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2020/10/28 17:00

カーナビ、スマホに代わる車内の相棒「ディスプレイオーディオ」の実力に迫る! ケンウッド「DDX5020S」を試してわかった特徴

インフォテイメントシステムに「ディスプレイオーディオ(DA)」を採用する動きが活発化しています。これまではカーナビゲーションが人気の中心でしたが、低価格で手に入れられ、使い勝手も高まったDAの認知度が高まっているのです。そんな状況もあり、市販カーオーディオメーカーからも同様の製品が相次いで登場するようになりました。今回はその中でも期待の新製品である、ケンウッド「DDX5020S」を紹介します。

↑ケンウッドのディスプレイオーディオ「DDX5020S」。DVD/CDドライブも備え、ハイレゾ音源も再生できるなど多彩なソースに対応した。写真ではAndroid Auto起動中

 

DDX5020S、3つの特徴

まず「ディスプレイオーディオ(以下、DA)」について簡単に説明します。DAは基本的にナビ機能を省いたディスプレイ付きオーディオと言っていいでしょう。その上で、有線/無線で接続したスマートフォン内のコンテンツとして、iPhoneなら「Apple CarPlay」、Androidなら「Android Auto」を使います。そのため、本体にあるのは映像を表示するディスプレイと、音声をスピーカーで鳴らすためのアンプを搭載するのみ。これがDAと呼ばれる所以です。

↑DDX5020Sは、時代のニーズに合わせて新たにApple CarPlayやAndroid Autoに対応して登場した

 

↑DDX5020Sの主要機能一覧。少し高めのカーオーディオとして捉えると本機の良さが理解できる

 

DDX5020SはDAとして大きく3つの特徴を備えています。1つは他のDAと同様、Apple CarPlayとAndroid Autoに対応していることです。iPhoneやAndroid端末を有線接続すると、それぞれApple CarPlay、Android Autoが自動的に起動。起動したらあとは見慣れたアイコンが画面上に表示されます。スマートフォン内のすべてのアプリが反映できるわけではありませんが、カーナビ機能や音楽再生、さらには通話機能などが6.8型の大きな画面で使えるようになるのです。車載という環境下では操作環境が著しく制限されますが、それを大きな画面で操作できるようになることで使い勝手が大幅に向上するわけです。

↑Apple CarPlayを起動して表示されるメインメニュー

 

加えて音声でのコントロールが可能になることも大きなポイントです。Apple CarPlayなら「Siri」が、Android Autoなら「Googleアシスタント」が使え、それによって運転中であってもスケジュール管理や音楽再生、周辺スポットのチェックなどもハンズフリーのままで行えます。特に便利さを感じるのがカーナビ機能で目的地を探す時で、操作は音声で検索するワードを入力するだけ。一発で行きたいところを表示します。従来のカーナビのようにメニューからカテゴリーを絞って…なんてことは不要です。

↑Apple CarPlayではウェイクワード「Hey,siri!」と呼びかけると音声入力モードに切り替わり、目的地なら行きたい施設名を、音楽を聴きたいなら楽曲名を読み上げればいい

 

2つ目は「USBミラーリング機能」への対応です。Android専用の機能ですが、スマートフォンで表示された動画内容がそのままディスプレイ上に表示されます。たとえば映像系のストリーミングサービスをスマートフォンで受信した場合、その映像が大きなディスプレイで見られるのです。操作はスマートフォン側で行いますが、音声は車載スピーカーから再生されます。ただし、著作権が保護されているコンテンツは対象外です。

 

そして3つ目が高画質&高音質であるということです。DDX5020Sの6.8型ディスプレイは表面に光沢処理が施されており、深みのある映像が再現できています。昼間は角度によって反射が気になることがありそうですが、色再現性では優れた一面を見せてくれるでしょう。操作キーは左側に縦一列で配置。各キーはピアノブラック調のフラットなベゼル上にホワイトイルミで表示されます。触った感じは良好な反応で、ボリューム操作やHOME画面の呼び出しが簡単にできました。

↑DDX5020Sのメインメニューでは、画面下によく使う項目を登録しておける

 

サウンド系では、デジタルtoアナログ変換を高精度に行える24bit DACを搭載。内蔵アンプは45W×4chと十分なパワーを備え、これを13バンドのグライコできめ細かく調整することができます。マニュアル設定にはなりますが、タイムアライメント機能も装備。低出力時に低音を心地よく聴かせるラウドネス、バスブースト機能も備えました。もちろんBluetoothにも対応し、スマートフォンに収録した音源をワイヤレスで転送。接続した際は再生中の楽曲タイトルなども表示可能です。

↑Apple CarPlayのMusicメインメニュー。iPhoneと同様、様々なプレイリストから聴きたい楽曲にアクセスできる。もちろん、音声での呼び出しも可能だ

 

↑再生中の楽曲は画面上に表示することも可能。トラックサーチは画面上の「次に再生」「戻る」でできる

 

ナビは良くも悪くもアプリの個性が出る!

iPhoneをDDX5020Sに接続するとホーム画面にApple CarPlayで使えるお馴染みのアプリのアイコンが表示されます。Android AutoではGoogleが用意した純正ナビアプリと日本ではあまり馴染みがない「waze」が使えるだけですが、Apple CarPlayではApple純正ナビアプリの他、Yahoo!ナビやNAVITIMEなどメジャーなアプリが使えます。そういう意味ではApple CarPlayの方が利用範囲はずっと幅広いということになるでしょうね。

↑Apple CarPlayの全画面表示。地図上のアイコンにタッチすれば施設の詳細な情報が表示される。左側のアプリにもダイレクトにアクセスできる

 

↑Apple CarPlayのデフォルト画面。ここから周辺施設を探すことや、再生中の楽曲をサーチできたりする。ナビ画面をタッチすれば全面表示にワンタッチで切り替わる

 

ただ、本機DAでカーナビアプリを使うとき知っておくべきことがあります。それは自車位置の測位はGPSでのみ行われているということです。Android Autoの純正ナビアプリではGPS信号をロストしたときの速度を元にした自車位置の表示を続けますが、Apple CarPlayでは基本的に測位を停止してしまいます。なので、トンネルの中では測位をストップ。さらにビルが建ち並ぶ都市部では、GPSがビルの影響を受けて位置を大きくずらしてしまう可能性もあるのです。

 

それと案内ルートについても、良く言えば個性的な、悪く言えば不都合な案内をすることも少なからずあります。極端にショートカットするためにクルマ同士がすれ違えない狭い道を案内したり、高速道路をほとんど使わず一般道を経由して案内することもあります。さらに交通情報もApple CarPlayの純正ナビアプリは今もなお非対応ですし、Android Autoの交通情報も独自のプローブによるもの。馴染みのあるVICSの情報がすべて正しいとは言いませんが、カーナビアプリは全国レベルで安定した情報が提供できているとは限らないのです。

 

その状況さえ納得できればDAはかなり魅力的です。特に私がDDX5020Sを評価したいのはDVD/CDドライブを備えていることです。最近は自動車メーカー系DAでさえ、これを省く傾向が続いているだけに、定番のメディアが再生できるメリットは大きいと思います。しかも、ハイレゾ音源である192kHz/24bitのflacやwavファイルの再生が可能で、Bluetoothオーディオにも対応しているので、多彩なソースを楽しみたい人にも最適です。

↑ディスクドライブを省略する機種が多い中で、ディスプレイオーディオDDX5020SはDVD/CDドライブを搭載した。ハイレゾ音源の再生も可能だ

 

DDX5020Sの価格は実売で4万円弱と少し高めのカーオーディオ並み。普段は通勤や買い物など、知っている道しか走らない。しかし、いざ遠くに出掛けるときにナビ機能は欲しい。そんな人に本機は打ってつけの一台になることでしょう。

↑静電容量式タッチパネルを採用し、フロントフェイスには軽快に操作できるスマートフラットキーを装備しています。DDX5020Sは現在発売中

 

 

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