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2022/7/16 21:00

百聞は一見にしかず!?「西九州新幹線」開業で沿線はどう変わるのか?

〜〜JR九州・西九州新幹線9月23日開業(佐賀県・長崎県)〜〜

 

佐賀県の武雄温泉駅と長崎県の長崎駅を結ぶ西九州新幹線の開業が、9月23日とほぼ2か月後に迫った。すでに試運転列車も走るようになり、新駅の工事も最終段階を迎えている。西九州新幹線の開業で沿線はどのように変わるのか、百聞は一見にしかず、写真を中心に西九州新幹線の今を見ていきたい。

 

*取材は2022(令和4)年7月1日に行いました。2017(平成29)年5月〜2020(令和2)年12月に取材撮影したものも加えています。

 

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【西九州新幹線開業①】武雄温泉駅〜長崎駅間を最速23分で走る

まずはJR九州が発表した西九州新幹線の概要を見ておこう。

 

路線と営業キロJR九州 西九州新幹線・武雄温泉駅〜長崎駅間69.6km
開業2022(令和4)年9月23日開業を予定
駅数5駅(起終点駅を含む)
運転本数上下47本(武雄温泉駅〜長崎駅間は44本、新大村駅〜長崎駅間が3本)。
朝夕の通勤時間帯は1時間あたり2本、日中の時間帯は1本
所要時間武雄温泉駅〜長崎駅間は最速で23分

 

路線は上記の地図を見ていただくと分かるように、これまで佐賀〜長崎間を結ぶ長崎本線が有明海沿いに走っていたのに対して、西九州新幹線の路線は、武雄温泉駅から直線的に南西にある大村を目指していることが分かる。そして大村湾に沿うように、諌早駅、長崎駅を目指す。

 

【西九州新幹線開業②】JR九州らしさ満開のN700Sかもめ

走る車両はN700S8000番台で、車両の内外装のデザインはJR九州の多くの車両のデザインを手かけてきた水戸岡鋭治氏が担当した。

 

N700Sのベースとなった車両は、東海道・山陽新幹線用にJR東海が開発した車両で、2018(平成30)年に先行試作車が造られ、長期にわたる試運転を重ねた上に2020(令和2)年に量産車が完成。以降、車両の増備が進められている。

↑西九州新幹線を試験走行するN700S8000番台。白と赤のコントラストが鮮やかな印象で、車体に「かもめ」などの文字も入る

 

西九州新幹線を走る車両は、「九州らしいオンリーワンの車両」をデザインコンセプトとし、東海道・山陽新幹線用が16両編成であるのに対して、短い6両編成となっている。外観のデザインおよび座席などの内装も東海道・山陽新幹線を走るN700Sとはだいぶ異なった印象に仕上げられている。

↑東海道・山陽新幹線を走るN700S。西九州新幹線を走るN700Sと見比べるとかなり異なることが分かる

 

今回の開業に合わせて6両×4編成、計24両が導入された。ベースとなる白い車体に、下部にはJR九州のコーポレートカラーである「赤」を配色。6両のうち長崎駅側が1号車、武雄温泉駅側が6号車となる。1〜3号車が指定席で2席×2席の配置、各車両、唐草(ベージュ)、獅子柄(グリーン)、菊大柄(グレー)と異なった仕様の座席色となる。4〜6号車は2席×3席の配置で、基本の座席カラーはイエローだ。

 

東海道・山陽新幹線を走るN700Sと見比べても、西九州新幹線用の車両は運転席の窓周りが大きくアクセントになっている。また正面にエンブレムが配置されている。帯はJR九州らしく細く赤いラインが入る。最高運転速度は路線の規格に合わせて260km/hと、従来のN700Sの東海道新幹線285km/h、山陽新幹線300km/hの最高運転速度よりも抑え目ながら、水戸岡流の味付けがなされ、乗車時にどのような印象を受けるか楽しみな車両に仕上がっている。

 

【西九州新幹線開業③】武雄温泉駅で「リレーかもめ」から乗換え

ここからは西九州新幹線の新しい駅の姿を見ていこう。撮影は7月初頭のもので、駅の内外観はほぼ完成し、主に駅前の整備工事などが進められていた。まずは西九州新幹線の起点駅となる武雄温泉駅から。

↑博多駅〜武雄温泉駅間は従来の特急「かもめ」に使われた885系が「リレーかもめ」などの特急で運行される予定だ

 

武雄温泉駅は2008(平成20)年にすでに高架化されていて、南側に西九州新幹線の線路が設けられ、さらに駅前の整備工事が進められた。新幹線開業後には博多発の特急と新幹線の乗換えが便利なように、「対面乗換方式」を導入。在来線のホームに「リレーかもめ」などの特急列車が到着、同じホームの向かい側から西九州新幹線の「かもめ」が発着する形となる。

 

訪れた時に、この対面ホームへの入場はかなわなかったが、駅舎入口には「在来線」と、「西九州新幹線」と「リレー特急」は異なる改札口が設けられていた。新幹線と対面乗換え方式で運転される特急は、「リレーかもめ」「みどり(リレーかもめ)」「ハウステンボス(リレーかもめ)」を名乗る予定で、車両は885系6両編成、783系8両編成(もしくは4両編成)が使われる。

↑新幹線側の駅舎・御船山口(南口)の駅前整備工事が進められていた。駅舎内には西九州新幹線・リレー特急のりばもある(右上)

 

駅名どおり、武雄温泉の玄関口にあたる。そこで武雄温泉の観光案内もしておこう。

 

武雄温泉の歴史は古く約1300年の歴史を誇る。温泉街の中心となるのが「武雄温泉楼門」で、ここまで駅から徒歩950m、約12分だ。竜宮城を思わせる朱塗りの楼門が名物で、東京駅のデザインで知られる辰野金吾により設計され、1915(大正4)年に落成した。現在、楼門は国の重要文化財に指定されている。同楼門に隣接して共同浴場があるほか、多くの温泉宿もあり保温性に富んだ弱アルカリ性の湯が楽しめる。

↑楼門口と呼ばれる北口の駅舎。在来線はこの駅舎側の高架上にある。武雄温泉の中心までは1km弱ほど

 

武雄温泉駅の南口は御船山口とも呼ばれる。駅から車で5分ほどの距離にある御船山楽園(みふねやまらくえん)にちなむ。御船山楽園は佐賀藩の領主によって造られた庭園で、ツツジやモミジの名所としてよく知られている。

 

【西九州新幹線開業④】嬉野温泉に初の鉄道駅が誕生する

武雄温泉駅から10.9km、列車は武雄トンネル(1380m)、三坂トンネル(1400m)などのトンネルを抜けて次の駅の嬉野温泉駅(うれしのおんせんえき/住所:佐賀県嬉野市嬉野町大字下宿甲)へ到着する。

 

新しい駅は嬉野温泉の北東にあたる場所に設けられ、嬉野市初の鉄道駅になる。

↑嬉野温泉駅の駅舎は駅前ロータリーの整備が進む。嬉野温泉の中心部からは約1.7kmの距離があり歩くのはちょっと厳しそうだ

 

嬉野温泉は日本三大美肌の湯にも上げられ、佐賀県内では武雄温泉とともに県を代表する温泉地として人気が高い。これまで武雄温泉駅からバスで約30分と、鉄道+バスの乗り継ぎが必要だったが、鉄道駅の新設で晴れて嬉野温泉の玄関口が誕生する。とはいえ、新駅から温泉の中心地にある「シーボルトの湯」までは徒歩で22分、約1.7kmと、やはりバスかタクシーの利用が一般的になりそうだ。

 

【西九州新幹線開業⑤】最も展望が楽しめる新大村駅付近

嬉野温泉駅から次の新大村駅の間で列車は佐賀県から長崎県へ入る。両駅の間で山越えをすることもあり、新設されたトンネルも多い。

 

俵坂トンネル(5705m)、彼杵(そのぎ)トンネル(2075m)、千綿(ちわた)トンネル(1632m)、江ノ串トンネル(1351m)といった具合にトンネルが連なる。最後のトンネルを抜ければ、眼下に青い大村湾が進行方向右手に見えてくる。新幹線はしばらく大村市内の平野部を走る。右手に大村車両基地を見たら間もなく新大村駅へ到着となる。

↑眼下に大村湾が見えるエリア。同路線で最も眺望の良いポイントとなりそうだ。大村湾上には長崎空港を離発着する飛行機も望める

 

新大村駅(住所:長崎県大村市植松3丁目)の開業とともに、並走する大村線にも新駅が設けられる。新大村駅は既存の大村線の諏訪駅の北側1.2kmほどの距離に生まれる。新幹線開業後は新大村駅と、その北に造られた新幹線の大村車両基地付近にも「大村車両基地駅」が設けられる予定で、大村線の諏訪駅〜松原駅の間に既存の竹松駅以外に新駅が2駅できてより便利になる。

 

ちなみに、従来の大村駅は新大村駅から南へ約3kmの距離にあり、また大村湾上にある長崎空港も、約5kmの距離となる。どちらへも新大村駅前から路線バスが走ることになるのだろう。

↑国道444号沿いにできる新大村駅。同駅舎は東側を向いているが、西側を大村線が並走、ホームも設けられる

 

新大村駅で連絡する大村線は大村湾沿いに走る風光明媚な路線だ。新大村駅から北へ4つめの駅は千綿駅(ちわたえき)で、ホームの目の前が大村湾という風景が素晴らしい駅だ。新幹線開業後にはより便利になりそうで、同駅を訪れる観光客も増えそうだ。

↑大村線の新大村駅から4つめの駅・千綿駅。夕暮れ時は、大村湾越しに夕日が見え美しい

 

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波穏やかな大村湾を眺めて走るローカル線「JR大村線」10の秘密

 

【西九州新幹線開業⑥】駅ホテルの開業で大きく変わる諌早駅

新幹線は新大村駅を発車すると左にカーブ、木場トンネル(2885m)、鈴田トンネル(1756m)を越え右カーブして諌早駅へ入っていく。

 

諌早駅では在来線の大村線、長崎本線と連絡する。さらに島原半島へ向かう島原鉄道の起点駅でもある。新幹線の開業に向けて諌早駅は、橋上駅舎となり、新幹線口にもなる西口に新たな駅舎が設けられ、さらに諌早市の玄関口となる東口の造りも大きく変わった。東口には駅舎とならびホテル、マンションが建ち並び、賑やかに。駅前ロータリーも整備されて、長崎駅とならぶ県内交通の拠点となる。

↑諌早駅の東口。駅の入口は写真の左下となる。駅舎と並び新しいホテルや、マンションが建てられた

 

一方、接続する長崎本線は同駅の区間では非電化となる予定で、ちょっと寂しい一面も(詳細は後述)。新幹線開業という華やかな話題ばかりとはいかない難しさも垣間見える。

 

諌早駅の先で、新幹線と長崎本線とわずかな区間ながら並走する。このあたりは、西九州新幹線も国道207号から良く見える。現在は885系特急形電車で特急「かもめ」が運行されているが、その姿も、新幹線開業日前日の9月22日が見納めとなる。以降、同区間は、非電化区間となりディーゼルカーが走る予定だ。

↑諌早駅の0番線行き止まりホームから発車する島原鉄道線。路線を開設して111年という老舗の鉄道会社でもある

 

↑長崎駅〜諌早駅間を走る試運転列車。諌早駅近くでは長崎本線が高架下を走る(※同写真は分かりやすくするため合成しました)

 

【西九州新幹線開業⑦】西へ大きく移動した新しい長崎駅

諌早駅〜長崎駅間は西九州新幹線の中で最も険しい区間となる。そのため長いトンネルが続く。諌早駅側から久山トンネル(4990m)、経ヶ岳トンネル(1930m)、新長崎トンネル(7460m)といった具合で、新長崎トンネルを抜ければ、間もなく長崎駅へ到着となる。

↑高架化された長崎駅。西口側に在来線の長崎本線の線路がある。長崎本線、大村線を走るYC1系が並ぶ様子が見えた

 

長崎駅へ5年ぶりに訪れて驚いた。これまでの長崎駅は地上駅で、駅前を出ると、長崎電気軌道の長崎駅前電停があったのだが、新たな駅は2020(令和2)年3月28日に西へ150mほど移動し、在来線も高架となっていた。この高架化により在来線の長崎本線の4か所の踏切も閉鎖された。

↑2020年3月まで使われた旧長崎駅。駅の改札口は地上部にあった(左上)。併設のショッピングモールなども再整備が進められていた

 

すでに高架化された駅の下には在来線と新幹線の改札口が用意され、さらに「長崎街道かもめ市場」という名称の大きな土産物街が営業を始めていた。

 

博多駅から長崎駅へはリレー列車+西九州新幹線で、最速1時間20分(武雄温泉駅での乗換え時間も含め)で到着する。現在よりも30分短縮となる。また新大阪〜長崎駅間は3時間59分と30分短くなる。途中の新大村駅や諌早駅、長崎駅と長崎県内の主要駅は新幹線開業の恩恵を受けることになりそうだ。

↑整備が進められる長崎駅東口。これまで駅があった付近の再開発が進められている。路面電車の駅前電停からは右の仮設通路を利用する

 

【西九州新幹線開業⑧】並行する在来線も大きく変わる

西九州新幹線の開業により変わる在来線の変更点もチェックしておきたい。変わるのは長崎本線で、路線の中でも大きく変わるのが肥前浜駅(ひぜんはまえき)〜長崎駅間67.7kmだ。同区間は非電化区間となる。同区間は現在、特急「かもめ」が走っているが、同列車は廃止となる。一方で、肥前浜駅の隣駅、肥前鹿島駅と博多駅を結ぶ特急「かささぎ」が運転される。

 

佐賀と長崎を結ぶ鉄道路線は当初、大村経由で設けられた。開業は1905(明治38)年4月5日までさかのぼる。肥前山口駅〜長崎駅の現在の長崎本線が開業したのは1934(昭和9)年12月1日と、かなり後のことだった。

 

地図を見ると分かるが、沿線には有明海に面した鹿島市以外に大きな町はない。よってJR九州としては、長崎へのメインルートの役目を終わらせ、同区間の路線を非電化にし、気動車を走らせるという選択をした。

↑2018(平成30)年にリニューアルされた肥前浜駅。新幹線開業後は電化・非電化の境界駅になる

 

博多〜佐賀・肥前鹿島間を走る特急「かささぎ」は上り9本、下り8本を運転の予定で、一部の「かささぎ」は門司港・小倉まで走る。また電化・非電化の境界駅となる肥前浜駅では、同一ホームでの電車と気動車列車の対面乗換えが行われるとしている。

 

さらに、佐世保線を走る特急列車の変更も行われる。現在、783系で運行している特急「みどり」は上下32本中、10本が885系で運行となり、時間も短縮され博多〜佐世保間を最速1時間34分で結ばれるようになる。

 

【西九州新幹線開業⑨】沿線からN700S「かもめ」を撮った印象

訪れた7月1日は試運転電車が1時間に1本の割合で運転されていた(日により異なるので注意)。

 

ここではN700S「かもめ」の写真撮影のポイントに関しても触れておきたい。筆者は駆け足で巡ったため、ベストポイントで抑えられたかは疑問である。開業後に再び訪れ、落ち着いて撮影できたらと思う。一応、駆け足ながらと前置きをしつつ、撮影地の印象に関して触れておきたい。

↑武雄温泉駅〜嬉野温泉駅間で。俯瞰するポイントでは、写真のように架線が車体を遮る場所も多く、なかなか撮影が難しい路線と感じた

 

巡った感想としては、同じ九州を走る九州新幹線の印象に近いように感じた。九州新幹線では、線路よりも高い位置に立って見下ろす俯瞰(ふかん)するポイントが多い。西九州新幹線も同様で、撮影可能な場所は、トンネルの出入り口の左右が大半となる。西九州新幹線でトンネルの外に出る高架部分は地上よりもかなり高い位置を走る区間が多い。トンネルの出入り口付近は傾斜地が大半で、近づける場所が限られる。私有地にはもちろん入るわけにはいかず、大概が公道からの撮影となる。

 

他の区間と比べて平坦な地形で、地上を走る区間が長い大村市内には撮影できる場所がいくつかあった。しかし、一部は民家に近い場所があり、そのようなポイントでは同線を造った「鉄道・運輸機構」の名で「この場所で撮影禁止」といった貼り紙もされていた。

 

北海道新幹線のように、民家も少なく観光スポットとして新幹線が見える展望台を造っている例もあるが、西九州新幹線の沿線は人里離れた場所がないだけに、撮影する難しさも感じた。

 

【西九州新幹線開業⑩】帰りは特急「みどり」に乗車してみた

長崎本線の特急「かもめ」は廃止されるものの、博多駅から同じ長崎県内の佐世保駅まで走る特急「みどり」は、新幹線開業後も「みどり(リレーかもめ)」および、博多駅〜早岐駅(はいきえき)間は特急「ハウステンボス(リレーかもめ)」と連結して走る。

 

西九州新幹線の取材ルポの帰り道、佐世保駅から特急「みどり」を利用した。乗車したのは17時42分発の博多駅行き。平日の金曜日夕方発ということもあり、どの駅からどのぐらい乗降客があるか気になった。一部は西九州新幹線の開業後の新幹線「かもめ」や「リレーかもめ」の乗客とかぶると思う。

 

783系は西九州新幹線開業後も走るとされている。車両中央に乗降口がある独特のデザインもなかなかユニークだ。さて、佐世保駅から筆者は指定席の確保を目指したものの、窓側はとれず、通路側の席に座った。ちなみに783系特急「みどり」は4両編成で、7・8号車の2両が自由席、6号車が指定席、5号車が半室グリーン席、半室が指定席となる。自由席は佐世保駅から混みあっていて、ほぼ満席となった。一方、佐世保駅からの指定席の乗車率は3割ぐらいだった。

 

早岐駅では特急「ハウステンボス」の連結作業はなかったものの、進行方向を変えて折り返すこともあり8分間停車する。以降、磁器の町・有田に近い有田駅、武雄温泉駅と停車するが、指定席の乗客は1〜2割増えた程度。乗客の増減よりも気になったのは、佐世保線は単線区間が多く、特急列車でも途中駅で行き違い列車の待ち合わせのために、たびたび停車することだ。

↑博多駅〜佐世保駅間を走る特急「みどり」。「ハウステンボス」と連結せず、「みどり」単独で走る列車も多い

 

特急「リレーかもめ」が走る佐世保線の区間は肥前山口駅(新幹線開業後は「江北駅」と改名予定)〜武雄温泉駅間の5駅(起終点駅を含む)区間のみだが、本数の増加に合わせて途中の大町駅〜高橋駅間の複線化工事が進められ、2月27日から複線の利用が始まった。だが、同5駅区間すべて、複線化されていない。肥前山口駅から先は長崎本線と合流、複線区間となり列車もスピードアップした。

 

乗降客の増減だが、肥前山口駅まで特急「みどり」の指定席は5割埋まるぐらいだったが、佐賀駅に到着して、乗客が急に増えた。筆者が座った席の窓側も佐賀駅で着席がある。この日に乗車した「みどり」の佐賀駅発車は18時56分、博多駅には19時34分に到着する。佐賀駅から特急に乗れば40分かからず博多に着いてしまう。要は佐賀県の県庁所在地である佐賀市は、福岡方面からの通勤・通学圏でもあったのだ。

↑佐賀市の玄関口、佐賀駅。福岡の博多駅までは特急で40分弱の距離で、通勤・通学で長崎本線を利用する人も多い

 

九州新幹線と長崎本線は新鳥栖駅(しんとすえき)で連絡する。西九州新幹線は、車輪の幅が調整できるフリーゲージトレイン(軌間可変電車/FGT)を、狭軌の長崎本線と標準軌の西九州新幹線を通して走らせる計画で始まった。ところが試作車で、技術的な問題点が見つかり、頓挫してしまった。

 

武雄温泉駅〜長崎駅は西九州新幹線としてフル規格の新幹線が走る。新鳥栖駅〜武雄温泉駅間はどのような規格で新幹線を走らせるか、結論は出ておらず工事も進められていない。佐賀県は元々、フリーゲージトレインを走らせることで肥前山口駅〜武雄温泉駅間全線の複線化を希望していた。ところが計画が頓挫し、将来が見通せないこともあり、一部区間の複線化工事のみで工事が停止してしまっている。

 

国としては西九州新幹線の全線フル規格化という思惑がある。一方の佐賀県としては現状の特急で十分で、フル規格化により県内の在来線を不便にしたくない、という思いもあるのだろう。応分の費用負担を求められていることもあり、佐賀県は賛成する気配を見せていない。

 

西九州新幹線の沿線を訪ね、帰りに特急「みどり」に乗車してみて、難しい問題が山積し、結論が出しにくいように感じたのだった。