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2018/6/7 10:00

日用品が毎週2回、すべて入れ替え! オージーの心をわし掴むドイツのスーパー「アルディ」

オーストラリアでいま人気上昇中のドイツ資本スーパーマーケット「アルディ」。オーストラリアでの開業は2001年ですが、すでに大手の競合を追い抜きつつあります。そんなアルディがどのようにビジネスを成功させているのか、その経営手腕を探ってみました。

 

従来のスーパーとは違うビジネス形態

スーパーマーケット「アルディ」がオーストラリアで話題に上り始めた数年前、筆者は好奇心で足を運んでみたことがあります。ところが当時は、店内をざっと一周しただけで、買い物はゼロ。というのも、それまでのスーパーマーケットのイメージとはひどくかけ離れていて、素通りしてしまったからです。

 

「見たことも聞いたこともないようなブランド品」が並ぶ棚、箱から出されず棚に置かれた商品(箱は品物が取り出しやすいよう切り開いてある)、商品をレジまで運ぶ長いコンベヤー、そして店の中央に置かれた日用品の数々――。アルディでは店内のありとあらゆるものが、一般的なスーパーマーケットとは違っていました。それからしばらくはアルディへ行きませんでしたが、知人友人から高評判を聞いて、再度足を運ぶことに。2回目にして「何とユニークなスーパーマーケットなんだ!」と思いました。

では、そんなアルディにおいて経営の秘密はどこにあるのでしょうか。まずは何と言っても、価格が安いこと。アルディのオリジナルブランドであれば3割くらいは安くなっていますし、野菜や肉などの生鮮食品も、品物によっては半額に近い安値だったりします。もちろん競合店で売られているブランドも置いてあるのですが、例えば、有名ブランドのパンテーンシャンプーなどはおよそ半額ほど。

また、ここで注目したいのが、あまりメジャーではないメーカーの品。いつもの感覚であれば少々抵抗を感じたりするのですが、アルディは厳選なテストを行っていて「保証付き」のラベルを全商品に貼っています(上の写真)。不満があれば、期限付きではあるものの返却が可能。つまり、アルディ側でこれだけ安心対策を施しているおかげで、消費者は抵抗なく買えるというわけなのです。

そして値段が安い理由のひとつに、ブランドの独自化や流通の合理化だけではなく、店舗自体の「運営の合理化」が挙げられます。その1つが販売品の管理。競合店では商品を箱から一つひとつ出し陳列していますが、アルディでは箱から出さず棚に置いてあるので、陳列の工程が省けるうえ、箱数による在庫管理ができます。

さらに合理化をはかっているのが「レジ」。レジにある長いコンベヤーは、レジでの所要時間を減らし、スムーズに進むことができます。顧客は並んでいる間に、商品をコンベヤー上に乗せるようになっており、レジ担当者がトローリーから商品を出す時間が省けるのです。そのうえ、レジ通過後の袋詰めはパッキングエリアでセルフ。これも当然、時間の節約へつながります。ちなみに買ったものを入れる袋は有料なので、利用者は普段、買い物バッグを持参しています。

ただし、これだけでは他店でもよく見かけますが、アルディで一番大きく異なるのは、「毎週2回総入れ替え」となる日用品です。「毎週水曜日と土曜日に半分ずつ入れ替える」という言い方が正確かもしれません。毎回それぞれテーマを設けてあり、例えば、夏が近づくとキャンプ用品、新学期が始まるころであれば学用品といった具合です。

 

支持される「見える化」とフレンドリーな接客態度

アルディは、先に紹介した日用品における販売促進にはチラシを大いに活用しています。様々なところでコストカットしていますが、ことチラシに関しては、紙のチラシを大々的に取り入れ、顧客への視覚的訴求に力を入れています。チラシでは翌週分の販売品も紹介され、店へ行く人はこのチラシを見て、通常の買い物、そしてお買い得品を探すことを楽しみにしている人も多いのです。商品によっては早朝から行列になることもあるほど。

さらに顧客から支持を得ているのが「フレンドリーな接客態度」です。アルディでは社員が幸せでなければ顧客を喜ばせることはできないと考え、社員教育に力を入れています。日本では接客に関してすでに高いレベルに達していますが、オーストラリアではまだまだ。国が違えど、笑顔でフレンドリーに接してくれる店員がいるお店は気持ちがいいですね。