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2021/10/10 6:30

懐かしの気動車に乗りたい!旅したい!「小湊鐵道」「いすみ鉄道」

【乗ろう!小湊鐵道③】東北のような風景に見えるキハ40の走り

上総牛久駅から先は不通となっていたこともあり、2駅先の光風台駅まで代行バスでの移動となる。所要時間は12分ほどで、乗車してまもなく光風台駅に到着する。ここから先、五井駅までは30分〜1時間おきに列車が出ていて便利となる。

 

この区間では7月からすでに〝新車両〟が走り始めている。その新車両とはキハ40形だ。

 

○キハ40

↑JR只見線を走ったキハ40形。キハ40形は両端に運転席があり便利な車両だった。同塗装は東北地域本社色と呼ばれた

 

キハ40系(2代目)は国鉄が1977(昭和52)年〜1982(昭和57)年に新造した気動車で、キハ20形の後継車両として開発された。キハ40系の基本番台は車両の前後に運転台があるキハ40形、ドア位置を中央よりにした都市近郊タイプのキハ47形、片運転台のキハ48形が基本形として造られ、その派生系などを含めると大量の計888両が造られた。

 

全国津々浦々で活躍をし続け、その後にJR各社に引き継がれたものの、徐々に引退する車両が増え、JR東日本ではジョイフルトレイン用に改造された車両以外のキハ40系すべてが今年の3月で引退となっている。

 

そうしたキハ40形を今後に生かそうと引き取ったのが小湊鐵道だった。これまでのキハ200形の置き換え用に最適と考えたわけである。そして7月から五井駅〜光風台駅の運行に利用を始めている。

 

走り始めた車両はキハ40-2。JR只見線を2020(令和2)年3月まで走った塗装と同色で走り始めた。白地に濃淡2色のグリーンという塗装は、〝東北地域本社色〟と呼ばれていた。

↑稲刈りが終わったばかりの房総の田園地帯を走るキハ40-2。JR当時と同じ東北地域本社色のキハ40形が走る光景を見ることができる

 

JR只見線を走ったままの姿が房総半島で再現されたのである。それこそ行先案内の表示がなければ、これは東北の光景なのではと見間違えてしまう

 

キハ40形自体、国鉄カラーの強い車両であるし、さらにJR当時の塗装の車両が房総半島を走ることになるのは、予想できないことだった。この夏、緊急事態宣言下ということもあり、沿線では鉄道ファンの姿は限られていたものの、早くも同車両を撮影しようというファンの姿がちらほら見受けられた。

 

多くのキハ40形が小湊鐵道の五井駅にすでに運び込まれているが、今後、出場する車両がどのような塗装で出てくるのか、楽しみでならない。

 

【乗ろう!小湊鐵道④】光風台の駅へ入ってきた注目の異種編成

さて、レポートは10月3日に訪れた光風台駅の様子に戻る。代行バスが駅に着いて、まもなく駅に入ってきたのが、なんとキハ210と、キハ40-2の〝異種編成〟。気動車の場合には、電車とは異なり、このように違う形式であっても編成を組むことができるわけだ。

 

光風台駅で待つ乗客も興味津々で見ている人たちが多かった。光風台駅では、入ってきたホームからは、分岐ポイントの造りによってそのまま折り返すことができず、いったん先に進んで折り返す方式がとられていた。

↑この日、光風台駅に入線してきたのはキハ210とキハ40-2の組み合わせ。こうした車両編成での運行も今後、行われていくのだろうか

 

入線したホームから折り返し運転ができないということで、ダイヤよりもやや遅れ気味で発車した五井駅の列車。キハ210とキハ40-2という組みあせでの運行はどのようなものだろうと走りに注目した。五井駅までは5駅だが、停車は良いのだが、出発時にはあまりスムーズとは言えない様子だった。こうした異種での組み合わせに、まだ慣れていないということもあるのかも知れない。単行での運行の方がもちろん、スムーズだ。このあたり、全線が復旧した時にどうなるのか気になるところだ。

 

光風台駅からは20分ほどで五井駅に到着した。途中に寄り道はしたものの、半日がかりの房総半島横断となった。災害による路線の不通がなければ、大原駅から五井駅まで、最短2時間ちょっとで横断が可能になる。

↑上総山田駅〜光風台駅間にある第一柴の下(だいいちしばのした)橋梁を渡るキハ40-2。こちらの橋も国の登録有形文化財に指定される

 

余談になるが、小湊鐵道の路線では2017(平成29)年に22施設が国の登録有形文化財に登録された。駅や鉄道施設の多くが文化財なのだ。いわば古い時代物が数多く残っていることにほかならない。

 

そうした文化財と昭和に生み出された車両とが生み出すコラボレーションは、いわば同鉄道の〝財産〟であり〝宝物〟となっている。そんな恩恵を利用者も存分に見て、魅力を堪能したいものである。

 

【乗ろう!小湊鐵道⑤】復旧後の小湊鐵道の注目ポイントといえば

10月中旬になれば不通区間も復旧し、小湊鐵道の日常が戻ってくる。とともに、緊急事態宣言も解除されたこともあり、人気の観光列車「里山トロッコ」も上総牛久駅〜養老渓谷駅間での運行が再開されることになろう。

↑春には菜の花と桜、そして里山トロッコの共演が楽しめる上総大久保駅。こうした日常が早く取り戻されることを望みたい

 

さらに気になるのは、新しく導入されたキハ40の動向だ。下の写真が五井機関区の10月3日の状況だ。一番手前に見えているキハ40形が、キハ40-1で、小湊鐵道カラーの肌色と朱色で塗られ、イベント列車として走ることがすでに発表されている。

 

その後ろ側に「首都圏色」と呼ばれる朱色のキハ40が2両並ぶ。その横には「男鹿線色」と呼ばれる緑のラインが入った車両が止まっている。こうした塗装は、どのように変えて出てくるのか気になるところだ。

↑五井駅に隣接する小湊鐵道の五井機関区の模様。キハ200形とともにJR東日本から導入したキハ40の姿が多数に見える(10月3日撮影)

 

そんな五井機関区の車両の動向および観察に最適な小湊鐵道直営の施設もできている。五井駅の東口を降りた目の前に「こみなと待合室」という施設が今年3月にオープンした。広々したパブリックスペースでは、小湊鐵道のグッズ類の販売、そしてドリンク類やパンやスイーツが用意されている。

 

室内には駅側を見わたせるイス、さらには小湊鐵道のホームと機関区が目の前に見える中庭が設けられ、外にも座席とテーブル用意されている。それこそ、機関区に出入りする車両をじっくり見渡すことが可能なのだ。上総牛久駅の「里山トイレ」と、五井駅の「こみなと待合室」。最近の小湊鐵道の営業努力には頭が下がる。あとは、水害などの自然災害がなるべく房総半島を避けてくれることを祈るのみである。

↑ひと休みに最適な五井駅東口にある「こみなと待合室」。駅のホームや機関区が目の前に見えることもあり家族連れで訪れる人も多い

 

【乗ろう!房総の鉄道】気になる京葉臨海鉄道の赤い新型機関車

最後に、同じ房総半島を走る鉄道で注目の路線と新型車両に関して一つ触れておきたい。

 

内房線の蘇我駅と千葉貨物駅、さらに臨海工業地帯の京葉久保田を結ぶ21.6kmの貨物専用の路線がある。運行するのは京葉臨海鉄道臨海鉄道。貨物線としては屈指の輸送量を誇っている。これまで空色に塗られたディーゼル機関車KD55形とKD60形が長年にわたり使われてきたが、今年6月に新しい機関車が加わっている。

↑京葉臨海鉄道の新型DD200形の801号機。訪れた9月中旬には試運転が行われていた。後ろの村田川橋梁は明治期に米国で造られたもの

 

DD200形801号機がその新しい機関車で、筆者が訪れた9月には試運転が行われていた。「RED MARINE」という臨海鉄道らしい愛称も付けられた。

 

○DD200形ディーゼル機関車

DD200形はJR貨物が開発し、すでに複数の路線での貨車牽引だけでなく、駅構内の入れ替えなど、汎用性に富んだ機関車として使われている。JR貨物だけでなく、京葉臨海鉄道、水島臨海鉄道にもすでに導入されている。JR九州にも1両が導入された。臨海鉄道だけでなく、JR旅客会社にまでということは、DE10形といった古い国鉄形機関車の置き換えという役割を担うことになるのだろう。

 

京葉臨海鉄道の路線は内房線の蘇我駅・八幡宿駅・姉ケ崎駅からも徒歩で行ける距離にある。小湊鐵道を訪れたおりに、赤く鮮やかな新型機関車の活躍を見に行く楽しみも増えた。

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