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2022/8/31 11:45

スバル「レヴォーグ」。これだけ速くて快適で気持ちいい実用車など、他にあるのか?

2021年11月、スバル「レヴォーグ」にハイパフォーマンスモデル“STI Sport R”が追加された。新開発の2.4L直噴ターボエンジンを搭載する同モデルは、スバルのフラッグシップスポーツ「WRX STI」と共通点があるのか? 同ブランド内での立ち位置と走行性能の真価を探る。

 

【今回紹介するクルマ】

スバル/レヴォーグ

※試乗グレード:STI Sport R

価格:310万2000円~477万4000円(税込)

 

まずはスポーツモデルWRX STIについて語ろう

スバルのスポーツモデルの頂点に君臨するのは、WRX STI(インプレッサWRX STIを含む)である。伝統の水平対向ターボエンジンに6速マニュアルトランスミッションを組み合わせ、サスペンション、ブレーキ、空力など、あらゆる面で究極の走りを目指したモデルだ。内外のマニアの間では絶対的な人気を誇ってきた。

 

ところが、2021年に登場した新型WRXには、その「STI」がなく、今後も出ないらしい。世界中のスバルファンが、「なんてこった!」と頭を抱えている。WRX STIは世界的に人気があるだけに、マニアックなスポーツモデルにもかかわらず、かなり台数が出る。そのわりに燃費が非常に悪く、世界中の燃費規制に引っかかる。エンジン(EJ20型)の基本設計も古く、排ガス規制もキビシイ。これ以上の延命は不可能だったようだ。

 

その代わりと言っては何だが、以前からあったWRXのAT(正確にはCVT=無段変速)バージョンであるS4には、これまでの2.0Lターボエンジンに代わって2.4Lターボエンジンが搭載され、CVTもスポーティな新型に更新された。

 

ただ、スペックを見ると、この2.4Lターボエンジン、以前の2.0Lターボエンジンより、馬力もトルクも低い。旧S4が300馬力/400Nmだったのに対して、新型は275馬力/375Nm。常に最高の走りを目指してきたWRXが、スペックダウンするってどういうことだ? 排気量を拡大したっていうのに信じられない! 堕落だ!

 

そのように思っていたが、実際に乗ってみて仰天した。この新型S4、めちゃめちゃパワルフなのである! どう考えても旧型より速い! いや、少なくとも速く感じる! 加えて、新開発されたCVT「スバルパフォーマンストランスミッション」が物凄くイイ! 普通に流していてもCVT特有の空回り感はまったくなく、ダイレクトな加速が楽しめるが、ひとたびスポーツ+モードに入れれば、自動的に8速ステップ変速に切り替わり、他のあらゆる変速機もかなわないほど、恐ろしく素早いシフトチェンジを行う。

 

実はこのシフトチェンジ、疑似的なもので、実際にはCVTのレシオを瞬間的に切り替えているにすぎないが、乗ったイメージはまるでF1マシン! 「クワーン、クワーン、クワーン」と快音を奏でながら、ウルトラ超速シフトアップを繰り返し、切れ目のない超絶加速をブチかましてくれる(ように感じる)。エンジンスペックは旧型より落ちているのに不思議だが、とにかく新型S4は、素晴らしく気持ちいいスポーツセダンだ。MTにこだわるマニアには物足りないかもしれないが、私は気持ちよければそれでいい。新型S4、最高だぜ!

 

が、新型S4にも欠点がある。それは、中高年にはサスペンションがハードすぎることだ。サスペンションのモード切替を「コンフォート」にしておけば問題ないが、「ノーマル」や「スポーツ」はあまりにも固すぎてツライ。つまりサスペンションだけ「コンフォート」に切り替えれば済む話だが、おっさんになると、それが面倒くさくなってくる。

 

スバルパフォーマンストランスミッションの超絶レスポンス

ところが! 同じエンジン/ミッションを積む、2代目レヴォーグ「STI Sport R」は、サスペンションが断然ソフトだという。レヴォーグのノーマルモデルは、1.8Lターボの177馬力。この「STI Sport R」は、新型S4と同じ2.4Lターボを積むが、サスペンションは基本的にノーマルモデルと同じらしい。気持ちよければそれでいいおっさんには、そっちのほうがいいかもしれない……。

 

実際乗って見ると、予想通りだった。エンジン/ミッションは超絶パワフル/超絶レスポンスのままだが、サスペンションはぐっとふんわりソフトなのだ。「うおおおお、これはイイ!」

 

今やWRX S4は、スバルのスポーツモデルの頂点。サスペンションをハードに固めて、サーキットでしっかりタイムが出るようにセッティングする必要がある。公道での快適性は二の次でも仕方ない。

 

しかしレヴォーグは違う。ステーションワゴンであるレヴォーグは、あくまで公道を快適に速く走るための実用車。サスペンションをむやみに固める必要はないから、あらゆるモードで快適な乗り心地を確保しつつ、2.4Lターボのスーパーパワーと、スバルパフォーマンストランスミッションの超絶レスポンスが味わえるのだ!

↑275PS、375Nmの圧倒的なパフォーマンスを発揮する新開発の2.4L直噴ターボエンジン。さらに、2.4Lエンジンに合わせて開発したスバルパフォーマンストランスミッションを搭載

 

欠点は、燃費が悪いことである。高速道路をゆっくり流しても、10km/Lを超えるのは難しい。日常使いで7km/Lくらい。しかもガソリンはハイオク指定。お財布には決して優しくない。しかし、それがなんだと言うのだ! これだけ速くて快適で気持ちいい実用車など、他にあるだろうか? お値段477万円。高いと言えば高いが、中身を考えればむしろ安いっ! コイツに乗っていれば、BMWの「M」やメルセデスの「AMG」に挑まれても怖くないぜ。

↑張り出しが強調された前後フェンダーが特徴。足回りはZF製の電子制御ダンパーを装備し、路面の状態や車体の動きをセンシングして、リアルタイムで減衰力を可変制御する

 

↑C字型のランプの意匠や六角形の“ヘキサゴングリル”

 

↑C字型のテールランプが目を引くリア

 

↑内装色はブラックとボルドーのツートン。そして思わずデカっと言ってしまいそうな11.6インチ大面積の縦型センターディスプレイ。ここではエアコンやナビの操作、車両の細かな設定などを行える

 

↑ドライブモードセレクトの操作画面。これは「STI Sport」系のグレードに備わる。「GT」「GT-H」系のグレードには、パワートレインの制御のみを切り替えられる「SI-DRIVE」が装備される

 

↑従来モデルより足元スペースが広くなったリアシート。座面長も18mm拡大し、USB電源は2口設けられている

 

SPEC【STI Sport R】●全長×全幅×全高:4755×1795×1500㎜●車両重量:1630㎏●パワーユニット:2387㏄水平対向4気筒直噴ターボ●最高出力:275PS/5600rpm●最大トルク:375Nm/2000-4800rpm●WLTCモード燃費:11.0㎞/L

 

撮影/阿部昌也

 

 

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