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2021/7/25 6:00

車両がおもしろい!昭和レトロが楽しめる「三重県3路線」に乗る

【乗りたい三岐線③】乗りに行ったら訪れたい保々駅の車庫

三岐線に乗ったら、ぜひとも保々駅(ほぼえき)を訪ねたい。駅舎を出て、やや近鉄富田駅側に歩けば、公道から整備工場内が見え、さらに車庫内の留置線が見えてくる。大手私鉄の車両基地のように高いフェンスはなく、背の低い鉄柵があるのみなのがありがたい。そのため停まっている電車と、電気機関車がよく見える。

 

筆者は何度か同地を訪れているが、そのたびに停まっている車両が異なっていて楽しめた。例えば最近、訪れた日(2021年7月18日)には、三岐鉄道の電気機関車の中ではレアな、ED5081形(ED5082号機も含む)が停車していた。同機関車は元東武鉄道のED5080形で、三岐鉄道へやってくる前には東武佐野線の貨物輸送で使われた機関車だ。

 

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↑保々駅の車庫に停まるED5081形。三岐鉄道では2両のみの希少な形式だ

 

訪れた日には、ED5081形とともに珍しい機関車も停まっていた。ED301形という凸形電気機関車で、通常は東藤原駅近くにあるセメント工場内での入換えに使われることが多く、沿線で見る機会がない。筆者も初めて出会う機関車だった。保々駅の車庫では、このような稀に見ることができる車両も停まっている。三岐線に乗車したらぜひとも立ち寄りたいポイントである。

↑ED301形は元南海電気鉄道のED5201形。1984(昭和59)年に三岐鉄道に移籍。主に構内の入換え作業に使われている

 

三岐線では丹生川駅(にゅうがわえき)近くにある「貨物鉄道博物館」もぜひとも訪れておきたい施設だ。ここのみに残る貨車13車両、蒸気機関車と、入換え用の小型機関車各1両が収蔵されている。うち3両は国立科学博物館「重要科学技術史資料」に登録された貨車だ。こうした多くの貨車や大切な資料類がボランティアの人たちの協力によって守られている。

 

開館は月1回のみで、毎月第1日曜日(1月のみ第2日曜日)の10時から16時まで。入館料は無料だが、訪れた時には今後のためにも寄付をしておきたいところだ。現在コロナ禍ということで、休館となる日もあり、確認してから訪ねることをお勧めしたい。

↑貨物鉄道博物館に収蔵されているシキ160形式。130トン積吊掛式大物車で1955(昭和30)年の製造。同館の収蔵車両の中で最大

 

【乗りたい三岐線④】走る貨物列車にも目を向けておきたい

三岐鉄道三岐線では電車だけでなく、貨物列車もしっかりチェックしておきたい。東藤原駅とJR富田駅を結ぶ貨物列車で、1日に下り(東藤原行)が10本、上り(富田行)7本が電気機関車2両の牽引による重連運転で運行されている(機関車のみでの単機運行を除く)。連結する貨車はセメントの粉体を運ぶタンク貨車タキ1900形、もしくはフライアッシュと炭酸カルシウムを運ぶホッパ車ホキ1000形を連結した列車も走っている。

↑小さめの電気機関車が重連で牽引を行う。写真はセメント粉体を積んだタンク車輸送で、四日市出荷センターまで運ばれる

 

貨物列車は三岐線の近鉄富田駅〜大矢知駅(おおやちえき)間にある三岐朝明信号場から貨物専用線に入りJR富田駅に向かう。その先、タンク貨車は、JR貨物のDF200形式に引き継がれJR富田駅〜四日市駅を走り、四日市駅から先は、四日市港内にある出荷センターまで運ばれる。

 

時間に余裕があれば、三岐鉄道の路線内だけでなく、四日市港内を走る姿も見ておきたいものだ。ちなみにJR四日市駅から四日市港(末広橋梁上付近)へは、距離にして1,2kmほどで、JR四日市駅などでレンタサイクルを借りれば十分に貨物列車の走行を追うことができる。

↑四日市港に架かる末広橋梁上のセメント列車。同橋は可動橋で、列車が通らない時は中央部が上に持ちあがる。国の重要文化財でもある

 

タンク貨車以外に三岐鉄道を走っている貨車がホッパ車ホキ1000形。こちらは東藤原駅からJR富田駅まで走り、その先、JR貨物のDF200形式に引き継がれ、東海道本線の稲沢駅まで向う。折り返す形で、武豊線東浦駅まで走り、そこから衣浦臨海鉄道の碧南市駅まで向かう。三岐鉄道から碧南市駅へ向かう時には炭酸カルシウムを、戻る時にはフライアッシュ(石炭灰)を運ぶ。

 

コンテナを除く貨車(車扱い貨物)が空荷のない双方向輸送を行う例は希少で、輸送効率の高い貨物列車でもある。この貨物輸送で運ばれる炭酸カルシウムは、碧南火力発電所で必要なものだが、こちらの火力発電所は燃料が石炭となっている。脱炭素化が急速に進む時代となっていて、こうした輸送含は今後どうなっていくか気になるところだ。

 

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