JR西日本から新潟県糸魚川市へ復興支援のために寄付された本物の車両部品が使われている。左上は側面に表示される列車名。行先は天鉄展が終了後に飾られる予定の「糸魚川」と表示されている

 

このトワイライトエクスプレスには思い入れがある。小社『トワイライトエクスプレスfan』(学研プラス・ネット書店で販売中)というムック誌を2009年から2016年にかけて計6冊、中心となって制作に関わった。

 

取材のための乗車経験も複数回あり、沿線で列車が走行する姿を数か月に渡って、北へ西へと追っかけた。残念ながら2015年3月12日に実際のトワイライトエクスプレスは定期運行を終えてしまった。そんなこともあり、レプリカとはいうものの、懐かしい車両に、久々出会ったような気持ちになった。

↑1号車のA個室スイート(通称・展望スイート)が再現された。札幌行き列車では、後部の展望が楽しめるとあって大人気だった。大きめのソファ椅子は、2脚を組み合わせるとソファベッドとなる。2人用個室だが、3人利用も可能だった

 

さて実物に触れる機会が多かった筆者としては、懐かしくもあり、食堂車「ダイナープレヤデス」などを見ると、今ふうに言えばそれこそ“インスタ映え”する車両であったことを実感する。

 

今回のモックアップは、車内に立ち入れなかったのがちょっと残念だった。天鉄展が終わったあとは、同レプリカは、糸魚川駅構内にある「糸魚川ジオステーションジオパル」で保存展示されるそうだ。

↑レプリカの内部、後方部分はトワイライトエクスプレスの3号車「ダイナープレヤデス」の車内となっている。テーブルセッティングなどが忠実に再現されていた

 

 

【天鉄展レポート⑥】これぞ究極!こだわり展示にどっぷり浸かる

つい思い入れがある列車に注目し過ぎた。他の展示も見ていこう。今回の天鉄展は、展示品のセレクトに関して、かなり思い入れが強いことが分かる。見せ方もざん新に感じられた。写真でいくつかの例を見ていこう。

↑廃線となる路線のさよなら列車や、急行「佐渡」などのさよなら列車のヘッドマークを集めたコーナー。こうして見ると廃線されたのは岩内線、幌内線、江差線、夕張支線と北海道に集中していることが改めて分かる

 

↑凝ったヘッドマークの展示方法。山陰本線を走った寝台特急「出雲」のヘッドマーク(写真左)、そして裏にまわるとヘッドマークの裏面が確認できる仕組み。「出雲 昭和49 11東京機関区」という記入がおもしろい

 

↑新幹線コーナーには0系の静電アンテナを展示。鉄道ファンからはツノとも呼ばれる静電アンテナ。このツノで架線を流れる電圧を検知、無線アンテナとしても使われた。アンバサダーの松井玲奈さんも「アンテナが目線の高さに置いてあって感激!」と話していた

 

懐かしい列車のヘッドマークの展示の中で、裏側を見せる展示には意表を突かれた。さらに下記のように今はなきレアな駅名標の展示も、うれしく感じた。

 

↑知内駅の駅名標。津軽海峡線が誕生した後の1990年に駅が開業、2014年に廃止された駅で、2002年以降は特急「スーパー白鳥」が1日に上り下りそれぞれ2列車しか停車しない不便な駅だった。隣駅の吉岡海底駅(青函トンネル内)も吉岡定点となり、廃止されている

 

今回の天鉄展のアンバサダーであり、また熱心な鉄道ファンとして知られる中川家・礼二さんは、JR各社の制服の展示が興味深かったと話す。

「JR7社の制服がズラリとならんでいて圧巻。JR貨物の制服まで展示されている、なかなかレアですよね〜」とうれしそうに語るのだった。

↑JR各社の制服が勢揃い。左側の5着は新幹線を運行する各社乗務員の制服。右側にJR7社(JR貨物を含む)の制服が並ぶ

【天鉄展レポート⑦】時刻表こだわり派はこのコーナーに大満足

鉄道ファンの中には時刻表を見るのが大好きという人も多い。そんな人におすすめなのが、「時刻表インスタレーション&鉄道現代史映像ギャラリー」。1964年、JTBがまだ交通公社と呼ばれていた時代から、JRとJTB2社が出版している現代まで、時刻表の表紙がずらりと並ぶ。

 

表紙を見ると、その時代模様が見えてくる。現在の時刻表は、列車の写真を中心にしたものが多いが、1980年代の時刻表を見ると、駅前だったり、ホームを歩く親子の姿だったり、駅のベンチに座る子どもが主役となっていたり、と鉄道の旅の楽しさを、伝えようという意識が強かったことが分かる。

↑1964年から現在まで、ずらりと時刻表の表紙が並ぶコーナー。古い時刻表(復刻版)の誌面もチェックできる(左下)。またモニターでは古い鉄道映像が流される

 

 

【天鉄展レポート⑧】“ママ鉄”向けには絶品スイーツがおすすめ

天鉄展にはレストランやカフェも用意され、ひと休みに最適だ。中でも「天空駅カフェ」(館内の「Café THE SUN」が特別仕様に)のメニューがおもしろい。鉄道にちなんだメニューが勢揃いしている。とくにオリジナル・デザートはスイーツ好きにお勧めだ。写真で紹介しよう。

↑「雪化粧列車のチーズケーキ」(1200円)。相鉄・JR相互直通運転が始まったことを記念して作られるスイーツで、主役は相鉄12000系の形をしたチーズケーキ。正面の顔もちゃんと描かれている。「前期」2020年1月26日まで提供されるスイーツメニューだ

 

↑「春風香る列車のチーズケーキ」(1200円)。地震、そして秋の台風襲来後に一部区間の運転休止に追い込まれている三陸鉄道。同鉄道を復興応援しようデザート化された。こちらのチーズケーキも車両正面の絵入り。「後期」2020年1月27日からの提供となる

 

注目はこうしたスイーツだけではない。ご当地うどん(1000円)として、宇高連絡船のデッキで販売されていた「めりけんやうどん」(前期に販売)や、広島駅1番ホームで営業をしていた驛麺屋(えきめんや)の「カープ応援うどん」(後期に販売)。さらに天空駅そば(980円〜1000円)は「鉄」と刻まれた海苔のトッピングがおもしろい。いずれも1日、限定30食なので早い者勝ちだ。

 

さらに天空駅オリジナル駅弁「ドア弁」も販売される。日本全国のご当地メニューを6品用意(650円〜1030円)。そのうち2種を選び、鉄道にちなんだオリジナルパッケージで提供される。

↑写真は「ドア弁」の代表的な2種類。左が「鮭親子(1030円)」、右が「さんまかば焼き(930円)」。上は東京メトロ丸の内線をイメージしたオリジナルパッケージ。2種を選びオリジナルパッケージに入れて提供される。テイクアウトはなくカフェで楽しむことができる

 

ほかにドリンクは、懐かしのヘッドマーク入りカフェラテ「ヘッドマークラテ」(850円)や、1号機関車の煙突をドリンクで再現した「機関車煙突ドリンク」(1080円)が用意される。どのメニューも、鉄道ファンにとっては食べて飲んで楽しめるメニューとなった。

 

さらに同フロアの「Restaurant THE MOON」では、しなの鉄道の観光列車「ろくもん」で提供されるランチ(6800円)とディナー(1万円)がそれぞれ1日限定10食提供される。

 

同レストランでは「横川駅のおぎのやのそば」(1000円)も用意される。こちらは限定30食だ。おぎのやのそばには、冷凍みかんや、ポリ茶瓶に入ったお茶も付けられる。これでかつての信越本線の旅気分が満喫できるわけだ。

 

 

【天鉄展レポート⑨】天鉄展は子ども連れで訪れても大丈夫!

展示は大人向けばかりではない。子どもたちも楽しめるコーナーが用意されている。記念撮影が楽しめる「アンパンマン列車」のコーナーや、プラレールのコーナー、そして“列車変形”の玩具の展示も行われる。

 

さらに人気の「電車でGO!!」は複数台が用意されている。

↑誕生してから60周年を迎えた「プラレール」のコーナーには、ジオラマ展示のほか、ずらりと各社の代表的な車両が集められた

 

↑「GACHA GACHA COFFE × METRO」のコーナー。挽きたて、淹れ立てコーヒーが楽しめるとともに、東京メトロ・東京都交通局とコラボ。組み上げると首都圏の立体路線図が完成するガチャ玉が入ったマシンが用意されている。地下鉄の映像もここで楽しめる

 

ほかグッズコーナーでは、限定グッズや全国の名物駅弁なども販売される。原稿で紹介しきれなかったことも多い。老若男女を問わず楽しめる天鉄展。ぜひとも自分のお気に入りの展示コーナーを見つけていただきたい。

 

【ギャラリー】