今回は、どこの住宅にもあり、目立たないけれどトラブルを起こすと面倒な、雨ドイ(雨樋)のメンテナンスがテーマ。簡単なメンテナンスが、手に負えないトラブルを予防する。
雨ドイの構造と掃除方法
<雨ドイの基本構造例>
軒先に設置され、屋根の雨水を受けて、まとめて排水するのが雨ドイ。
雨ドイは、年に一度程度、落ち葉の季節が終わったころに、軽く掃除をしてやるだけで、トラブルを未然に防ぐことができ、雨ドイ全体の寿命を延ばしてやることができる。取り付けてから5年以上、何もしていないという場合は、ぜひ、目で見て状態を確認してみたい。
掃除自体は、軒トイに溜まった枯れ葉や塵をホウキで払い、縦ドイの内部を、イラストのような、長い針金の端に雑巾をつけた手作りの掃除用具を使って掃除するだけと、いたって簡単な作業だが、雨ドイは軒先という高所にあるため、ハシゴをかけて作業することになる。このためハシゴを掛け間違えて、肝心の雨ドイ自体を壊してしまったり、作業する人が、ハシゴ上でバランスを崩して落下してケガするということも心配だ。安全には十分気をつけて、個人の責任において慎重に作業したい。
雨ドイは耐候性の高い樹脂で作られているが、屋外で使われる樹脂の宿命で、10年を過ぎれば、劣化が進み、接合部分にヒビが入ったり、割れることもある。全体の強度が落ちてくれば、高温や、雪の重みに耐えられずゆがんだり、ごみが溜まって雨水の重みで金具が曲がる、錆びるなどのトラブルが起きる。
雨ドイは細かいパーツに分かれているので、こうしたトラブルが単発で起きているものなら、パーツ単体の交換で対応できる。雨ドイのパーツは円筒の樹脂タイプのものなら、メーカーごとにサイズが規格化されているので、補修する雨ドイの径を正確に測定するか、補修部分を取り外して現物合わせで確認すれば、間違いはない。
<縦ドイの掃除例>
縦ドイの割れのメンテナンス
物をぶつけて縦ドイがひび割れることは、確率の高いトラブルだ。大きな割れの場合は縦継ぎ手を使って、割れた縦ドイ部分を交換することになる。雨水がしみ出る程度のヒビの場合は、雨ドイ用補修テープ(雨ドイの色に合わせて何色かバリエーションがある)を縦ドイに巻いて補修すればいい。
<ひび割れの補修例1>
<ひび割れの補修例2>
軒トイの交換方法
例えば、軒トイが垂れ下がって、雨がジャブジャブあふれてしまうなら、トイ受け金具とトイ受け金具の間で軒トイを切り取り、新しい軒トイを、軒継ぎ手を使って取り付ければいい。軒トイ、軒継ぎ手は、ホームセンターの雨ドイ売り場で売っている雨ドイ用接着剤で固定する。
<軒トイの交換例>
集水器の詰まりのメンテナンス
雨水の詰まりが起こりやすいのは、集水器の部分。ここは、いくつかの軒トイが集まる部分なので、詰まりやすい。詰まるものは、枯れ葉が土ぼこりや飛び砂と混ざって固まったものが多いようだ。風で飛ばされてきたレジ袋が詰まっていたという例もある。
イラストのような棒に、太さ2mm程度の腰のある針金(針金を曲げたハンガーなど)を取り付けた棒で、集水器の上から、詰まった部分を突きまわすと、詰まりを取ることができる。土ぼこりがふやける、雨の降っているとき作業すると有効だ。
取り付ける箇所の木部の補修方法
古い木造家屋の場合、雨ドイのトイ受け金具は、イラストの金具のように、軒の垂木や、鼻隠しに、直接打ち込む金具で取り付けられていることがある。トイが破損して、雨水が漏れ、金具を伝わって、金具を錆びさせた上、伝わった水分が木部分を腐らせてしまうというトラブルがある。日本家屋の場合、トイの打ち込まれた部分が、家を支える主要な柱構造の部分でなければ、腐った部分を切り取って、材を継ぎ足し、新しい金具と取り換え、トイの破損部分を差し替えるという日曜大工の作業で補修することができる。
<取り付け木部の補修例>
イラスト◎丸山孝広
*掲載データは2011年8月時のものです。