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2020/5/24 18:30

【保存版】コロナ禍が終息したら乗りに行きたい「ローカル線」〈東海・北陸・西日本編〉

〜〜「ローカル線特別応援企画」おすすめ東海・北陸以西の16路線〜〜

 

車窓に広がる海や山景色、そしてのどかな風景。走るのはレトロな電車や、ユニーク車両……。西日本には魅力いっぱいのローカル線が多い。

 

そんなローカル線の中で、とっておきの路線をピックアップした。今回、紹介した路線の中には近日中に古参車両の引退が予定されているところも。コロナ禍が終息したら、ぜひ乗っておきたい西日本のおすすめローカル線を紹介した。

*ご注意:掲載した列車は運休することがあります。事前にご確認ください。乗車および撮影は新型感染症の流行が終息した後に楽しみましょう。

 

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【東海中部地方のおすすめローカル線】

大井川鐵道 大井川本線(金谷駅〜千頭駅39.5km)

↑大井川を渡る16000系。もと近鉄南大阪線・吉野線を走っていた16000系だ。普通列車にこうした古参車両が使われていることも大井川鐵道の魅力となっている

 

SL列車に加えて大井川沿いの自然が美しさを増す季節が到来

東海道本線の金谷駅と千頭駅(せんずえき)間を走る大井川本線。ほぼ大井川に沿って走る。途中、4つの橋りょうで大井川を渡り、車窓からの眺めが変化に富む。

 

この路線は景色に加えて、走る車両が楽しい。普通列車には元近鉄16000系や、南海の高野線で活躍した21000系、十和田観光電鉄(現在は廃線)を走っていた7200系と個性的な車両が揃う。ほぼ毎日、新金谷駅〜千頭駅間を走るSLかわね路号(6月初旬から運行再開予定)や、きかんしゃトーマス号(6月下旬から運行予定)にも乗っておきたい。

 

立ち寄りたいポイントも多い。川根温泉や、大井川の上流には寸又峡温泉や接岨峡温泉といった温泉が点在する。沿線には川根茶の畑が広がる。静岡茶の中で、美味とされる川根茶はお土産に最適だ。金谷駅から千頭駅までは所要1時間10分ほど。時間に余裕があれば、千頭駅から発車する井川線(南アルプスあぷとライン)のトロッコ列車にも乗車したい(5月いっぱいは運休予定)。日本で唯一のアプト式区間があり、専用機関車が連結され急勾配を上り下りする。山岳鉄道ならではの魅力がつまる。

 

養老鉄道 養老線(桑名駅〜揖斐駅57.5km)

↑2019年から元東急池上線・多摩川線の7700系が多く走るようになった。養老山地を背景に赤帯の7700系が疾走する

 

近鉄色が強かった路線のイメージを大きく変えた東急車両の導入

養老鉄道養老線は三重県の桑名駅と岐阜県の揖斐駅を結ぶローカル線。起点の桑名駅では近鉄名古屋線・JR関西本線と連絡、岐阜県の大垣駅で東海道本線と連絡している。路線は揖斐川に沿って南北に走る。途中、揖斐川沿いに広がる水田風景や点在する集落の風景、せまる養老山地と、風景の変化が楽しめる。

 

近鉄グループの一員ということもあり、これまでは元近鉄の車両を改造・転用して使ってきた。ところが、これらの車両が古くなってきたため、代わりの車両を探していた。

 

2019年に計15両が導入されたのが東急池上線・多摩川線を走っていた7700系電車だった。7700系も車歴は古いが、オールステンレス製の車体に腐食がなく、台車や電気関係の部分などメンテナンスの状態が良かったことなどが決め手となった。養老線を走る7700系は東急時代に親しまれた赤帯車に加えて、赤歌舞伎の名前で親しまれたカラー、さらに赤歌舞伎を養老鉄道流にアレンジした緑歌舞伎などの車両カラーが走る。こうした“新車両”も加わったことで、養老線のイメージが大きく変わりつつある。

 

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四日市あすなろう鉄道 内部線(あすなろう四日市駅〜内部駅5.7km)
八王子線(日永駅〜西日野駅1.3km)

↑走る車両は元近鉄260系の更新車両。線路幅に合わせ車両は小ぶりだ。車内には窓に沿って1人がけシートがならぶ

 

線路幅と車両はミニサイズ!その不思議な乗り心地が楽しい

三重県四日市を走る四日市あすなろう鉄道。市内に内部線(うつべせん)と八王子線(はちおうじせん)の2本の路線を運行する。元は近鉄の路線で、2015年春に現在の鉄道会社に運営が引き継がれた。ユニークなのは線路幅。日本国内の在来線は、ほとんどが1047mmだが、四日市あすなろう鉄道の線路幅は762mmで、特殊狭軌(軽便鉄道)と呼ばれる細い線路幅が使われる。ちなみに762mmサイズは、今では同じ三重県内を走る三岐鉄道北勢線と、富山県の黒部峡谷鉄道のみで、非常に貴重な存在となっている。

 

この線路の幅に合わせ、走る車両は小さめだ。乗ってみると、明らかにミニサイズであることが分かる。車両は新会社になった以降にリニューアルされた。座席横に付く手すりがハート型になっているなど、車内もおしゃれな造りとなっている。

 

あすなろう四日市駅発の電車は、内部駅行と、八王子線の西日野駅へ向かう電車が交互に発車する。あすなろう四日市駅から内部駅までは乗車17分、八王子線の西日野駅まで乗車8分ほどで、所要時間もミニ感覚だ。ミニ車両が線路幅の狭い路線を走る、車両の揺れる感覚もこの鉄道特有のもので、乗るのが楽しい路線だ。

 

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【北陸地方のおすすめローカル線】

JR西日本 氷見線(高岡駅〜氷見駅16.5km)

↑越中国分駅〜雨晴駅(あまはらしえき)間では富山湾に沿って走る。雨晴海岸と呼ばれる美しい海岸で、義経岩などの観光スポットがある

 

富山湾越しに立山連峰の雄大な眺めが楽しめる

富山県内の高岡駅と能登半島の東岸、氷見駅を結ぶローカル線。高岡駅から越中国分駅までは高岡市街を、その先は、富山湾に沿って列車が走る。全線乗車しても30分ほどの短い路線だ。

 

沿線の観光スポットとして人気なのが、越中国分駅〜雨晴駅(あまはらしえき)間に広がる雨晴海岸。源義経と武蔵坊弁慶が京都から東北・平泉へ下った時に雨宿りしたとされる義経岩が線路沿いにある。この付近から望む富山湾越しに眺める立山連峰の景色が素晴らしい。

 

この雨晴海岸を縁取るようにゆっくりと気動車が進む。走る車両はキハ40系。日曜日にはキハ40系を改造した観光列車「ベル・モンターニュ・エ・メール」も走っている。同列車には海側を向いた席が設けられる。この1月からはJR西日本と、富山県、沿線自治体の間で氷見線のLRT化に向けて検討が始まった。富山県内では以前にJR富山港線(現・富山地方鉄道富山港線)をLRT化した実績がある。国鉄形気動車が走る氷見線も、近い将来に大きく変わる可能性が出てきている。

 

のと鉄道 七尾線(七尾駅〜穴水駅33.1km)

↑終点の穴水駅ひとつ手前の能登鹿島駅。4月中旬には上り下りホームのソメイヨシノが満開となる。同駅は中部の駅百選にも選ばれている

 

能登半島の七尾湾を眺めながらのんびり走る

のと鉄道七尾線は能登半島の七尾駅と穴水駅を結ぶ。路線の起点は七尾駅だが、となりの和倉温泉駅までは、JR西日本七尾線との共用区間で電化されている。和倉温泉は北陸能登を代表する温泉地ということもあり、特急「サンダーバード」「能登かがり火」「花嫁のれん」といった特急列車が和倉温泉駅まで乗入れている。

 

和倉温泉駅〜穴水駅間は非電化区間でローカル線らしい趣が随所で楽しめる。路線は能登半島に深く切れ込んだ七尾湾にそって走る。特に西岸駅(にしぎしえき)〜穴水駅間は七尾湾が良く見える区間で、湾内に浮かぶ「ぼら待ちやぐら」と呼ばれる漁に使う丸太組みや、能登島を望むことができる。

 

乗車時間は全線乗車しても40分ほど。ローカル線とはいえ30分〜1時間間隔で列車が走るので便利だ。専用車両を利用した観光列車「のと里山里海」も走り、寿司御前などが楽しめる飲食付きプランも用意している。能登半島には、かつて鉄道路線が半島北側の港町・輪島や、東側の蛸島(能登線)まで走っていた。すでに両線とも廃止されてしまったのが、ちょっと残念だ。

 

【近畿地方のおすすめローカル線】

近江鉄道 本線(米原駅〜貴生川駅47.7km)

↑本線と八日市線が連絡する八日市駅。同駅で乗換える人が多い。写真は西武鉄道401系を改造した800系電車で、さまざまな色のラッピング車両が走る

 

元西武の「ガチャコン電車」が走る近江路は見どころいっぱい

近江鉄道は西武グループの一員ということもあり、西武鉄道から譲渡された車両が揃う。地元の人たちは「ガチャコン電車」、また「ガチャ」と呼び、近江路を走る電車に愛着を持っている。車歴が古い車両が多いせいなのか、走行音はそれこそガチャコン・ガチャコンなのだ。

 

近江鉄道の路線は米原駅〜貴生川駅(きぶかわえき)間を走る本線、高宮駅と多賀大社前駅間を走る多賀線、近江八幡駅と八日市駅を結ぶ八日市線の3本がある。そのうち、八日市線は利用者が多く、郊外路線の趣がある。ローカル色が強いのが本線と多賀線だ。

 

本線が走る地域は、ちょうど京都へ向かう旧街道ぞいにあたり、旧東海道の水口宿、旧中山道の愛知川宿(えちがわしゅく)、高宮宿、鳥居本宿(とりいもとじゅく)の4つの宿場が連なる。さらに豊臣政権の五奉行を務めた長束正家(なつかまさいえ)が城主だった水口岡山城趾、石田三成が築城した佐和山城趾も路線のすぐそばだ。ほかにも観光スポットが多いことも、この路線の魅力となっている。

 

ところが、滋賀県内ではクルマで移動する人が多い。近江鉄道もその影響を受けて、赤字経営が長年にわたって続く。存続か廃止かもたびたび取り沙汰されてきた。2020年3月に地元自治体と鉄道会社間の協議の結果が出て、自治体の支援を受けつつ存続することが決定している。観光利用を含め乗客を増やす有効策がないか、会社も自治体も苦悩しているのが現状だ。

 

叡山電鉄 叡山本線(出町柳駅〜八瀬比叡山口駅5.6km)
鞍馬線(宝ケ池駅〜鞍馬駅8.8km)

↑鞍馬線を走る900系「きらら」。鞍馬が近づくと沿線の風景が変わり、緑が色濃くなっていく

 

車両の中から京都近郊の美しい新緑や紅葉風景が楽しめる

「叡山電車」の名前で親しまれる叡山電鉄。起点の駅は京都市内、鴨川沿いにある出町柳駅(でまちやなぎえき)である。京阪電気鉄道の出町柳駅が地下にあるのに対して、叡山電鉄の駅は地上にある。叡山電鉄の車両は1〜2両と編成が短めで、それに合わせてホームが短い。駅舎もコンパクトだ。京都に市電が走っていたころには、同鉄道線に路面電車が乗入れていた、そうした名残が車両の大きさや短い車両編成として残っている。

 

路線は出町柳駅〜八瀬比叡山口駅(やせひえいざんぐちえき)間が叡山本線、宝ケ池駅(たからがいけえき)〜鞍馬駅間が鞍馬線と分けられる。とはいうものの両線の電車ともすべて出町柳駅の発着となる。異なるのは車両数で、八瀬比叡山口駅まで走るのは1両編成の電車のみ、鞍馬駅へは2両編成の電車が走る。

 

電車は通勤・通学の足として市民に活かされる一方で、鞍馬と比叡山口へ向かう観光客の利用も目立つ。ガラス窓が大きく眺望が楽しめる900系「きらら」や、700系732号「ひえい」といった個性的な電車も走り、乗る楽しさを加えている。新緑とともに紅葉時期は利用者が増える。特に鞍馬線の市原駅〜二ノ瀬駅間の「もみじのトンネル」が名高い。紅葉時期には同区間でライトアップが行われ、車内から染まるもみじを楽しむことができる。

 

JR西日本 和田岬線(兵庫駅〜和田岬駅2.7km)

↑路線の途中には姿がユニークな橋が架かっている。和田旋回橋という名前で、兵庫運河に架かる。かつて橋が回転して船を通したが、今は固定されている

 

オリジナルの姿を残した103系が朝夕走る名物路線

山陽本線の兵庫駅と和田岬駅を結ぶ和田岬線。正式には山陽本線の支線で、和田岬線はあくまで通称の路線名だ。途中駅はなく、乗車時間はわずか4分と短い。

 

存在すら忘れられそうな路線だが、鉄道ファンの注目度は高い。その理由は、103系が今も走っているから。103系といえば、国電として親しまれた国鉄形通勤電車の代表的な車両。関西圏、首都圏など、多くの路線を走り、日本の高度成長期を支えた。今はJR西日本の路線でわずかに走るのみとなっている。和田岬線を走る103系の車体色はスカイブルーで、初期タイプの姿を色濃く残している。

 

和田岬線はベイエリアにある工場へ通う通勤客が大半を占める。そのため日中は乗る人がいない。そのために朝夕のみの運行となる。平日は7時〜9時台に7往復、17時〜21時台に10往復する。土曜日は本数が減少、日曜・祝日は朝夕にそれぞれ1往復と、“わりきった”ダイヤだ。訪れるとしたら平日か土曜日の朝夕がおすすめとなる。なお103系の検査時には207系が使われるので注意したい。ちなみに沿線には川崎重工業の兵庫工場があり、和田岬線を使って新造車両の輸送が行われる。新旧、鉄道ファンにとって気になる車両が多く見られる路線なのである。

 

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【中国地方のおすすめローカル線】

JR西日本 木次線(宍道駅〜備後落合駅81.9km)

↑2段式スイッチバック構造の出雲坂根駅付近を走る奥出雲おろち号。ガラス窓が無い客車を連結した人気の観光列車だ

 

中国山地内の路線。名物は2段式スイッチバックの出雲坂根駅

木次線(きすきせん)の起点は島根県の宍道駅(しんじえき)で、同駅で山陰本線と連絡する。終点の駅は広島県の備後落合駅(びんごおちあいえき)で芸備線と連絡する。渓流に沿い、山あいの狭隘な平地をたどり、中国山地に深く分け入って走る。

 

県境区間は、山岳路線といった様相。30パーミル(1000m走る間に30m上る)という急勾配を登る。途中、出雲坂根駅では2段式スイッチバックが体験できる。列車はまずは駅に入線する。ここで方向転換し、登り坂を走る。その先にある折り返し線で、再び方向転換してさらに登る。こうした行きつ戻りつを繰り返して、急な坂を徐々に登っていくのである。

 

木次線は山陰地方と山陽地方を連絡するいわゆる陰陽連絡線として造られた。だが、曲がりくねった路線やスイッチバック路線が災いし、スピードが出せず時間がかかる。全線を乗車すると3時間前後かかるほどだ。こうした不便さもあり、全線を通して走る列車は1日に2往復。しかも区間運休日がある(代行輸送あり)。逆にのんびり走ることを利用した観光列車が「奥出雲おろち号」(現在は運転休止中)だ。週末のみ1往復する。

 

同線は1980年初頭に「第2次特定地方交通線」に指定された。その時は「沿線道路が未整備」という理由で廃止を免れている。同じように中国山地を貫いて走った三江線(さんこうせん)は、すでに2018年3月いっぱいで廃線となった。木次線の行く末が危ぶまれる。

 

一畑電車 北松江線(電鉄出雲市駅〜松江しんじ温泉駅33.9km)
大社線(川跡駅〜出雲大社前駅8.3km)

↑一畑電車が86年ぶりに導入したとして話題になった新型7000系。1両編成で走れて便利なため、全線で活用されている

 

山陰地方で唯一の私鉄路線。出雲大社へ行く時にも便利

島根県の宍道湖北岸に沿い出雲市と松江市を結ぶ一畑電車。北松江線が山陰本線出雲市駅に隣接する電鉄出雲市駅を起点に松江しんじ湖温泉駅まで。途中、川跡駅(かわとえき)と出雲大社前駅の間を大社線が結ぶ。出雲市駅から出雲大社、そして松江温泉方面へ行く時に便利な電車でもある。

 

一畑電車はレトロな車両、デハニ50形が近年まで走っていたことで鉄道ファンの注目度が高かった。デハニ50形は映画「RAILWAYS」にも登場した名物車両で、現在も雲州平田駅構内で動態保存され、一般の人向け体験運転用に使われている。そんな一畑電車も、最近は新型7000系、また元東急の1000系が導入されるなど、電車の入れ換えが活発になっている。とはいえ、宍道湖沿いをのんびり走る一畑電車らしい情景は変わりない。

 

ちなみに鉄道会社の名前となった一畑とは、出雲市の一畑薬師(総本山一畑寺)が元になっている。一畑薬師を目指した鉄道だったことから名付けられた。一畑駅という駅が参詣用に設けられたがすでに廃駅となっている。今は3kmほど離れたところに一畑口駅がある。この一畑口駅は一畑駅があった当時と変わらず、今もスイッチバック構造となっていて、全列車がこの駅で方向転換を行う。このあたりの経緯も非常に興味をそそるところだ。

【四国地方のおすすめローカル線】

高松琴平鉄道 琴平線(高松築港駅〜琴電琴平駅32.9km)

↑8月いっぱいで見納めとなりそうなことでん名物のレトロ電車。走行時以外は仏生山駅に隣接する車庫に停められている

 

「ことでん」名物のレトロ電車の最後の運行が迫る

地元では「ことでん」として親しまれている高松琴平電気鉄道。同鉄道会社の3本ある路線の中で最も路線距離が長いのが琴平線だ。

 

路線は高松築港駅が起点となる。JR高松駅からは直線距離で250mほど(徒歩3〜4分)とやや離れている。駅は高松城のちょうど淵にあり、ホームと堀がほぼ接している。この高松城を縁取るように電車は発車する。2つ先の瓦町駅が、同鉄道では最大のターミナル駅で、長尾線が分岐、そして志度線の電車と乗換ができる。琴平線の電車はその先、仏生山駅(ぶっしょうざんえき)までは南下、この先は、琴電琴平駅へ向けてひたすら西へ走る。

 

高松琴平電気鉄道で注目されるのが、大正末期から昭和にかけて造られた電車4両が長年にわたり動態保存されてきたこと。毎月、「レトロ電車」の名前で琴平線を走り注目度も高かった。経済産業省の「近代化産業遺産」にも認定されていた貴重な車両でもある。ところが、老朽化し、維持し続けること難しくなってきていた。仏生山駅付近の複線化にあたり車庫内にスペースがないことなども重なり、廃車が決定された。最後の特別運行となる8月30日まで毎月走る予定だったが、残念ながらコロナ禍で6月までの運行が中止された。残りは7月と8月のみだが、果たして運転が適うかどうか、注目されている。

 

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JR四国 予土線(若井駅〜北宇和島駅76.3km)

↑0系新幹線をイメージした「鉄道ホビートレイン」。キハ32形を改造して造られた。高知県側の正面のみ、0系新幹線ふうの形をしている

 

車窓から望む四万十川の清流とユニーク車両が魅力に

伊予(愛媛県)と土佐(高知県)の間を走る予土線。路線は変化に富む。愛媛県側の路線は大正期に軽便鉄道として造られたこともあり、カーブが多め。一方の高知県側は1974(昭和49)年の開業区間で、橋とトンネルで山河を抜ける。

 

予土線の高知県側の起点は若井駅だが、列車は一つ手前の窪川駅から発車する。途中の江川崎駅(えかわさきえき)までは、ひたすら四万十川に沿って走る。大きく蛇行する四万十川にそって走り、あるいは橋とトンネルで突っ切って列車が走る。進むにしたがい、山深く分け入っていく印象が強くなるが、実は四万十川の下流側へ向けて列車は進んでいく。つまり若井駅付近が上流、江川崎駅方面が下流になる。訪れるとちょっと錯覚を覚える不思議な流れだ。そんな四万十川の流れは、日本一の清流と呼ばれるだけに澄みきり底まで見通せる。途中、川には沈下橋が架かり、旅情を誘う。

 

ちなみに窪川駅〜宇和島駅間の全線を走る列車は5往復と少なめなので注意したい。そのうち2列車は「鉄道ホビートレイン」、「海洋堂ホビートレイン」で運行される(変更あり)。また週末の列車の1往復には「しまんトロッコ」も連結される。名物トレインで旅する楽しさも、この路線ならではの魅力となっている。

 

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【九州地方のおすすめローカル線】

JR九州 大村線(早岐駅〜諌早駅47.6km)

↑大村線をこの春から走り始めた新型YC1系気動車。大村線は写真のように美しい撮影スポットが沿線に点在する

 

大村湾を眺める美景路線。新車導入で注目される国鉄形車両の今後

大村線は長崎県内の早岐駅(はいきえき)と諌早駅(いさはやえき)を結ぶ。歴史は古く1898(明治31)年、九州鉄道が長崎線として開業させたことに始まる。その後、昭和初期に、有明海沿いに造られた路線を長崎本線としたことから、大村線という名前に変更された。

 

列車は大村線内だけでなしに、佐世保駅と長崎駅を結ぶ列車が多いこともあり、県内の都市間の大切な移動手段として役立っている。そんな大村線だが、ハウステンボス駅〜松原駅間で、大村湾に沿って走る。車窓から穏やかな大村湾、そして海越しに西彼杵半島(にしそのぎはんとう)が望める。途中駅の千綿駅(ちわたえき)に立ち寄る人も多い。ホームの目の前が大村湾でその眺めが素晴らしい。

 

大村線も大きな時代の変化が訪れている。ハイブリット方式のYC1系気動車が3月のダイヤ改正に合わせて導入されたのである。近未来的な姿をした車両が大村湾を背景に走る様子が、見られるようになった。一方で、同線を長く走り続けてきた国鉄形のキハ66系気動車の今後が危ぶまれている。YC1系は徐々に増備の予定で、それに合わせてキハ66系が姿を消していくことになりそうだ。

 

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熊本電気鉄道 菊池線(上熊本駅〜御代志駅10.8km)
藤崎線(北熊本駅〜藤崎宮前駅2.3km)

↑藤崎線の併用軌道区間。車両は元都営地下鉄三田線の6000形。大形の車体が民家をかすめて走る様子は「くまでん」の名物となっている

 

東京の元地下鉄車両が熊本市内をのんびりと走る

「くまでん」の名前で親しまれる熊本電気鉄道。熊本市を中心に菊池線と藤崎線の2つの路線が走る。電車の運行は路線の区分けとは異なっていて、藤崎線の藤崎宮前駅と菊池線の御代志(みよし)駅間と、菊池線の途中駅・北熊本駅〜上熊本駅間で電車が往復する。菊池線を通して走る列車はなく、上熊本駅から御代志駅方面へ行く場合は、北熊本駅での乗換が必要となる。路線は市内電車および近郊路線という趣が強い。

 

そんな「くまでん」の名物となっているのが。藤崎宮前駅〜黒髪町駅間にある併用軌道区間。左右に家が建ち並ぶ市道の上に線路が敷かれ、そこをゆっくりと電車が走っていく。なぜ、こうした路線が残るのだろう。元々、この区間は路面電車用に線路が敷かれ路面電車が走っていた。その名残なのである。大形の電車と乗用車が平行して走ったり、すれ違ったり、ここならではの光景が目撃できる。

 

走る車両は現在、すべてがかつて東京の地下鉄の車両ばかり。車両数が多いのは都営三田線を走った6000形。さらに東京メトロ銀座線を走った01形、そして日比谷線を走った03形が走る。東京の“顔”だった電車が熊本で第二の人生を送っているわけだ。最近はくまモンの顔を大きくラッピングした電車も走っていて親子連れに人気となっている。

 

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JR九州 日南線(南宮崎駅〜志布志駅88.9km)

↑大堂津駅(おおどうつえき)〜南郷駅間の細田川橋りょうを渡る快速「日南マリーン号」。オレンジ色の車体カラーが目印で宮崎駅〜志布志駅間を1往復している

 

写真映えする風景が沿線各所に点在する南九州の名物路線

日南線は宮崎県の南宮崎駅と鹿児島県の志布志(しぶし)駅の間を走る。路線は日豊本線と接続する南宮崎駅が起点となっているが、列車の発車は一つとなりの宮崎駅からとなる。列車の多くが宮崎県内の油津駅、もしくは南郷駅どまりだ。終点の志布志駅まで走る直通列車は1日に4本のみと少ない。所要時間も全線乗車すると2時間30分から3時間と、乗車時間はかなりかかる。

 

この路線で見どころといえば、車窓から眺める日南海岸の眺め。日南海岸には鬼の洗濯岩と呼ばれる独特の波状岩が連なる海岸線が複数個所で見られる。その規模は大きく日南線の車両からも確認できるほどだ。さらに南国らしい亜熱帯植物が海岸に繁り、独特の旅情を生み出している。鹿児島県に入れば志布志湾を望むことができる。

 

普通列車にはキハ40系(キハ40形・キハ47形)が使われている。また週末を中心に特急「海幸山幸」が宮崎駅〜南郷駅間を走る。同特急に使われる車両は元高千穂鉄道のTR-400形で、高千穂鉄道が災害で廃線になった後に、JR九州に引き取られ改造、今はキハ125形400番台となった。「海幸山幸」は観光列車らしく、ビューポイントではスピード落として走る。日南線の魅力を楽しむのにぴったりの列車だ。

 

JR九州 指宿枕崎線(鹿児島中央駅〜枕崎駅87.8km)

↑指宿枕崎線の西大山駅には「JR日本最南端の駅」という標柱が立つ。駅の目の前に標高924mの開聞岳がそびえる

 

開聞岳がそびえる九州最南端の駅をぜひ訪ねてみたい

 鹿児島県の西南に突き出た薩摩半島。指宿枕崎線は鹿児島中央駅と薩摩半島の南岸にある枕崎駅を結ぶ。路線名にも入る指宿駅までは鹿児島湾(錦江湾)に沿って走り、その先の山川駅で西へ進行方向を変える。秀麗な開聞岳を眺めつつ走り、列車は東シナ海に沿って枕崎駅へ向かう。

 

JRグループの路線の中では日本最南端を走る路線で、途中、西大山駅は「JR日本最南端の駅」の標柱が立つ。ちなみに2003年に沖縄県を走る沖縄都市モノレールが誕生するまでは正真正銘「日本最南端の駅」だった(現在の最南端駅は沖縄都市モノレールの赤嶺駅)。

 

指宿枕崎線では、鹿児島中央駅〜山川駅(もしくは指宿駅)間を走る列車が圧倒的に多い。それだけ同区間の利用者が多いことが分かる。特急「指宿のたまて箱」も鹿児島中央駅〜指宿駅間を走っている。山川駅から先は利用者が減り、急にローカル色が強まる。鹿児島中央駅から終点の枕崎駅間は所要2時間30分〜3時間かかる。このように時間がかかることもあり、全線を走る直通列車は1日に3往復のみと少ない。

 

とはいえ普通鉄道では最南端の路線であり、鉄道好きならばぜひ乗ってみたいローカル線である。

 

 

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