達人に訊く
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2021/9/21 20:05

古くから活躍してきたクギの種類と使い方 後編・ドゥーパ!資材館【4】

ビスにその座を追われてしまった感もあるが、古くから木材の接合に活躍してきたクギ。前回はクギの基礎知識や丸クギのバリエーションなどを紹介したが、今回はちょっと変わったクギたちを一挙に紹介!

 

主にインテリアで使われるクギ

サカメクギ
スクリュークギと呼ばれることもある、軸がスクリュー加工されたクギ。一度打ち込むと抜くことは非常に困難。写真の例は軸の太さが5mm程度と太く作られたタイプで、羽子板などの建築金具を柱や梁などに固定するために使う。

 

隠しクギ
おもに接着剤を塗った薄板の接合に使われる。頭に取り付けたプラスチック部分で材を圧着し、接着剤が硬化したら、頭のプラスチック部分をカナヅチで横から叩き、プラスチック部分から上を折り取ってしまう。接合部分には軸が見えるだけになるので、目立たない。

軸のプラスチックがかぶる部分の位置に切れ込みがついていて、ここから折れる

 

仮クギ
隠しクギと同じ原理で、薄板を圧着するのに利用される細クギ。軸径が0.9mmと細いので、曲げないように打つのに注意が必要だ。このクギは頭を折り取るのではなく、圧着後はプラスチック部分をペンチなどでつまんで引き抜いてしまう。

 

木クギ
円錐形に加工した硬木で作られた木製のクギ。和物の家具、建具等の組み立てに使われる。使用するとき接着剤を併用しなければ、作品を容易に分解することができる。使用するときはきつめに下穴をあけてから打ち込む。

 

合いクギ
軸の両側が尖っているクギ。クギを隠して材を接ぐために使われる。クギの頭がないため、下穴が必要だが、きれいに接ぐには正確な墨つけと下穴あけが必要になる。下穴をあけたら片方にクギを差し込み、もう片方をかぶせて、当て木をして材を叩いて打ち留める。

 

アンティーククギ
欧米の古い家具などに使われたクギを再現したクギ。頭のデザインはもちろん、打ち込んだら見えない軸部も再現されている。原則下穴をあけてから打ち留める。ワックス仕上げや、エイジング塗装した材によく合う。どこでも販売されているものではないので、見かけたら購入しておくのが得策。

手作りなので1本ずつ微妙に仕上げが違う
頭のデザインが不規則なところが個性的

 

糸カスガイ
木工で使われる小さなカスガイ。建築やエクステリアで使用する軸太さが8mm程度あるカスガイに比べて、こちらの軸径は3mm程度で作られている。作品をぴったり接合するのはもちろん、材と材の間にわざとすき間をあけて接合するときにも使うことができる。

 

波クギ
材を接いだり、割れ止めとして使われる波状をしたクギ。箱作品の角部分の接ぎなどにもよく使われる。クギ自体の高さがないので指でつまんで立たせにくい。指でうまくいかない場合は、ラジオペンチなどでつまんで支えてから打つとよい。

留め接ぎにした材の角部を波クギで接いだ例

 

飾りクギ
太鼓の革を張り留める場合は太鼓鋲、椅子の座面の革を張り留める場合は椅子クギなどと、使う場面によっていくつかの名前で呼ばれている。普通の丸クギを打った後で、クギ頭を隠すように頭にかぶせて打つ場合は飾りクギ、隠しクギなどと呼ばれる。写真は頭部分に装飾性の強い菊花をあしらった「菊」と亀甲をイメージした「亀」。

丸クギの頭のすぐ脇に打てば、クギ頭を隠すことができる。右が「亀」、左が「菊」

 

太鼓鋲
商品名としては太鼓鋲と呼ばれるが、このクギも使用する場面によって、上の飾りクギと同じように別の名前で呼ばれるタイプのクギだ。シンプルな飾りクギと見ても間違いではない。写真は黒く塗装されたタイプだが、白、赤、茶など何色か色のバリエーションもある。打つ場合は塗装がはがれないように木ヅチやプラスチックハンマーなどで打ったほうが安全だ。

使い勝手のいいシンプルな半球の頭

 

配線用ステープル
VVFケーブル等の配線を固定するための、ごく小さなカスガイ状のコの字型のクギ。絶縁のためにビニール被膜がかけられている。現在は電気工事士の資格がないとステープルで固定する配線作業は禁止されている。

配線用ステープルで固定された配線例

 

主にエクステリアで使われるクギ

カスガイ
カスガイといえばすぐ思い出すのがこちら。コの字型で両端が尖り、軸は9mm程度と太く、建築や仮設の現場で丸太、枕木などをつなぐために使われる。先端が2カ所あるのできれいに打ち込むには左右を均等に交互に打ち込むように作業する。カナヅチはなるべく重いものが使いやすい。

丸太の接合に使われた例
先に紹介した糸カスガイ(下)と比べたところ

 

カラー傘クギ
トタン波板などの波板を固定するためのクギ。広く押さえ防水性を高められるようにクギ頭に傘が取りつけてある。市販のカラートタンの色に合わせられるように、何色かのカラーで塗装されている。

上から見ると広い傘がついている

 

連結傘クギ
樹脂製の連結した傘にクギがセットされている。使用するときは1本ずつ切り離して使用する。こちらも各種波板の固定に使われる。波板の固定ではクギは山部分に打ち、山をつぶさない程度の力で押さえるように打つ。

ポリカ波板を打ち留めている例

 

カラートタンクギ
こちらもトタン波板を固定するクギだが傘はついていない。主に波板を壁として使うときに使われる。長さは25㎜と32㎜の2種類が設定され、市販のトタン波板の色に合わせられるように青や茶、ベージュなど10色程度のカラー設定がある。

トタン波板のカラーに合わせてクギを選べる

 

和クギ
鍛冶屋が鍛造で鍛えて作る日本のクギ。洋クギが進出してくる以前、明治初期までは使われていた。現在は樽やワッパ作り、民芸作品作り用にごく少量が流通している。四角い軸が特徴で、下穴をあけてから打つ。鍛造で赤めた鉄を水に漬けたときできた黒サビでおおわれている。打ち留めると材の表面に四角く残る頭の形も特徴的だ。

 

又クギ
逆V字の軸の両側が尖っているクギ。主に屋外で使う柵の番線や有刺鉄線、金網などを固定するのに使われる。どちらかというと仮設の組み立てに使われることが多いクギといえる。

丸太の柱に又クギで固定された番線