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2023/2/3 20:30

ほしい装備は”全部入り”! 自転車の枠を超えたビアンキのe-Bike「E-OMNIA」

昨年登場したe-Bikeの中で大きな注目を集めたのがビアンキの「E-OMNIA(イーオムニア)」というモデル。価格が93万5000円と高価なことも話題になりましたが、その価格の理由やほかのe-Bikeと何が違うのかについて、実車を試乗しながら探ってみました。

↑ビアンキの「E-OMNIA」には2つのフレームタイプが存在しますが、今回乗ったのはクロスバイクのT-TYPE。価格は93万5000円(税込)

 

BOSCH製のハイパワーなドライブユニットを採用

e-Bikeの心臓部となるのはドライブユニット(モーター)とバッテリーですが、「E-OMNIA」にはどちらも最高峰のものが採用されています。ドライブユニットはBOSCH製の最高峰グレードとなる「Performance Line CX」を搭載。これはマウンテンバイクタイプのe-MTBにも採用されているもので、85Nmという高トルクを発揮します。バッテリーもBOSCH製では最も容量の大きい625Whのものが搭載されています。

↑クロスバイクタイプにはあまり採用されないハイパワーなBOSCH「Performance Line CX」ドライブユニットを車体中央に搭載

 

↑625Whの大容量バッテリーはフレーム内部に搭載され、スマートなルックスに貢献。最大170kmのアシスト走行が可能になっています

 

アシストモードの切り替えなどを行うコントローラーとディスプレイは、BOSCH製の最新「Kiox」を採用。スピードや残りの走行可能距離だけでなく、アシストの出力なども表示できます。走行履歴なども記録されるので、これまでにどのくらい走ったか、どのモードをよく使ったかなども把握することができ、メンテナンスにも役立ちます。

↑BOSCHの「Kiox」ディスプレイをハンドルの中央部に装備。カラー表示でビジュアル的な見やすい表示パターンも豊富です

 

↑アシストモードの切り替えなどを行うコントローラーは左手側のグリップ近くに装備されていて使いやすい

 

先進的な駆動機構を採用

強力なアシストをホイールに伝える駆動系も先進的です。一般的な自転車に用いられるチェーンではなく、ベルトドライブを採用。チェーンに比べて伸びが少なく、注油などのメンテナンスが必要ないのも利点です。変速機構は内装タイプとなっていて、停止中にも変速操作が可能。こちらもメンテナンス頻度が低いというメリットもあります。

↑駆動系にベルトドライブを採用。チェーンと異なり、注油しなくても伸びたり錆びたりする心配がありません

 

↑変速機構は内装式の5段。変速ショックが少なく精度の高いシマノの「NEXUS」が採用されています

 

フロントにはサスペンション機構を搭載。街乗りでも段差を越えたり、荒れた路面を走る際にはありがたい機構です。しかも、街乗り向けのスペックではなく、ROCK SHOX製の「RECON」というMTBにも採用されている高性能なもの。ブレーキは油圧式のディスクで、パワフルで重量のある車体をしっかりと制動することができます。

↑スプリング式ではなく軽量なエアー式のROCK SHOX「RECON」サスペンションをフロントに採用

 

↑重量のあるe-Bikeでは必須の装備といえる油圧式のディスクブレーキは、信頼性の高いシマノ製でディスク径は180mm

 

バイクに近いような構造を採用

フレームはアルミ製ですが、かなりがっしりした作り。バッテリーを内蔵する部分だけでなく、リアホイールを保持する部分も太くて強力な駆動力をしっかりと受け止める設計となっています。リアキャリアまで一体となった作りで、従来の自転車からエンジン付きのバイクに近づいていっているように感じます。

 

また、バッテリーから給電されるライトもフレームに内蔵。フロントだけでなく、リアのライトも内蔵されていて、夜間の走行での安心感を高めています。

↑太いフレームの前面に大型のライトを内蔵。かなり明るいライトで、デザイン的にも先進的です

 

↑リアのキャリアも一体化した作りで、その部分に赤く光るライトを内蔵。リアタイヤを支えるフレームはバイクを思わせる太さ

 

e-Bikeの中でも先進性を感じさせる乗り味

「E-OMNIA」T-TYPEの重量は約32kg。この種のe-Bikeの中でもかなりの重量級です。いくらパワフルなドライブユニットを搭載しているとはいえ、走りにどう影響するのか? と試乗前は危惧していました。ただ、実際に走ってみると車体の重さは全く感じません。アシストは強力ですが、ガツンと車体が押し出されるような唐突感は皆無。スムーズに速度が乗っていきます。

↑ペダルを回しているだけでスムーズに加速していく感覚はe-Bikeならでは。車体の重量は全く気になりません

 

坂道での登坂能力を確認するため、角度のある登り坂も走ってみました。e-MTBにも採用されるドライブユニットなので、あまり不安は持っていませんでしたが、実際に登ってみて感じたのはアシストのフィーリングが自然なこと。グイグイ登って行くというより、ペダルを回していると勝手に登って行ってくれるような感覚です。

↑結構角度のある坂なのですが、立ち漕ぎはおろか強くペダルを踏み込む必要もないくらいパワフルに登って行きます。自分がパワーアップしたような感覚!

 

もう1つ感じたのはコーナーリングでの安定感。29インチで太めのタイヤを装備していることもありますが、ここでは車体の重さとフレームの剛性が効いているようです。クロスバイクにありがちな細身のタイヤと違い、タイヤがしっかりと路面を掴んでくれているような感覚。重量がある車体であることも関係していますが、バイクでのコーナーリングに近いようなフィーリングです。この辺はほかのe-Bikeではあまり感じたことのないものでした。

↑太めのタイヤがしっかりと路面をグリップしてくれている感じ。フロントフォークもしっかり沈んでいて、バイクに近い感覚です

 

筆者は、それなりに多くの種類のe-Bikeを乗ってきましたが、「E-OMNIA」の走行フィーリングはなかなか似ているものが思いつかないものでした。これまでのe-Bikeは自転車にアシストをプラスしたような感覚のものが多かったのですが、「E-OMNIA」ははじめから重いドライブユニットやバッテリーありきで設計されているように感じます。見るからに剛性の高いフレームも、人力で走る自転車では重すぎるでしょうが、その重みも逆に利用して安定感を高めているような乗り味。e-Bikeのステージをさらに進めるような先進性を感じました。

 

必要な装備が“全部入り”と言えるような装備の充実度と、先進的な乗り味。使い勝手や快適性も高いことを考えると、高価な車両価格も納得できるような完成度でした。購入できる人は限られるかもしれませんが、その乗り味は一度味わっておいて損はないものだと思います。

 

撮影/松川 忍

 

 

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