空前のキャンプブームが吹き荒れる昨今、世の中には数多くのキャンプ道具が登場しフリークたちを喜ばせている。今回、ここで紹介する「覇鐵鉄板【嗜】」もキャンプ関連のアイテムではあるものの、自宅でも楽しめる注目の逸品だ。
金属加工のエキスパートが手がけたギミックの数々
アウトドアは非日常を体験する場所であり、雄大な自然の中でノンビリと過ごす時間も格別だ。特にここ数年はコロナ禍の影響もあり、閉鎖された空間から抜け出したいという欲望から解放してくれるキャンプが爆発的な人気を博している。YouTubeでも数多くの芸能人がキャンプ動画をアップしたことで、ブームに拍車をかけ、キャンプ産業は右肩上がりの売り上げを記録。そのなかでも注目を集めているのが「鉄板」と呼ばれるアイテムで、最近は100円ショップまでもが独自の商品をリリースしているほどだ。
この鉄板とはその名の通り “鉄の板” であり、キャンプ料理には欠かせない調理器具なのだが、シンプルな構造ゆえに全てが同じように見えてしまう。しかし、そこには細かな工夫と共に素材の善し悪しが大きく影響し、蓄熱性や熱伝導率が重要になることはあまり知られていない。
今回紹介する「覇鐵鉄板【嗜】」は、福井県鯖江市に拠点を構える金属加工のエキスパート「大成精工株式会社」が製作したものだ。周知の通り福井県鯖江市は日本における眼鏡生産地として知られ、それだけに金属加工に長けた企業も多い。同社も精密金属加工を専門に行う企業であり、「覇鐵鉄板【嗜】」には緻密な加工技術と金属の特性を利用したギミックが満載されている。
商品の構成はメインの鉄板と鉄板を支える五徳、スクレーパーを兼ねた2本のハンドル、収納袋がセットとなる。鉄板には橋や船にも使用される一般構造用圧延鋼材のSS400が用いられ、組み立て式の五徳には耐熱性、耐腐食性に優れ、熱伝導率の低いステンレス素材であるSUS304を使用。パーツにより最適な金属素材を使い分けているのは金属加工のプロならではの設計だ。

鉄板サイズは210×148㎜とコンパクトだが、6㎜の厚みを確保しているのは特筆すべきポイント。重量は約1.4キログラムと決して軽量ではないが携帯性に劣るほどではない。厚さ2㎜の組み立て式のステンレス製五徳は組み立て寸法が207.3×148㎜となり、鉄板を乗せた状態でも高い安定感を発揮する。鉄板の形状を表現するならば、B6サイズのタブレットをイメージしてもらえば分かりやすいと思う。
実際に「覇鐵鉄板【嗜】」を手にして感じたことは、ソロキャンプに最適なサイズ感であることだ。ファミリーキャンプで活躍する大きさではないが、孤独を楽しむソロキャンパーには嬉しい限り。また、鉄板には金属加工メーカーとしての技術が盛り込まれ、鉄板の表面は1㎜の深さで切削することで額縁のような形状を実現。この耳の部分が絶妙で、肉汁や脂が鉄板の外へと流れ出すことを防ぎ、ハンドルを固定する部分に切られた片側の溝からは余分な脂を排出できるように設計されている。

また、裏側には同梱の専用五徳だけでなく、他社のバーナーやコンロの五徳をくわえ込むために16本の溝が刻まれている。緻密にして考えられた構造は金属加工のエキスパートならではの技術力であり、その恩恵はアウトドアでありがちな “肉を裏返そうと思ったら五徳から鉄板が滑り落ちてしまい焼いた肉が台無し…” という大惨事を防いでくれそうだ。

実焼! そして実食! コンパクトながらも本格派、「覇鐵鉄板【嗜】」の実力とは?
さて、ここからがいよいよ本番。アウトドアで重宝することは理解できたのだが、この「覇鐵鉄板【嗜】」は「自宅でも楽しめる」というのが大きな売りにもなっている。実際、室内ではアウトドア用のシングルバーナーは使用できないため、今回はアルストことアルコールストーブを使って肉を焼いてみることにした。まずは、鉄板を使う前にはシーズニングと呼ばれるお手入れが必要となり、鉄板を良く洗ってから乾燥させ、亜麻仁油やえごま油などの食用油を薄く塗り、その後に鉄板全体に熱を加える。この工程を2~3ほど繰り返せばシーズニングは完了だ。作業を終えた鉄板は漆黒へと変化を遂げ、まさにクロガネ(鉄)へと姿を変える。少しばかり面倒な作業ではあるが、自分だけの鉄板を育てると思えば面倒な作業も楽しみに変わるはずだ。シーズニング方法については、ナナ福神公式Webサイトにて動画で確認することもできるので、ぜひ参考にしてみてほしい。
使用の際には、まずステンレス製の五徳を組み立てて鉄板を乗せる。アルコールストーブは通常のシングルバーナーなどと比べて火力が弱いと言われるが、果たして肉は美味しく焼けるのだろうか……。
早速アルコールストーブを設置し、鉄板に熱が加わった状況で牛脂を乗せて肉を焼いて行く。すると、火力が弱いというアルストの弱点をカバーするように、蓄熱性に優れた鉄板は常温の肉を乗せても温度が急激に下がることは無く “ジュー” という魅惑的な音を立ててくれた。あふれ出る肉汁や脂は片側に彫られた溝から流れ出し、その真下に油受けとしてお皿やカップを置けばテーブルを汚すことはない。五徳部分が絶妙にカーブを描いて設計されていることもあり、油受けの皿やカップの設置を邪魔しないのも嬉しい気遣いだ。


肉を焼いた感想は不思議な事にフライパンなどと比べて油の跳ねが少ないように感じられ、テーブルが思ったよりも油だらけにならなかったのは嬉しい誤算。これならば自宅のテーブルでステーキを焼いても問題は無いだろう。ただし、ステーキソースを大量にかけてしまえば、その限りではないが……。ちなみに、今回使用した肉はスーパーで購入した一般的なものではあったが、鉄板特有の蓄熱効果により熱が均一に入ったことで柔らかに焼き上がり、普通の肉がワンランクアップしたような美味しさを感じることができた。特別な鉄板で焼いたという思い込みもあるのだろうが、そのイメージも同製品ならではのプラシーボ効果として評価したい。

実際に「覇鐵鉄板【嗜】」を使用した感想は、ソロキャンプまたは贅沢な孤独のグルメを味わうには最高の鉄板であることだ。サイズ的には小さいながらも一人前のステーキや焼き肉を味わうだけの領域を確保しており、室内の使用では100均のアルコールストーブや固形燃料でも十分に楽しめる蓄熱性を保持している。そして、何よりも一般量販品ではなく精密金属部品の加工メーカーが作ったという “特別感” はコダワリを重んじる趣味人たちの琴線を刺激し、同製品を選ぶ大きな理由になりそうだ。
同商品はテレビ東京の公式クラウドファンディングサイト「ナナ福神」でも紹介中。価格は、五徳セットの早期割が1万3200円、1万4850円(各20セット)、1万6500円(60セット)。通常価格は1万8700円だが、「覇鐵鉄板【嗜】」本体のみも展開しており、こちらは早期割だと9780円(50枚)と一万円以内で購入可能だ。
金属加工の達人が手掛けた「覇鐵鉄板【嗜】」が気になるという貴兄は、ナナ福神のサイトを介してクラウドファウンディングに支援してみてはいかがだろうか。蓄熱性をはじめ、細部にまでこだわった本格鉄板がきっと、ひと味違った贅沢な時間を与えてくれるはずだ。
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