乗り物
2016/7/31 17:00

新幹線H5系が函館市内を走る? 新幹線開業で輝く港町の路面電車「函館市電」

全国を走る路面電車の旅 第2回 函館市企業局交通部

 

北海道新幹線が2016年3月末に開業した。新駅は新函館北斗駅。函館の街からはやや離れていて、JR函館ライナーで約20分かかるのが難だが、とはいえ函館の街を訪れる人は確実に増えたように見えた。函館の路面電車が走り始めて100年以上。異国情緒ただようハイカラな街中を、新旧の路面電車の車両が走る。

 

【最新情報】新幹線H5系が函館市内を走る?

なかでも、いま注目の車両が北海道新幹線H5系と同じ色とデザインの9600形電車。超低床のリトルダンサーシリーズ(アルナ車両製造)の最新電車で、路面電車とは思えない乗り心地の良さを誇る。

↑上がグリーンに、下がホワイト、帯は紫色という北海道新幹線H5系カラーをまとった9600形電車が函館市内を疾走する
↑上がグリーンに、下がホワイト、帯は紫色という北海道新幹線H5系カラーをまとった9600形電車が函館市内を疾走する

 

【歴史】はじまりは明治30年の“馬車鉄道”からはじまる

幕末に国大貿易港として開港された函館。その面影を残す元領事館や、教会、洋館、和洋折衷の住宅がいまもなお点在する。そんな異国情緒かおる北の街を走る函館市電。絵になるポイントも多く、人気の路面電車の路線である。

 

函館の街なかに軌道線が敷かれたのは、1897(明治30)年のこと。はじまりは馬車鉄道だった。馬がひくのどかな光景から、函館の路面鉄道の歴史が始まった。

 

その後、函館水電(後の北海道電力)が余剰電力を活用しようと馬車鉄道を買収。1913(大正2)年に路線の一部を電化し、電車の運行を始めた。函館水電から函館市への移管は1943(昭和18)年のこと。以降、函館市電として走り続けている。

↑土日を中心に駒場車庫〜谷地頭間で運転される函館ハイカラ號(冬期は除く)
↑土日を中心に駒場車庫〜谷地頭間で運転される函館ハイカラ號(冬期は除く)

 

【路線と車両】1910年生まれの「函館ハイカラ號」に乗りたい

現在の路線は2系統/函館どつく前〜湯の川間と、5系統/谷地頭(やちがしら)〜湯の川」間の2路線。十字街〜湯の川間は2系統と5系統両方の電車が走る区間となっている。

 

車両は新旧バラエティに富む。最古参の車両といえば30形電車。函館市電では「函館ハイカラ號」という愛称を付けたレトロな電車である。この30形電車は、1910(明治43)年に千葉県成田市を走っていた成宗(せいそう)電気軌道という会社が導入した車両。今では希少な、米国ブリル社製の二軸単台車が使われている。そのかわいらしい風貌と独特な乗心地がファンの心をくすぐるのだ。

 

レトロな車両が走る一方で超低床ニ車体連接車9600形も運用し、電停のバリアフリー化にも力を注ぐ。

 

札幌と同様、名物のささら電車もブリル単台車を履き、車体を揺すりながらの除雪は豪快そのもの。ただし、函館は降雪量が少なく出動回数は限られ、出会う機会が非常に少ない。線路に積もる多少の雪ならば、あまり気にせず電車が走ってしまうのも北国ならではの光景だ。

↑函館市電の除雪用「ささら電車」。降雪の少なさから出動回数が非常に少なくなっている
↑函館市電の除雪用「ささら電車」。降雪の少なさから出動回数が非常に少なくなっている

 

【街の風景】入浴料420円の日帰り温泉など見所は満載!

函館の街巡りをするなら、市電の旅が便利だ。市電で行くことができる主なポイントをあげておこう。

 

5系統の函館どつく前〜十字街の間には「ペリー来航記念碑」、「函館市北方民族資料館」(いずれも末広町電停近く)などの名所がずらり。薄緑色のクラシカルな洋館「相馬株式会社」(末広町電停近く/トップ写真)をバックに市電がカーブする。また、十字街電停へ歩くと旧丸井今井百貨店(現在は函館市地域交流まちづくりセンター)の洋館が建つ。このあたりは、函館市電の名物スポットでもある。

↑左の建物は大正期に建った元丸井今井百貨店の洋館。十字街電停近くは人気の撮影ポイントだ
↑左の建物は大正期に建った元丸井今井百貨店の洋館。十字街電停近くは人気の撮影ポイントだ

 

十字街の交差点には、国内最古の操車塔(信号塔とも呼ばれる)が残るので注目したい。現役時代には操車員が常駐。双眼鏡を片手に、系統別に転轍機(てんてつき)と信号を制御したそうだ。現在は自動化が進んで役目を終えているが、大切に保存されている。

 

一方、宝来町(ほうらいちょう)〜谷地頭電停間は、坂の街を走る路面電車の姿が堪能できる区間だ。良質な天然温泉が楽しめる「谷地頭温泉」も、谷地頭電停から近い。温泉はなんと朝の6時から営業しており、朝風呂を浴びてから仕事に向かう人もいる。入浴料は420円と銭湯感覚。ただし、石鹸やシャンプーは用意がなく、タオルも持参が必要だ。

↑谷地頭温泉のお湯は茶色いにごり湯。入浴料は安いが石鹸やシャンプーの用意はなく、タオルの持参も欠かせない
↑谷地頭温泉のお湯は茶色いにごり湯。入浴料は安いが石鹸やシャンプーの用意はなく、タオルの持参も欠かせない

 

函館駅以北では、五稜郭公園前と駒場車庫前には訪れておきたい。

 

五稜郭公園前電停は、「特別史跡五稜郭跡」の入口。五稜郭は日本最初の稜堡式城郭で、函館戦争の激戦地にもなった。城郭を巡ると、激動期を生きた志士たちの思いが伝わってくるようだ。

 

駒場車庫前電停には市電の車庫があり、敷地外の歩道からも車両基地が一望できる。車両の転線・入出庫や電停での乗務交代を見ることができて飽きることはない。ラッシュ時には本線上に車両が団子状態になっていて、出入りするシーンが目撃できる。

 ↑函館ハイカラ號は駒場車庫前電停(写真)と谷地頭電停の間を週末に走る(冬期を除く)
↑函館ハイカラ號は駒場車庫前電停(写真)と谷地頭電停の間を週末に走る(冬期を除く)
↑函館市電の駒場車庫。道道83号線の歩道上から車庫内が良く見渡せる
↑函館市電の駒場車庫。道道83号線の歩道上から車庫内が良く見渡せる

 

【旅の終わり】新鮮で安いお土産を買うなら……

見どころが盛りだくさんな函館市電。最後は、お土産の購入で締めくくってみてはいかがだろう。

 

市民向けの市場で買えば、新鮮で価格も良心的だ。新川町電停前の「はこだて自由市場」は市民の台所。市電を使って買い物に訪れる人も多い。品ぞろえと鮮度は圧巻で、値段も良心的。市場内の食堂もおいしいく、得した気分になってついつい買い過ぎないように注意したい。

↑新川町電停近くの「はこだて自由市場」。函館駅近くの函館朝市が観光客向けなのに対して、こちらは市民向けの市場
↑新川町電停近くの「はこだて自由市場」。函館駅近くの函館朝市が観光客向けなのに対して、こちらは市民向けの市場
↑新鮮な魚介類の宝庫ならではの品揃え。市民向けの市場なので当然ながら安い。宅配便での配送にも応じてくれる
↑新鮮な魚介類の宝庫ならではの品揃え。市民向けの市場なので当然ながら安い。宅配便での配送にも応じてくれる

 

【TRAIN DATA】

路線名:本線(函館どつく前〜函館駅前間)、湯の川線(松風町〜湯の川間)、宝来・谷地頭線(十字街〜谷地頭間)、大森線(函館駅前〜松風間)

運行事業:函館市企業局交通部

営業距離:10.9km

軌間:1372m

料金:210円〜250円(対キロ区間)

開業年:1913(大正2)年

※馬車鉄道として1897(明治30)年に開業、1913年に一部区間電化

 

【URL】

函館市役所 http://www.city.hakodate.hokkaido.jp/bunya/hakodateshiden/

 

文/星川功一 撮影/稲野政男