乗り物
クルマ
2020/10/26 18:00

ARカーナビの「実用性」はいかに? セイワ「PNM87AR」本音レビュー!

カー用品を手がけるセイワは、ARカメラで撮影した映像にカーナビゲーションのルートガイドや安全運転支援機能を重ねる、PIXYDA(ピクシーダ)次世代型ポータブルナビゲーション「PNM87AR」を発売しました。AR技術を活用したバーチャル案内で、走行ルートを安全かつ分かりやすくドライバーに伝えてくれるカーナビゲーションとして注目されています。

↑ピクシーダから登場したAR技術を活用したバーチャル案内を行う次世代型ポータブルナビゲーション「PNM87AR」

 

地図更新は2023年7月31日までに1回無料で行え、AR機能搭載のPNM87ARは実売価格4万9800円前後。AR機能非搭載のスタンダードモデル「PNM87F」も同3万7800円前後で発売しています。

 

ARカメラと連携させた次世代型ナビ

この製品で実現したAR機能は大きく2つあります。一つはゼンリンデータコムと共同開発したAR機能をベースとするルートガイド機能です。ポータブルナビ本体にはゼンリンデータコム製の地図データがインストールされており、このデータから抽出したガイドをARカメラで撮影した映像に重ねてルートガイドします。地図データは2020年春版の全国市街地図データを収録した詳細版で、全国にわたってこのガイドを利用可能としています。

↑地図データはゼンリン製で主要施設の出入口情報も含まれているので、目的地の入口で迷うことが少ない

 

もう一つはARカメラで撮影したデータを元に3つの安全運転を支援するというものです。それは「車線逸脱警告」「前方車両発進」「前方衝突警報」の各機能で、それらの警告を画面とアラートで知らせてくれます。最近の新型車には同様の機能が搭載されていますが、本機を装着することでそれに近い機能が利用可能になるというわけです。

 

この機能に利用するARカメラは垂直のアングル調整が可能な単眼式で、フロントガラス上部に密着させて取り付けます。レンズ周りを覆うことでガラスの映り込みも防止。ナビ本体とは付属ケーブルでUSB接続し、カメラの電源もここから供給されます。なので、ナビ本体で電源を取るだけで、他に電源の取り回しは一切不要です。

↑AR情報の取り込みに使う映像を撮影するカメラは、フロントウインドウに取り付けてレンズ周囲を覆うことで映り込みも防止している

 

それではこのシステムを早速取り付けてみます。取り付けたのはダイハツの軽自動車「ムーブ カスタム」です。エアバッグと干渉しないダッシュボード中央にナビ本体をセットすることにしました。電源はシガーライターソケットから取ります。アダプターの挿入が少しきつめでしたが、むしろこの程度のきつさがあれば不用意に電源が抜けてしまう心配もないでしょう。

↑ARカメラは、PNM87AR本体下のUSB端子に接続する。手前の「カメラ入力」は別売のバックカメラ用

 

ARカメラは基本的に運転席側のフロントガラス上部に取り付けます。この時の注意点としては、取り付け位置がワイパーで拭き取れる場所を選ぶことと、映像が水平になるようナビ本体で確認することです。場所を確定する前に仮止めし、それで大丈夫か一旦確認しておくといいかもしれません。カメラの角度調整は付属の六角レンチを使います。

↑ARカメラのアングルはディスプレイの表示を見ながら、付属の六角レンチで調整できる

 

起動して真っ先に驚くのはモニターの鮮明さ。その理由は8V型のモニターの解像度はポータブル型ナビで一般的なWVGAよりもさらに高解像度な「WXGAモニター」(1280×800ドット)を採用しているからです。モニターの表面は光沢タイプなので反射が少し気になりますが、視野角が広いので反射しない角度で固定するといいでしょう。

↑メインメニュー。「ナビ」を選ぶとナビアプリが起動してカーナビゲーションが使えるようになる

 

↑ディスプレイは高解像度な「WXGAモニター」(1280×800ドット)を搭載。TV放送はそれを活かす地デジのフルセグに対応している

 

矢印のアニメーションで方向を示してくれるので分かりやすい

ARモード中はARカメラで撮影した映像と地図を同時に表示します。そのAR映像は極めて高精細で、先行車のナンバーもハッキリと読み取れるほどです。このままドラレコとしても機能してくれればいいのに…と思ってしまうほど。直進で進んでいるときは矢印のアニメーションで進む方向を示してくれ、その未来感あふれる映像は視認性が良いです。

 

分岐点に近づくと、画面上には分岐点までの距離が表示され、よく見ると交差点拡大図もAR画面上に表示されています。やがて音声案内と共にAR画面上には曲がる方向が流れる矢印で示されるようになり、右側の地図上には交差点の拡大図を表示。さらに分岐点に近づいていくと、もう一つの矢印がポップアップされて曲がる方向をガイドしていました。

↑ARカメラが映し出すリアルタイム映像をナビ画面表示させ、自然な立体表現のARルート案内と重ね合わせて案内する

 

ただ、ARカメラの画角はそれほど広くなく、少し広めの交差点では先の道路までは映像内に収まっていません。AR映像からはおおよその方角が分かる程度です。そのため、現場では交差点拡大図と併用しながら使う形となるでしょう。

 

安全運転支援機能は、先行車との関係となる「前方車両発進」「前方衝突警報」についてはかなり頻繁に警告してくれました。「前方車両発進」は先行車がスタートするとすぐに画面とアラートで知らせてくれましたし、その数値が正確かどうかは不明ですが、先行車との距離も実距離が画面上に表示されます。また、先行車との距離を縮めると「前方衝突警報」がすぐに出て警告してくれました。

↑前方車両発進。地図データに基づくルートガイドを行い、その上で先行車が発進すると「ポーン」と鳴るアラート共に画面上で注意喚起を行う

 

↑前方衝突警報。先行車に近づくとおおよその車間距離を表示し、さらに速度に応じて適切な車間以下になると注意喚起を行う。警告音と警告マークの信号を変えています。「緑→黄→赤」の3段階で徐々に危険を促す

 

一方で反応がイマイチだったのが「車線逸脱警告」です。メニューに感度を設定する項目があるのですが、もしこの機能を活用したいならここで敏感な設定にしておくとイイでしょう。ただ、車線逸脱警報は標準で装着されている新型車でも認識精度はあまり高くないという現状もあるので、現状では本機の性能も許容範囲。今後の性能進化に期待したいところです。

 

それとこのナビシステムにはタテ表示機能も備えています。この場合、上下に二分割されてARは上側に表示されます。下の地図は方面ガイドも表示されるので、機能面では使いやすいのですが、取り付けたムーブの場合はダッシュボードが高めであり、8V型画面をタテ表示にすると視界が大きく妨げられることになってしまいました。タテ表示を使う時はそういった利用環境に合わせて使うことをオススメします。

↑PNM87ARはタテ表示も可能で、ルートガイドと共にサイズのバランスが良く視認性高い。ただ、本体全体を下げて取り付けないと視界を妨げる

 

それと、このナビは交通情報を表示することができません。なので渋滞を避けたルートガイドを期待する人には不向きでしょう。しかし、ルートガイド中の案内は適切で、リルートした際の再探索もかなりスピーディに行います。道を間違えたときの安心感はとても大きいですね。

↑ルート探索では条件別に最大4ルートを表示。探索速度もスピーディで使い勝手は良好だ

 

↑政令指定都市の主要交差点では、車線情報を含めた周辺の情報を描いた3D交差点拡大図で進行方向を示す

 

↑ルートガイド中は交差点ごとの右左折情報をリスト化して案内する。交差点に近づくと拡大図に切り替わる

 

ピクシーダの次世代型ポータブルナビゲーションPNM87ARの価格は、実売4万円台と8V型としてお買い得な部類に入ります。交通情報が受信できないのは残念ですが、“AR”というややギミックの愉しさを期待する人、TV放送を含めて美しい映像にこだわる人にぜひ使ってみて欲しいポータブル型ナビと言えるでしょう。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】