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2022/1/22 17:00

いよいよ運転開始!世界初DMV路線「阿佐海岸鉄道」を探訪した【後編】

【初DMVの旅⑫】土日祝日一便の室戸へ行くバスを追ってみた

今回、筆者は宍喰駅までしか乗車できなかったが、もう少し乗りたいなと思った。そこで、土日祝日のみ運行される1本のみ、高知県東洋町の「海の駅東洋町」から国道55号を南へ走り室戸市へ向かう特別な〝列車〟を車を使って追いかけてみた。

 

「海の駅東洋町」の先は太平洋の海岸線に沿って走る。距離はかなりあり、次の「むろと廃校水族館」までは約28km、約37分。「海の駅東洋町」を11時27分に発車した〝列車〟は「むろと廃校水族館」に12時4分に到着する。

↑「海の駅東洋町」から室戸へ向かう国道55号沿いから見た海景色。こうした素晴らしい海岸の眺めが室戸市まで続く

 

「むろと廃校水族館」は廃校になった小学校を利用した水族館で、多くの海水魚が飼育されている。この次の停留所が「室戸世界ジオパークセンター」で、12時10分着。室戸はユネスコの世界ジオパークネットワークへの加盟が認定されていて、この「室戸世界ジオパークセンター」では、室戸という土地のなりたちや、室戸の産業や文化を詳しく紹介している。

↑「室戸世界ジオパークセンター」には大きな停留所があり、同区間を走る路線バスなども多く発着している

 

ここまでは室戸市の太平洋側の停留所で、この先の「室戸岬」からは土佐湾側を走ることになる。次の「室戸岬」へは約6.4km、9分ほどの距離があり、12時19分に到着する。停留所から室戸の突端にある室戸岬灯台へ徒歩4分ほどの距離だ。ちなみに、同停留所からは土佐くろしお鉄道の安芸駅(あきえき)や奈半利駅(なはりえき)方面への路線バスが1時間1〜2本間隔で走っていて便利だ。

 

DMVの終点はこの「室戸岬」ではなく、次の「海の駅とろむ」(「むろと」でなく「とろむ」なので注意)で、12時24分に到着する。「海の駅東洋町」から約1時間かかった。

↑国道55号から港へ入ったところにある「海の駅とろむ」。高速バスターミナルがあり(左下)、走行開始した週末はイベントも催された

 

「海の駅とろむ」は室戸岬漁港に面した施設で、高速バスターミナルがある(2021(令和3)年3月末に、営業していたレストランや直売所が営業休止している)が、ちょうど開業に合わせて、海の駅内には臨時のブースが多く出され、開業イベントで盛り上がっていた。

 

【初DMVの旅⑬】DMV登場でわく阿佐海岸鉄道へ行く手段は

DMVが走り出した阿佐海岸鉄道だが、乗りに行くとしたらどのような交通手段があるのだろう。

 

高知県の東端、また徳島県の南端にある同エリア。高知駅からは甲浦駅まで車で約2時間半、距離は室戸経由で112kmある。徳島駅から阿波海南駅までは約1時間40分で約75km。高速道路は一部区間しか開業していないため、国道55号をひたすら走らなければならない。運転していると遠さを感じる道のりだ。

 

公共交通機関があまり便利ではないこともあり、レンタカーを利用する方が多くなるかと思う。ちなみに、土佐くろしお鉄道ごめん・はなり線の安芸駅には駅レンタカーが用意されていて、この駅からならば室戸経由で約75km、1時間30分ほどで甲浦駅へ着くことができる。

 

この地域に行くアクセスとして、鉄道の利用より便利なのが大阪からの高速バス(徳島交通が運行)だ。大阪の南海なんばから阿佐海岸鉄道の各駅を通る高速バスが1日に4便出ている。このバスを利用すれば大阪・南海なんばからは海部駅まで約5時間、高速舞子バス停からは約3時間半で着くことができる。

 

阿佐海岸鉄道が走るエリアでは徳島バスの路線バスも走っている。沿線で写真を撮りたい時などの移動に便利だ。牟岐〜甲浦駅前間で13往復が運行され、通勤・通学の利用者が多い朝夕の本数が多い。地元の病院や学校を経由していて、暮らしに密着したバス路線でもある。

↑甲浦駅前から発車する牟岐駅行きの路線バス。病院や学校を経由して走ることもあり利用する地元の人も多い

 

高知県側からも高知東部交通の路線バスが甲浦岸壁(海の駅東洋町を経由)〜室戸営業所間を1日7往復走っている。なお、DMVが週に1回、往復する終着の停留所の「海の駅とろむ」は、前述した大阪・南海なんば発の高速バスが4本中、1本のみが向かい、折り返す停留所となる。この海の駅からバス等はほかに発着していない。

 

「海の駅とろむ」は前述の通り営業休止状態になので、DMVを高知県の室戸市側から利用する時には、一つ手前の「室戸岬」停留所で地元を走る高知東部交通のバスに乗り換えたほうが良さそうである。

 

DMVの整備に関しては「観光活用による沿線地域活性化」「地域公共交通の拡充」「災害時の交通インフラ」という意味合いが大きい。公共交通が脆弱な地域だからこそ補完する意味合いが大きいように感じた。

 

走り始めたばかりのDMV車両。最初は物珍しさから訪れる人も多いことだろう。長い間走り続けているうちに、課題も出てくるだろうが、長い目で見守るべき乗り物のように感じた。

 

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