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2020/9/6 19:00

希少車両が多い東海・関西出身の「譲渡車両」の11選!

【注目の譲渡車両⑧】意外な出身のえちぜん鉄道の主力電車

◆福井県 えちぜん鉄道MC6001形(元愛知環状鉄道100形・200形・300形)

↑えちぜん鉄道の勝山永平寺線を走る6101形。元愛知環状鉄道の電車で前後に運転台付けるなど改造され、同鉄道の主力車両として生かされる

 

福井県内を走るえちぜん鉄道。勝山永平寺線と三国芦原線の2本の路線に列車を走らせる。両線とも歴史は古い。勝山永平寺線(旧越前本線)の開業が1914(大正3)年のこと、三国芦原線が1928(昭和3)年に一部区間が開業している。両線は創業当時こそ別会社だったが、太平洋戦争中に京福電気鉄道に引き継がれている。

 

長年にわたり両線の運行を続けてきた京福電気鉄道だが、経営状態が徐々に悪化していき、2003(平成15)年に第三セクター経営方式のえちぜん鉄道が路線の譲渡を受け、今に至っている。譲渡以前の電車、路線の設備は、かなり旧態依然としていて、2000(平成12)年、2001(平成13)年と2年続きで、電車の正面衝突事故が起こっている。2回目の事故後の2001年から、えちぜん鉄道の路線に移管された2003年にかけて全線運行休止となっていた。

 

こうした経緯もあり、えちぜん鉄道になるにあたって、急きょ、古い電車の入換えが行われた。ちょうど同じ頃、愛知県内を走る愛知環状鉄道の100系が、新型車への切替え時期で、引退間近だった。この100系を引き取ったのがえちぜん鉄道だった。

 

100系は愛知環状鉄道の路線開業時の1988(昭和63)年に導入された。細かくみると3形式に分けられる。2両編成の電車が100形と200形、増結用の300形がある。えちぜん鉄道では計23両を引き取り、改造を施して入線させている。制御付随車だった200形は、運転台のみを移設用に使われた後に廃車となっている。

 

えちぜん鉄道での形式名はMC6001形とMC6101形の計14両で、同形式は1両で走れることから利用客が少ない時間帯などに有効に生かされている。

 

ちなみにえちぜん鉄道には他に2両編成のMC7000形が12両ほど走っているが、こちらは元JR東海の119系で、飯田線での運行終了後に、改造され、えちぜん鉄道に譲渡されている。両タイプは、正面の姿がほぼ同じで、見分けが付きにくいが、側面の乗降扉が1枚扉ならばMC6001形、MC6101形、2枚扉ならばMC7000形である。

 

【注目の譲渡車両⑨】全車両が阪急電鉄からの譲渡車の能勢電鉄

大阪平野の北部に妙見線(みょうけんせん)と日生線を走らせる能勢電鉄(のせでんてつ)。路線の開業は1913(大正2)年と古い。ところが開業後の翌年に早くも破産宣告を下されるなど、多難な創業期だった。1922(大正11)年に阪神急行電鉄(現阪急電鉄)の資本参加以降は、阪急色が強まり、現在は、阪急電鉄の子会社となっている。

 

阪急の子会社であり、さらに線路がつながり阪急路線内に直通電車が走るということもあり、走る電車はすべて旧阪急の電車だ。子会社とはいえ、異なる会社に移籍しているものの、これまで見てきた譲渡車両と同一には評しにくい部分もある。とはいえ今では親会社の路線で見ることができない車両も走り、阪急ファンの注目度が高い路線となっている。ここでは希少な車両のみ触れておこう。

 

◆大阪府・兵庫県 能勢電鉄1700系(元阪急2000系)

↑能勢電鉄では最も古参車両の1700系だが徐々に車両数が減りつつある。写真の1753編成(1703号車)は2019年5月に廃車となった

 

阪急の2000系として登場した電車で、誕生は1960(昭和35)年のこと。阪急での2000系単独編成は1992(平成4)年に運用が終了、他形式の中間車としてその後も使われていたが、2014年に姿を消している。

 

2000系の能勢電鉄への譲渡は1983(昭和58)からとかなり古く、1500系として走り始めた。その後に2000系を種車とした1700系が生まれ、1990(平成2)年から走り始めている。かなりの古参電車ということもあり、先輩格の1500系はすべてが引退、後輩にあたる1700系も近年は徐々に運用終了となりつつある。

 

◆大阪府・兵庫県 能勢電鉄3100形(元阪急3100系)

↑能勢電鉄でわずか4両×1編成のみの3100系。阪急マルーンの塗装に加えて、正面にステンレス製の飾り帯を付けて走る

 

能勢電鉄の希少車といえば3100系が代表格だろう。能勢3100系の元は阪急の3100系だ。同編成は1997(平成9)年に能勢電鉄に譲渡された。

 

元となる阪急の3100系は宝塚線用に造られた形式で、ほぼ同形式の神戸線用の3000系は1964(昭和39)年に登場している。以降、両形式あわせて154両と多くの車両が造られた。1960年代半ば以降、阪急の神戸線・宝塚線の輸送を支えた電車と言って良いだろう。長年にわたり走り続けてきたが、2020年2月を最後に阪急での運行を終了している。

 

阪急の代表的な車両だった3100系が今も能勢電鉄を走り続けている。車両数は少なくわずかに4両。能勢電鉄に入線してから、正面の尾灯付近にステンレス製の飾り帯を付け、能勢電鉄では目立つ電車となっている。

 

ほか能勢電鉄には5100系(元阪急5100系)、6000系(元阪急6000系)、7200系(元阪急7000系・一部6000系付随車)が移籍している。

 

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