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2023/5/14 11:30

「らしくないけれど…ありがたい」アルファロメオ「トナーレ」、ファンが抱える複雑な心情

アルファロメオらしくないが、アクセルを踏んだときのレスポンスがステキ

1.5L4気筒エンジンのもうひとつの大きな特徴は、ターボに可変ジオメトリータービン(VGT)を採用していることだ。タービンの排気流路を変化させ、低速側のトルクとレスポンス、および高速側の出力を両立させるメカで、ガソリンターボエンジンではかなりゼイタクである。

 

低速域では、DCTが多少ガクガクするくらいで、走りはまったく平凡かつ安楽だが、首都高に乗り入れてクルマの流れに乗ると、トナーレは水を得た魚のように躍動をはじめた。

 

「どうせマイルドハイブリッドだろ」とナメていたが、ハーフスロットルでの反応が実にすばらしい。反面、アルファロメオらしいエンジンを回す快感はまったくない。レッドゾーンはなんと5500rpmという低いところから始まっていて、「こんなのアルファロメオじゃない!」という思いも沸く。

 

しかし実際の走行では、アクセルを踏めば車体は即座にググッと前に出て、実にレスポンスがいい。アクセルを全開にしても大した加速はしないが、日常的に使う領域では非常に俊敏で速く感じる。

↑低回転時からトルクが駆動し、高回転までスムーズに伸びていくため、爽快な加速を実現しているそうです

 

ハンドリングは実に素晴らしい

パワーユニットが縁の下の力持ち的なのに対して、ハンドリングは手放しでほめられる。とにかくタイヤの接地感がすばらしく高い。アルファロメオと言えば、いつテールがすっ飛ぶかわからない、頼りない操縦性が“味わい”だったが、トナーレのハンドリングは頼りがい満点。自信満々にコーナーに入ることができる。

↑コックピットは黒を基調としたデザイン。触感にもこだわり、上質な素材を採用しています。また、中央には10.25インチのタッチ対応インストルメントパネルを搭載

 

ステアリングは適度にクイックでアルファロメオらしいが、サスペンションは当たりが優しくしなやかで、首都高のジョイントを超えてもショックは最小限。カーブを曲がるのが実に気持ちイイ。ロングドライブでも疲れ知らずで走ることができそうだ。

↑優れた前後重量のバランスを利用して、トルクへの伝達とコーナーにおけるハンドリングの最適化を実現しているそうです

 

価格は524万円(Tiモデル)。美点は主にハンドリングなので、かなり割高に感じてしまう。国産SUVなら、トヨタ「ハリアーハイブリッドS」が371万8000円〜で買える……。

 

しかしトナーレは、欧州ではそれなりに売れて、アルファロメオブランドを守ってくれるだろう。アルファロメオファンとしては、それだけでありがたいという思いが沸いた。

 

SPEC【Ti】●全長×全幅×全高:4530×1835×1600mm●車両重量:1630㎏●パワーユニット:1468cc直列4気筒ターボエンジン+モーター●エンジン最高出力:160PS/5750rpm[モーター:20PS/6000rpm]●エンジン最大トルク:240Nm/1700rpm[モーター:55Nm/200rpm]●WLTCモード燃費:16.7㎞/L

 

撮影/清水草一

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