12月の新月のときに伐採した真竹が乾燥し、ようやく竹炭焼きに取りかかれる時期になった。オイル缶を使った初めての竹炭作り。うまくいくだろうか?やってみなくちゃわからないけど、ちょっとワクワク、ちょっとドキドキ。でも、森のなかの炭焼きって、気持ちいいっす。
超簡単な窯作り、前途は明るい…
溝口秀士さんという方が書いた『すぐにできるオイル缶炭焼き術』(創森社刊)という本がある。「すぐにできる」というところが気に入って、さっそく購入し、その実践機会を待っていた。昨年の12月、山から真竹を切り出して2~3分割したものを乾燥させておいたのだ。1カ月以上経ち、ついにその時が来たのだ。
ただし、頼れるのは、溝口さんが書いた『すぐにできるオイル缶炭焼き術』だけ。しっかりと読み、なるべく素直にそのやり方を踏襲することにした。
まず窯を作らなきゃいけない。用意するのは使用済みのオイル缶。これは近くの整備工場でもらってきた。あとは煙突。溝口方式では「波トタンを巻いたもので代用」だったが、これは物置にあったストーブ用の古い煙突をそのまま利用。これをディスクグラインダー、金切りバサミ、ペンチなどで加工し、写真のような窯を作った。ここまでは超簡単。前途は明るい。
<オイル缶の窯の作り方>
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森に漂う炭焼きの煙と香り、これが幸せの時間…
某月某日、いよいよ決行の朝がきた。地面に穴を掘り、窯を沈め、煙突をドッキングさせてセッティングする。窯の底に竹を2段に敷き、その上に、竹を立てた状態でびっしりと詰め込む。ついでにお茶の空き缶に松ぼっくりや栗のイガなどを詰め込んだものを入れてみた。これも炭になるらしい。窯の周囲を土で埋め固め、これで準備OK。着火まであと少し。見上げれば、森に陽光が差し込み、小鳥のさえずりなんかも聞こえてくる。まさにイメージどおりの炭焼き日和。
まず、詰め込んだ竹の上に、乾燥したスギの葉や枝などの焚き付けを載せて着火。即うちわで扇ぎ、煙突から煙が噴出してきたのを見届けると同時に、空気口が煙突と反対側になるようにフタを閉め、今度はフタの空気口をあけて、うちわでパタパタと扇ぎ立てる。煙突から白い煙がもうもうと立ち込め、あたりに霞みがかかる。そこに陽光が差し込み、乱反射し、小鳥のさえずりがまた一段と激しくなる。これが、清く正しい、森の暮らしなのだ。
続いて、まだやることがたくさんある。焚き付けがなくなってきたら、空気口からさらに新しい焚き付けを投入し、追い炊きし、窯の温度を高くし、それに合わせて、空気口を少しずつ閉めていき、さらに煙突の煙が透明になってきたら、ふたたび空気口を5分ほど全開し、次にふたたび空気口をふさぎ、窯全体に砂をかけて密封し、最後は煙突まで抜いて、砂で埋める…などということらしいのだが、そのへんから雲行きがおかしくなってきた。
<竹炭の焼き方>
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第一、窯の中がどうなっているのかわからない。頼りは煙突の煙だが、透明なのか、ただ単に出ていないのかも不明。意味もなく空気口を開け、うちわで扇いで、煙を出してみたりもしたが、ま、とにかく、「竹炭は2時間でできる」を信じて、じっと待ったあと、意を決して、窯を取り出し、フタを開けてみた。すると、な、なんと、炭らしきものが窯の中でしっかと立ち並んでいるではないか。ただし、正直に言おう。それは、炭らしきものではあったが、天に向かって、これは炭だとは言えないものだったのだ。半分は炭だが半分は茶色かったり、焦げている竹だったり…。思い当たる失敗の原因は多々ある。排煙口のすき間を完全にふさがなかったり、もしかしたら竹の乾燥も足らなかったのかもしれない。うちわのバタバタが足らなかったのかもしれない…などと反省しつつ、青空にリベンジを誓った。
PS:大量の「炭のようなもの」は、部屋の脱臭剤として活躍しています。
取材・文◎脇野修平
*掲載データは2017年2月時のものです。
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