里山の朝は空気をつんざくような2サイクルエンジンの轟音から始まる。刈り払い機(草刈り機)を使った雑草刈りだ。鎌(カマ)と比べて圧倒的な機動力を持つこの道具なくして、里山の暮らしは成り立たない、と思うくらいの必携道具だが、刈り払い機を長持ちさせ、安全かつ気持ちよく使うためには、地道なメンテナンスと整備が欠かせない。
最近びっくりしたのが、車のタイヤ交換をできない若者が増えたという話。ガソリンスタンドでお金を払ってやってもらうのだとか。おそらくそんな奴はマイカーのエンジンルームだってあけたことがないに違いない。腰が痛くなったジイさんならともかく、いい若いもんがめんどうなことはすべて業者頼り、お金で解決するというのでは、ちょっと情けないと思ったのだが、あなたはどう思います?少なくともそんな奴はJAFの来ないアウトバックには行けないね。
そんなわけで、今回は以前(本誌106号)、本欄で掲載した「刈り払い機の正しい使い方」で触れられなかった「刈り払い機のDIYメンテナンス」。車と同じように、とても簡単な作業なのだが、もしかしたら「自分でやったことがない」という人がいるかもしれない。刈り払い機は刃物がついた危険な道具でもあるわけで、日ごろの保守管理は自分や周囲の安全にもつながるし、もちろん刈り払い機の寿命を延ばすことにもなるのだから、しっかりやっておきたい。具体的には、刈り払い機のメンテナンスは、消耗部品の交換の判断とエンジンの始動不良の予防というのが主な目的だ。
なお、刈り払い機には、2サイクルと4サイクルの2つのエンジンタイプと電動式のバッテリータイプがあるが、ここでは現状では最もポピュラーな混合オイルを使った2サイクルのエンジンタイプをモデルケースにして説明してみた。刈り払い機は、メーカーや機種によって各部の位置が異なっているが、点検ポイント自体は基本的に同じなので、取り扱い説明書などをみてチェックしてほしい。また、4サイクルエンジンの機種も、燃料が違うくらいで、メンテナンスポイントは基本的に2サイクルエンジンとほぼ同じなので、参考になるはずだ。
<用意するもの>
最低限やっておきたい!刈り払い機のメンテナンスポイント
POINT1 点火プラグのチェック
毎回ではないが、20~25時間程度の作業ごとにチェックしたい。電極がカーボンなどで汚れていたら歯ブラシなどで軽く掃除する。濡れていたら、ガソリンで洗い、乾かす。なお、電極のすき間(火花の間隔)は0.6~0.7mm(ハガキ3枚分程度)が正常。電極が焼けて黒くなっている場合は交換。
POINT2 刈り刃の摩耗や破損をチェック
チップが埋め込まれた刃の先端が磨耗したり、変形している場合は、刈り刃の交換。たとえば、任意の3つ並んでいる刃の先端のうち、2個以上が欠けていたり、変形したり、先端のチップがなくなっている場合は、即交換。大丈夫な場合は、磨耗した刃先(チップ)をダイヤモンドヤスリで目立てして切れ味を再生する。
POINT3 ギヤケースにグリスを補充する
50時間程度の使用ごとにグリスを補充する。ギヤケースのヘッド部の側面のネジをはずし、そのネジ穴からグリスを注入。ネジを元の穴に取りつけるとき、ゴミやホコリがつかないように気をつけること。
POINT4 エアクリーナー内のエアフィルター(クリーナーエレメント)の掃除または交換
普通は25時間程度の使用ごとに、エアクリーナーケースのカバーをあけてチェックするが、ホコリの多いところでは使用後に毎回チェックしたい。汚れがあればはずして軽く叩く程度の掃除でOK。汚れがひどい場合は、混合オイルで洗い、固く絞って、乾燥してから取りつける。一般的には5~8年ごとに交換。
POINT5 アイドリングの調整
エンジンの回転が高すぎたり低すぎたりするときにアイドリング調整ネジを回して調整する。調子がいいときは触らないこと。
POINT6 燃料フィルターのチェック
汚れなどで詰まっていると燃料が回らずにエンジン不調の原因となる。
POINT7 各部の取りつけ部分をチェック
POINT8 刈り刃をはずしてヘッド内部を掃除
古い刃をはずす。ギヤケースの穴(ヘッド部横にある)に付属の六角レンチ(細い鉄の棒でもかまわない)を差し込んで、刃の回転を止めた状態で、コンビボックススパナで六角ボルトをまわして巻きつけ防止カバーや刃の押さえ金具をはずして掃除する。刃を固定している金具とヘッド部のすき間に泥や草が巻きついていたら除去する。なお、刃を固定しているネジは、逆ネジになっており、ゆるめるときは時計回り、閉めるときは逆時計回り。
取材・文◎脇野修平
*掲載データは2017年6月時のものです。
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