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2020/7/20 10:15

今も各地で働き続ける「譲渡車両」に迫る〈元首都圏私鉄電車の場合〉

【注目の譲渡車両⑥】元京王3000系も各地で働いている

元京王5000系とともに、今も各地の鉄道会社に引き継がれ、使われて続けている元京王の電車がある。京王井の頭線を走った3000系である。この3000系も、各鉄道会社へ譲渡される時には京王重機整備が改造と整備を行なっている。

 

京王3000系は1962(昭和37)年〜1991(平成3)年まで計145両が製造された。井の頭線の主力車両で、2011年の暮れまで渋谷駅〜吉祥寺駅間を走っていた。当時に乗車した記憶をお持ちの方も多いのではないだろうか。さて、どこの会社に引き継がれたのだろう。

 

◆上毛電気鉄道(群馬県)700型

↑上毛電気鉄道の桐生球場前駅付近を走る700型。この電車が以前に走った井の頭公園を彷彿させる美しい桜並木が沿線に連なる

 

京王3000系には初期のオリジナルタイプと、後年にリニューアルされ、正面の窓が側面まで拡大されたタイプがある。上毛電鉄には初期のオリジナルタイプで、1998年から2000年に2両×8編成が同会社に引き渡された。

 

正面の色は井の頭線当時を彷彿させるカラフルな姿だ。8編成すべての色が異なり、路線を彩る。2両という短い編成は往時と異なるものの、井の頭線当時の様子をより伝える佇まいと言って良いだろう。

 

同社からは新型の後継車が導入されるという話しも伝わってきている。700型は元3000系のオリジナルな姿を残す車両だけに、今後が気になるところだ。

 

◆北陸鉄道(石川県)8000系・7700系

↑北陸鉄道浅野川線を走る8000系。2両×5編成が走るが、正面と帯の色はサーモンピンクのみとなっている

 

石川県に浅野川線と石川線の2本の路線を持つ北陸鉄道。同鉄道には2両×6編成が京王重機整備の改造・整備を経て導入された。すべてオリジナルタイプの車両で、形式名は浅野川線が8000系で5編成、石川線は7700系で1編成が1996年から2006年にかけて導入された。

 

同浅野川線には、東京メトロ日比谷線を走った03系(詳細後述)4両の導入が進められている。元京王3000系のみだった浅野川線の趣も、今後は変わっていきそうだ。

 

◆アルピコ交通上高地線(長野県)3000系

↑元京王3000系のリニューアル後の車両が導入されたアルピコ交通。白地に虹色のストライプ模様が入ったアルピコカラーで走る

 

1999年〜2000年にかけて導入されたアルピコ交通3000系。元京王井の頭線当時の形式名をそのまま引き継いでいる。リニューアルされた後の3000系を元に京王重機整備で改造・整備が行われた上で導入されている。北アルプスなどの山景色、雪景色を見ながら走る姿が絵になる。

 

◆伊予鉄道(愛媛県)3000系

↑3両編成で走る伊予鉄道3000系。伊予鉄道には路面電車との平面交差(写真)する踏切があり、同区間は直流600Vで電化されている

 

伊予鉄道の電車は600Vと750Vの2種類の架線電圧を跨いで走ることが必要となる。そのため入線にあたっては京王重機整備で、改造・整備が行われた。改造の際には省力化に有効なVVVFインバータ装置(ブレーキチョッパ装置付き)も搭載されている。当初、正面の色がアイボリーだったが、その後に伊予鉄道が進める車体の全面的な塗り替えが行われ、今は車体のステンレス部分を含めて、オレンジ一色となり、電車のイメージも一新されている。

 

 

【注目の譲渡車両⑦】前後に運転台を持つ岳南電車の元3000系

◆岳南電車(静岡県)7000形・8000形

↑元京王3000系としては異色の存在の岳南電車7000形。1両での運行が可能なように両側に運転台が設けられている

 

静岡県を走る岳南電車には1996年と1997年に元京王3000系を1両化した7000形3編成と、2002年に8000形2両1編成が導入された。

 

ユニークなのは前後に運転台を持つ7000形である。元は運転台のない中間車だった。そこで岳南電車に導入にあたり、京王重機整備で運転台をつける大改造を受けている。長年にわたり、日中の主力車両として走り続けてきたが、2018年に1編成に故障が起きて運用を離脱。そのため前述したように富士急行から元5000系にあたる1200形を改造した上で導入している。

 

今後も元京王3000系由来の名物車として富士山麓を走ってもらいたいものだ。

 

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