乗り物
鉄道
2021/7/25 6:00

車両がおもしろい!昭和レトロが楽しめる「三重県3路線」に乗る

【乗りたい北勢線①】横幅小さめの電車の特異な動き

三岐鉄道三岐線とともに、三重県を訪れたら乗ってみたいのが「三岐鉄道北勢線(ほくせいせん)」と、「四日市あすなろう鉄道」の路線だ。

 

両線は762mmという線路幅の路線で、国内ではほかに黒部峡谷鉄道以外にない。いわゆる軽便鉄道と呼ばれる線路幅だ。日本の在来線は1067mmと世界の鉄道路線の中では狭軌となるが、それよりも一回り幅が狭い。その珍しい線路幅の路線が三重県に集うように残っているのである。独特な姿の車両と、また在来線とは異なる乗り心地が味わえるので、ぜひとも経験していただきたい。

 

【関連記事】
762mm幅が残った謎——三重県を走る2つのローカル線を乗り歩く【三岐鉄道北勢線/四日市あすなろう鉄道】

↑北勢線の基本形式となる270系。タテ長で、車体もかなり短い印象の電車だ

 

三岐鉄道北勢線はJRと近鉄の桑名駅に隣接の西桑名駅が起点で、阿下喜駅(あげきえき)まで20.4kmを走る。車両は線路幅に合わせて小さめ。横幅がせまく、タテに長く見える。車体の横幅は2110〜2130mm。JR山手線を走るE235系の横幅は2950mmなので、約800mmも狭い。ほかのサイズを比べてみると、全高が北勢線の場合3190〜3670mmなのに対して、E235系は3620mm(パンタグラフ折りたたみ時3950mm)と、車体の高さはそれほどの差はない。全長は北勢線の電車が11380〜15600mmで、山手線が20000mmだ。

 

つまり車体の横幅と長さが極端に違っているわけだ。こうした特長は、乗った時の印象につながっている。室内は通路が狭く感じる。大人が対面して座ると、すぐにそれが分かる。さらに動き出すと横にゆれる独特な感覚があり、これは北勢線特有のものだ。

↑楚原駅〜麻生田駅間にある「めがね橋」。3連アーチ橋で、コンクリートブロック製の美しい姿が残される

 

車両は三岐線と同じく黄色にオレンジ色のツートンカラーが基本。ほかに先頭が平面タイプではない湘南形と呼ばれるデザインの200系も走り、こちらは三重交通時代のリバイバル塗装である下半分が濃いグリーン、上半分がクリームという色分けで走る。

 

北勢線の沿線で訪れてみたいところを挙げておこう。北勢線の開業は古く、開業は1914(大正3)年で、現在の路線区間が全通したのが1931(昭和6)年のことだった。ちなみに三岐線の開業は、北勢線全通の年と同じ1931(昭和6)年で、北勢線の起源の方が古いことが分かる。そうした古さを感じさせるポイントがある。楚原駅(そはらえき)〜麻生田駅(おうだえき)間にある2本の橋がそれで、それぞれねじり橋、めがね橋と呼ばれ、同区間が開業した1916(大正5)年に完成した歴史を持つ。ともにコンクリートブロック製の橋で、いわば煉瓦積みのように、コンクリートをブロックにして積み上げて造りあげたもの。当時に造られた橋に多く見られるアーチ状の姿が美しい。

 

最寄りの楚原駅からはねじり橋までは徒歩で12分(900m)ほどなので、時間に余裕がある時に立ち寄ることをお勧めしたい。

 

【乗りたい北勢線②】終点の阿下喜駅には軽便鉄道博物館が

北勢線に乗車したら、ぜひ訪れたいのが、終点阿下喜駅に隣接した軽便鉄道博物館だ。軽便鉄道という今となっては貴重なスケールの鉄道を紹介する施設で、ミニ電車の運転も行う。さらに博物館内にはミニ転車台、北勢線開業当時に造られたモニ226、旧阿下喜駅舎も保存されている。

 

同博物館の開館は第1・3日曜日の10時から16時まで。コロナ禍のため閉館となる日もあるので、確認の上、訪れたい。

↑阿下喜駅前にある軽便鉄道博物館。資料展示のほか、かわいらしいミニ電車の運転も行われる(運転が無い日もあり)

 

北勢線と三岐線は、ほぼ平行して路線が延びている。それこそ付かず離れずといった距離で、北勢線の阿下喜駅から、三岐線の伊勢治田駅(いせはったえき)まで徒歩22分(1.6km)ほどの距離となる。

 

両線の間を歩くことを覚悟すれば、行きは北勢線で阿下喜駅まで、帰りは三岐線といった行程も不可能ではない。

 

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4