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2020/6/21 18:30

 今も各地で活躍する「譲渡車両」に迫る〈元JR電車の場合〉

【注目の譲渡車両⑥】他社へ初めて譲渡された「E」付き電車

◆JR東日本E127系 → えちごトキめき鉄道ET127系

↑E127系0番台はえちごトキめき鉄道に譲渡されてET127系となった。外装は同社流にアレンジされ楽しい姿の車両となっている

 

2015年3月の北陸新幹線金沢駅延伸に合わせて、沿って走る在来線が次々に第三セクター鉄道線への転換が行われた。新潟県を走る信越本線と北陸本線は、えちごトキめき鉄道となった。そのうち元信越本線は、直流電化区間で、転換前までは、おもに115系が走っていた。だが、えちごトキめき鉄道へは115系ではなく、新潟地区を走っていたE127系0番台が譲渡された。

 

E127系0番台は1995年からの製造と、115系に比べて新しい。2両編成と地方路線では使い勝手が良いことから10編成が改修された上で、えちごトキめき鉄道へ譲渡された。同社に移ってからはET127系と形式名を変更、外装も妙高の山々を描いたラッピング塗装などが行われた。

 

1993年以降にJR東日本が開発した車両形式には頭に「E」が付く。このEが付く車両の中では他社への初の譲渡車両となった。E127系0番台はJR東日本にも2両×2編成が残る弥彦線などで使われている。ちなみにE127系は100番台も造られ、長野地区に配置された。こちらは701系交流電車に似た正面の形をしている。

 

【注目の譲渡車両⑦】今や貴重となった国鉄形交直流電車

◆JR西日本413系 → あいの風とやま鉄道413系

↑あいの風とやま鉄道413系。武骨ながら国鉄車両らしい姿で人気も高い。行先表示部分が埋められるなど特徴ある形をしている

 

北陸新幹線の開業時に、富山県内の北陸本線はあいの風とやま鉄道線となった。路線は倶利伽羅駅〜市振駅(いちぶりえき)間だ。列車は石川県内の金沢駅〜泊駅(富山県)間はあいの風とやま鉄道とIRいしかわ鉄道の車両が互いに乗入れる形で運転されている。

 

主力車両は521系だが、413系という国鉄形の電車も走っている。あいの風とやま鉄道がJR西日本から譲りうけ、走らせている電車だ。この413系、今となっては非常に珍しい電車だ。413系は交直流電車で、それまで老朽化が著しかった475系、457系といった、交直流電車の電装品、台車などを流用して造られた。登場したのは1986年で、国鉄の最晩年の車両だ。おもに北陸本線で活躍してきたが、新型521系の登場もあり、近年は、車両数が減ってきていた。

 

あいの風とやま鉄道には、3両×5編成が譲渡された。そのうち1編成は「一万三千尺物語」という観光列車に、また1編成は簡易改造されてイベント列車「とやま絵巻」という名で走っている。

 

JR西日本の金沢総合車両所に16両の413系が残っているが、これらの車両も含めて、今では貴重な国鉄形の交直流電車となっている。

 

【注目の譲渡車両⑧】同じ521系もカラーで印象が大きく変わる

◆JR西日本521系 → あいの風とやま鉄道521系
◆JR西日本521系 → IRいしかわ鉄道521系

↑あいの風とやま鉄道の521系。風をモチーフとした2色のラインが車体横に入る。山側は水色(写真)、海側が緑色のラインだ

 

北陸新幹線の金沢延伸に合わせ、三セク転換され誕生したあいの風とやま鉄道と、IRいしかわ鉄道。元北陸本線の金沢駅〜泊駅間で普通列車を走らせる。JR西日本から譲渡されたのが前述した413系に加えて、521系だった。521系交直流電車が、登場したのは2006年のこと。譲渡車両としては比較的、新しい。この521系があいの風とやま鉄道に、2両×16本32両、IRいしかわ鉄道には2両×5本10両が譲られた。

 

その後、あいの風とやま鉄道では521系の自社発注車両を2編成導入している。あいの風とやま鉄道の方が、圧倒的に車両の保有数が多い。これは路線の営業キロ数がIRいしかわ鉄道の17.8kmに対して、あいの風とやま鉄道が100.1kmと圧倒的に長いことにもよる。駅や沿線で出会う電車も、あいの風とやま鉄道の車両の方が多く、IRいしかわ鉄道の車両に出会う確率は少なめだ。同じ521系でも両社のカラーリングは異なっていて、この違いもまた興味深い。

↑前面が水色一色のIRいしかわ鉄道の521系。水色と青い配色に加え、帯と転落防止幌に車両ごと異なる色が入る。写真の編成は草色/緑色カラー

 

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