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2018/7/1 10:00

【長く使うということ=ステータス】 ロシアの修理屋さんたちが教えてくれる大切なこと

日本には「もったいない」という言葉があります。ケニア出身の環境保護活動家である、故ワンガリ・マータイさんが「Mottainai」を唱えたことから、この言葉の意義を再認識された方も多いのではないでしょうか。

 

実はロシア国民も、ソビエト連邦時代にモノ不足だったこともあり、モノをとても大事にします。「修理して使う」という精神が国民全体に根付いており、そんな修理文化が浸透しているロシアでは修理屋さんを利用するのは当たり前。今回はその価格やサービスをロシア流のMottainai 精神と共に見ていきたいと思います。

 

町中にある小さな修理屋さん

ロシアには、色々な修理屋さんの小店舗が日本のコンビニと同じくらいの頻度で存在し、大きなショッピングモールにも必ずと言っていいほど入っています。修理屋という意味の「Дом Быта(ドーム ビータ)」 呼ばれる小さな修理屋さんでは、平均2人くらいの専門修理工がいて、服の裾やサイズ直し・時計・靴の修理や合鍵作成といった、日本の修理屋でも見られるサービスを提供しています。修理完了までの時間は大体2~5日。

 

価格も良心的で、靴底の張替えなら400ルーブルほど(日本円で約800円)。ズボンの裾直しなら約200ルーブル(日本円で約400円)。近年日本では、「新しいものを買ったほうが早い」という意見も多く聞かれますが、すべてではないにしても、長く大事に使っていくと味が出てくるものもあるように思えてなりません。

 

大人気のオンライン登録サービスと「1時間お父さん」

オンラインでフリーランスの修理工が探せるサイトもあります。「PROFI.RU(プロフィー・ドット・ル)」では、修理工たちが自分の顔写真や持っている資格、そのサイトで受け持った仕事の写真などをアップしており、利用者は自分が気に入った修理工と連絡を取り、仕事を依頼することができます。

 

こちらは家電や玄関ドアの修理など、サイズが大きいものにも対応しています。利用者は修理完了後に修理工のサービスを評価する仕組みになっているので、他の人もそれを参考に探すことが可能。大きな会社に頼むより安く、対応も早いのがフリーランスの修理工の魅力のようです。

 

また、「муж на час(1時間のお父さんサービス)」も人気です。日本でも、かつて家の修理はお父さんの仕事だった時代がありましたが、このサービスは、そんな「なんでも修理できるお父さん(修理工)」を呼べるものなのです。

 

このサービスは24時間対応で、会社に登録された100を超える修理のスペシャリストたちが電話1本で駆けつけてくれます。水道トラブルやテレビの設置、浄水器の交換や修理など、難易度が比較的低い修理だけど自分ではできず、早く対応してほしいという場合に便利なのだとか。「1時間のお父さんサービス」というネーミングもとても親しみやすく、ユニークですよね。

日本人も学ぶべきロシアのMottainai

「お父さんが生まれた年に買った家具だから大切にしている」「これはお父さんと同じ年だ」「おじいさんがソ連の闇市で買って来たものだ」とか、ロシアでは家族が集まった際、修理しながら長く使ってきたものの話題で会話に華が咲くことがあります。長く大切に使われてきたものは家族の長い歴史とともに歩んできたので、世代が異なっていても、共通の話題になりやすいと言えるでしょう。

 

そんな家具などの前で家族写真を撮ったり、昔を懐かしんだり、おばあちゃんが着ていた毛皮のコートを孫がリメイクして着たり、そんなことが日常的な風景のようになっています。ものを大切にする文化が根付いているうえに、長く使い続けることが評価される国でもあるロシア。このような価値観が修理文化を守り、受け継がれていく要因の一つでしょう。

 

ものを大切にする、大切にしたいという気持ちをしっかりサポートする環境がロシアにはあります。ソビエト崩壊やルーブルの暴落など、不安定な状況を乗り越えてきた国民だからこそ、着実に育むことができたMottainai精神なのでしょう。

 

少しずつ景気が良くなってきたいまも、古いものをリサイクルして使う事を「モード」として、かっこよいと感じられる美意識は非常に学ぶべきところが多いです。日本は「もったいない」という言葉を生みましたが、ロシアのMottainai精神は現代の日本人にも共感できるところがあるのではないでしょうか。