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2022/8/13 21:00

田んぼ&歴史+景勝地「秋田内陸縦貫鉄道」の魅力にとことん迫る

【内陸線の旅⑩】トンネルを抜けると快適にスピードアップ

比立内駅から先の旅を続けよう。乗車したのは急行「もりよし3号」で車両は「秋田マタギ号」だった。急行列車にはアテンダントが同乗していて、沿線の案内が行われる。比立内駅から先は新しく造られた路線区間ということもあり、直線路が続き、また道路との立体交差か所も多い。直線区間にはロングレールが敷かれていて、列車も快適に走る。とはいえ、奥阿仁駅、阿仁マタギ駅と走っていくにつれ、上り坂となり列車のスピードも落ちる。

 

阿仁マタギ駅を発車して阿仁川を渡るとすぐに、同路線で最長のトンネルに入る。十二段トンネルと名付けられた5697mのトンネルで、途中までは勾配区間で、そこまで列車は重厚なエンジン音を響かせながら走っていく。

↑十二段トンネルを抜け、次のトンネルへ。この区間は直線区間でロングレールが使われていることもあり快適に走る

 

トンネル内のピークを越えると列車はスピードを上げて走る。直線路で、レールも継ぎ目が無いためにスムーズだ。トンネル内で、仙北市へ入る。仙北市内最初の駅は戸沢駅だが、急行列車は同駅を通過、次に上桧木内駅(かみひのきないえき)に停車する。このあたりの駅はホーム一つの小さな駅が多い。

 

戸沢駅から先は、渓流の桧木内川が路線と平行して流れるが、新しく造られた路線ということもあり、蛇行する川には複数の鉄橋が架けられ、スピードを落とさずに走っていく。車窓から渓流釣りを楽しむ人たちを眺めつつ、松葉駅(まつばえき)に到着した。

↑角館駅へ向かう急行列車。この先で、秋田新幹線(田沢湖線)の線路に合流する。左上は角館線の終点駅だった松葉駅

 

松葉駅は角館線の終点として1970(昭和45)年11月1日に誕生した。駅周辺には田園風景が広がり、ホーム一面で、短い側線があるぐらいの駅だ。田沢湖西岸まで最短で10km弱とそう遠くないが、今は公共交通機関がない。

 

【内陸線の旅⑪】秋田新幹線の線路が近づき並走、終点の角館へ

松葉駅付近でも桧木内川が流れるが、徐々に平野部が広がりを見せていく。

 

羽後長戸呂駅(うごながとろえき)〜八津駅間はこの路線の最後のトンネルと橋が連続する区間だが、ここを越えると田園風景が広がる区間に入る、民家が多く建ち並ぶ西明寺駅に停車したのち、羽後太田駅を通り過ぎれば、間もなく左手から1本の線路が近づいてくる。秋田新幹線(田沢湖線)の線路で、しばらく並走の後、終点の角館駅へ到着する。

↑角館駅を発車した普通列車の上り「秋田マタギ号」。この先、しばらく秋田新幹線の線路と並走して走る

 

仙北市角館は小京都とも呼ばれる町並みが残るところ。内陸線の駅もレトロな趣で造られている。JR東日本の駅舎とは別棟になるが、目の前に隣接しているので、乗換えに支障は無い。

 

時間に余裕がある時には、駅から1.5kmほどの武家屋敷通りを訪ねてみたい。徒歩で約20分の道のりながら、現在は、角館オンデマンド交通「よぶのる角館」(8時30分〜17時30分まで利用可能/運賃は300円)と呼ばれる交通サービスがある。

 

内陸線は列車本数が少ないだけに、どこで時間を過ごすか、事前に決めて乗ることをお勧めしたい。鉄道好きならば阿仁合駅へ。歴史好きの方は縄文遺跡の伊勢堂岱遺跡、もしくは角館の武家屋敷通りを訪れてみてはいかが。のんびり旅にぴったりの内陸線の旅となるだろう。

↑秋田内陸縦貫鉄道の角館駅。秋田内陸線の列車は専用の行きどまりホームに止まる(右下)。JR角館駅は、写真の右側に設けられている
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