田舎暮らしの頼れる相棒、チェンソー。薪作りや枝打ちなど日々の仕事を能率的にこなすには欠かせない道具だが、価値はそれだけにとどまらない。もっとクリエイティブなDIYを楽しませてくれるし、じっくり大切に整備するほどに愛着を感じさせてくれる味わい深い機械でもある。そんな素晴らしきチェンソーライフに誘ういくつかのノウハウを紹介しよう。
今回はチェンソーを使った製材術を解説。丸太を玉切りして薪を作るのはチェンソーワークの定番だが、丸太を割いて板や角材を切り出すのも面白い。緻密に製材された木材にはないラフな風合いが、いつもとは違う創作意欲をかき立ててくれるだろう。
technique 1 フリーハンドで製材する
曲面を切り落とすように丸太を割いて、平面を作る。それを4回繰り返せば、断面が四角の板や角材になる。まずは補助道具を使わずにチェンソーだけで割く方法を紹介。
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01 丸太の木口に、垂直に切断ラインを引く。水平器を使えば正確に垂直線を引ける 02 反対側の木口にも垂直に切断ラインを引く 03-2 両面の切断ラインの上端を結ぶようにチョークラインをセットする 03-1 両面の切断ラインの上端を結ぶようにチョークラインをセットする 04 チョークラインを地面から垂直に引っ張り上げ、弾く 05 真っすぐにチョークの跡がついた 06-1 チョーク線のとおりにチェンソーで切り込みを入れる。力を入れて押すのではなく、チェンの回転にまかせる感じで切り進める 06-2 ガイドバーの角度は30度程度にして、必ずガイドバー先端の真ん中より下を使って切る。真ん中より上を使うとキックバック(刃が自分のほうへ跳ね返ること)しやすく危険 07 端まで切り込みを入れたら、丸太を180度ひっくり返し、木口の切断ラインが垂直になるように調整する 08 再び、切断ラインの上端を結ぶようにチョーク線を引く 09 チョーク線のとおりに切り込みを入れる 10 丸太を90度回転し、切り込み同士を結ぶ線が水平になるようにする 11 切り込みに合わせ、水平にガイドバーを入れて切り始める 12 両端の切り込みに合わせながら切り進める。ガイドバーを斜めにして、刃を長い範囲で使うと、真っすぐ切りやすい 12-2 ガイドバー全体を一度に動かすのが難しい場合は、まずガイドバーの手前を支点にして扇形に切り、次にガイドバーの奥を支点に逆向きの扇形に切っていくと、真っすぐ切りやすい 12-3 ガイドバー全体を一度に動かすのが難しい場合は、まずガイドバーの手前を支点にして扇形に切り、次にガイドバーの奥を支点に逆向きの扇形に切っていくと、真っすぐ切りやすい 12-4 ガイドバー全体を一度に動かすのが難しい場合は、まずガイドバーの手前を支点にして扇形に切り、次にガイドバーの奥を支点に逆向きの扇形に切っていくと、真っすぐ切りやすい 13-1 作業後の切断面。これがガイドバーを扇形に動かした部分 13-2 これがガイドバー全体を一度に動かした部分。右はV字形に、左は一定方向にチェン跡が残る
ラフな仕上がりでOKなら縦切りもアリ
より簡単に割きたいなら、丸太を立ててフリーハンドで縦切りするという手もある。当然、technique1の方法に比べればラフな仕上がりになるだろうし、熟練度によっても差がつくはずだが、チャレンジしてみるのも面白い。
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バンパースパイク(ガイドバーの根元付近にあるギザギザ)を支点にして切り込み、technique1と同様にガイドバーを斜めにしてカットしていく(*作業現場はオガクズを敷き詰めてあるので材を地面に置いたまま最後までカットできる。そうでない場合は材を安定した台に載せて作業するといい)
technique 2 割いた後の切断面を整える
切断面が荒れているときに、チェンソーを使ってきれいに整える方法(ブラッシング)を紹介しよう。
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01 technique1手順13の切断面を整える。まず、粗い段差をならす。ガイドバーを立てた状態で、段差の向きに交差させるようにソーチェンでなでて、段差を削る 02 段差がほとんどなくなり、毛羽立ちが残る状態に 03 ガイドバーを水平に寝かせて、ソーチェンで切断面をなで、毛羽立ちを落とす 04-1 なめらかな切断面になった 04-2 なめらかな切断面になった
technique 3 補助道具を使って製材する
市販の補助道具を使えば、チェンソーで、より精密な製材が可能になる。製材用の補助道具は一般的に「ソーミル」や「ランバーメーカー」と呼ばれ、ガイドバーを水平にセットして切るタイプと、縦向きにセットして切るタイプがある。ここではインストラクターの栗田さんが所有する、縦向きタイプを使った作業例を紹介する。
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01-1 栗田さんが25年ほど前にカナダで購入したランバーメーカー。同じものは入手困難かもしれないが、同様の機能を持つものが市販されている 01-2 ランバーメーカーをスライドさせるためのガイドレールとなるものを用意する。ここでは1×4材を使用 02 チェンソーのガイドバーをランバーメーカーに固定する 03 丸太の切断ラインとガイドバーの位置が合うように、ガイドレール(1×4材)を設置する。ここではtechnique1、2で製材した平らな面に設置しているが、曲面でもかまわない 04 ガイドレールは丸太に固定(ビス留め)しておく 05 チェンソーを始動させ、丸太に切り込んでいく 06-1 ランバーメーカーに固定したところを軸に、ガイドバーを上下に動かして丸太を切り、少しずつランバーメーカーをスライドさせながら切り進める。このときガイドバーの動きがねじれないよう、真っすぐ上下させる 06-2 ランバーメーカーに固定したところを軸に、ガイドバーを上下に動かして丸太を切り、少しずつランバーメーカーをスライドさせながら切り進める。このときガイドバーの動きがねじれないよう、真っすぐ上下させる 07 最後まで慎重に切り進める 08 切断完了 09 ここまでの説明を通じて、丸太に3つの平面ができた(上面=フリーハンドで水平向きに割いた面、右面=補助道具を使って割いた面、下面=フリーハンドで縦向きに割いた面)。せっかくなので、もう1面を割いて板を作ろう 10 再び、切断ラインとガイドバーの位置を合わせ、ガイドレールを設置する 11 手順05~08と同様にしてカットする 12 板ができた。きれいに製材された板にはないラフさが魅力。テーブル天板、ベンチ座面、床…何に使うか考えるとワクワクしてくる
曲面にガイドレールを設置する場合
ランバーメーカーのガイドレールを丸太の曲面に設置する場合は、水平にすること。そうすればガイドバーが垂直になり、垂直な面を切り出せる。
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01-1 レールがぐらつかないよう、しっかりと固定しておく 01-2 レールがぐらつかないよう、しっかりと固定しておく
写真◎門馬央典
栗田宏武 Hiroaki Kimura
カナダで開催されるチェンソーカービングチャンピオンシップで3年連続チャンピオンに輝いた経歴を持つ、国内チェンソーアーティストの第一人者。