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2020/7/20 10:15

今も各地で働き続ける「譲渡車両」に迫る〈元首都圏私鉄電車の場合〉

【注目の譲渡車両⑩】讃岐らしい風景の中を走る元京急の電車

◆高松琴平電気鉄道(香川県)1070形、1080形、1200形、1300形

↑高松琴平鉄道琴平線を走る1200形。讃岐らしいため池を横に見て走る。写真の車両はラッピング車両のため黄色一色で目立つ

 

京浜急行電鉄の電車といえば、高性能な電車づくりで定評がある。ところが、譲渡車両は少ない。唯一、元京急の車両を導入しているのが香川県を走る高松琴平電気鉄道(以下「ことでん」と略)のみだ。なぜなのだろう。

 

京急は1435mmという軌間を使っている。ことでんも1435mmと地方私鉄の路線としては珍しい軌間が使われる。元京急の電車が導入されている理由には、この幅が同じということが大きい。ちなみに、ことでんでは他に名古屋市営地下鉄の元電車と、京王の元電車が使われているが、名古屋市営地下鉄の東山線、名城線などの軌間は1435mmとなっている。京王のみ1372mmと異色だが、これは京王重機整備が改造を請け負ったこともあり、問題なくことでんに入線している。

 

ことでんには元京急の電車が4種類、引き継がれている。1070形が元京急600形(2代目)、1080形が元京急1000形(初代)。1200形が元京急700形(2代目)、1300形が元京急1000形(初代)という布陣だ。計44両と、ことでんのなかでは大所帯となっている。元京急の電車はことでん電車の冷房化にも貢献した車両でもあった。

 

ことでんでは京急時代の赤い車体に白い帯のリバイバル車両を復活させた。ひと時代前の京急を走った、やや丸みを帯びた車両が、讃岐路を存分に走る姿を痛快に感じるのは筆者だけだろうか。

↑高松城を横に見つつ走ることでん長尾線の1300形。元京急1000形(初代)だ。丸みを帯びた姿に懐かしさを感じる方も多いのでは

 

 

【注目の譲渡車両⑪】元ロマンスカーが甲信越を走り続ける

最後に首都圏を走った特急形電車で、他社に引き継がれた電車に触れておこう(西武鉄道の車両を除く)。小田急ロマンスカーの2形式が甲信越で働いている。両者とも、今も有料特急として輝く存在だ。

 

◆長野電鉄(長野県)1000系「ゆけむり」

↑長野電鉄1000系が志賀などの山々を背景に走る。元小田急の10000形だ。前後先頭車には人気の展望席が設けられる

 

長野電鉄の1000系は元小田急のロマンスカー10000形で小田急当時は「HiSE」という愛称がついていた。1987〜1989年製造と比較的、新しかったが、車内がハイデッカー構造で、バリアフリー化に向かないこともあり、2012年に引退に追い込まれた。

 

この車両のうち4両×2編成が長野鉄道へ譲渡され、2006年から走り始めた。愛称は路線に湯田中温泉など温泉が多いことから「ゆけむり」と名付けられた。

 

同列車は有料特急ながら、運賃+特急券(100円)と手軽に乗車が可能だ。前後の展望席も自由席とあって、人気になっている。

 

◆富士急行(山梨県)8000系「フジサン特急」

↑富士急行8000系「フジサン特急」。車体にはたくさんの“フジサンキャラ”が描かれる。1号車は指定席、2・3号車は自由席となっている

 

富士急行の8000系。元は小田急20000形RSEで、1990〜1991年に7両×2編成が造られた。この電車も小田急10000形と同じく、ハイデッカー構造+2階席があったことから、バリアフリー化の影響を受け、2012年に引退している。

 

富士急行では、この元小田急20000形3両を譲り受け、大改造を施した。フジサンのイラストが全面に描かれた「フジサン特急」として生まれ変わり、2014年の7月から走り始めている。特急券は自由席が200円〜400円で、1号車の指定席はプラス200円が必要となる。

 

小田急当時のRSEの面影は消えているものの、“愉しさ満開”といった姿で、すっかり富士急行の名物列車となっている。

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