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2020/6/14 19:05

今も各地で働き続ける「譲渡車両」に迫る〈元JR気動車の場合〉

【注目の譲渡車両⑧】JRからJRへ異色の譲渡車両キハ185系

◆キハ185系(JR四国→JR九州)

↑久大本線を走る特急「ゆふ」として利用されるキハ185系。背景は湯布院のシンボル由布岳。赤い列車が走る風景が魅力となっている

 

JRからJRに譲渡された気動車がある。こうしたJR間での譲渡という例は珍しい。そんな貴重な例がJR九州のキハ185系だ。

 

キハ185系は国鉄最晩年の1986(昭和61)年、JR四国用に開発した車両だ。JR四国ではその後に、山岳路線に強い2000系気動車を開発したことから、キハ185系が余剰となった。そんなキハ185系をJR九州が20両を買い取った。

 

その後のJR九州の車両の活かし方が興味深い。JR九州では赤と銀、または赤一色と華やかな色に塗り替えた。2両は特急「A列車で行こう」といった改造を施して、観光特急として生かしている。譲渡車両の元のイメージを大きく変えて、上手く生かした例と言って良いだろう。

 

【注目の譲渡車両⑨】全国の鉄道会社で重宝がられるDE10形

◆DE10形ディーゼル機関車(JR各社→真岡鐵道、東武鉄道など)

↑真岡鐵道のDE10もSLもおか号の運行に欠かせない。車庫のある真岡駅と下館駅間のSL列車の回送に利用されている

 

最後はディーゼル機関車の譲渡を取り上げておこう。JRから私鉄や臨海鉄道などへの譲渡されるケースが多いのがDE10形ディーゼル機関車だ。

 

DE10形ディーゼル機関車は国鉄により1966(昭和41)年から1978(昭和53)年までに計708両が製造された。ディーゼル機関車として万能タイプで、貨物駅構内での貨車の入換、短距離区間の貨物列車の牽引、さらにローカル線区での旅客列車の牽引などに使われてきた。

 

JR各社にその多くが引き継がれた。車両が造られてからすでに半世紀以上たち、JR東海ではすでに全車両が引退、またJR貨物でも新造機関車の導入で、活躍の場がせばまりつつある。一方で便利に使えるところが重宝がられ、今も多くが使われ続ける。

 

こうした万能タイプの機関車ということもあり譲渡される車両が多い。秋田臨海鉄道や衣浦臨海鉄道(愛知県)や、貨物専用鉄道の西濃鉄道(岐阜県)といった会社では国鉄清算事業団からDE10を購入している。

↑東武鉄道のSL大樹を後押しするDE10。東武鉄道では2両のDE10を所有しており、SL列車の運行をサポートしている

 

さらに真岡鐵道や、東武鉄道はSL列車を運行する時の補助役としてDE10を導入している。またわたらせ渓谷鐵道や嵯峨野観光鉄道では、トロッコ列車の牽引用にDE10の譲渡を受けている。

 

東武鉄道といった大手私鉄が、SL列車用とはいえ、JRから車両を譲り受けるのは異例といって良いだろう。ちなみに東武鉄道では、2両のDE10をJR東日本から譲り受けているが、1両の車両は、JR北海道で活躍した特急「北斗星」の塗装を施して導入された。今後、どのような姿で列車の牽引に関わってくるのか、注目されるところだ。

 

これまで見てきたように、JRからの譲渡車両は、譲渡された先でも、さまざまな姿で利用されている。長期間にわたって活躍する姿を見る、また乗ることは、鉄道好きにとっては無常の楽しみだろう。末長く、こうした車両が活かされることを願いたい。

 

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