トリマー&ルーターを使いこなす、『ドゥーパ!』本誌でも大人気の本格木工企画より抜粋。今回は振り子時計作りをレクチャー。
幕板のデザインカット、飾り面取りをしたモールディングで、クラシカルな家具っぽさを演出した。一定の周期でゆっくりと揺れる振り子が、流れる時間に癒しをプラスしてくれる。
ポイントとなるトリマー&ルーターテクニックはこの3つ!
今回の振り子時計の形状は、壁掛けも直置きもできる箱型タイプを採用。
ビスを使ったのは蝶番とマグネットキャッチの固定のみ。本体の組み立てにはさまざまな継ぎ手を用いて強固に接合。ぴたりと収まった継ぎ手の美しさが作品に高級感をもたらしてくれる。
天板、棚板、底板は単純な突き合わせではなく、4枚刃ビットを使って通し大入れ継ぎで接合。また、背板と文字盤は小穴作りと呼ばれる継ぎ手を用いた。これは背板と文字盤の板厚と同じ4mm径ストレートビットで彫った溝に材をはめて組むのだが、背板だけは時計を調整するために、スムーズに上げ下げできるようにしたいので、側板の後方上部の溝は5mm径ストレートビットで彫っている。
扉枠の直角接合は、レール&スタイル ビットを使った框組み(かまちぐみ)で行なう。これはドアパネル作りによく用いられる継ぎ手で、今回は枠内にはめ込む板(鏡板)の代わりにアクリル板と中空ポリカを使い、中が見える構造にしている。
<木取り表>
<仕上がりサイズ> 幅約414×奥行約130×高さ610mm(組み立て時)
<主な使用道具> テーブルソー、インパクトドライバー(ドライバービット、センタードリルビット、10/13mm径ドリルビット)、ジグソー、ビスケットジョイナー、トリマー、トリマー用平行定規、ルーター、ルーターテーブル、ランダムサンダー(サンディングパッド100番/180番/240番)、耐水ペーパー(1500番)、金切りノコギリ、メジャー、留めスコヤ、クランプ、サシガネ、ノミ、カナヅチ、直定規、筆、ウエス、マスキングテープ、ハケ
<その他の材料> フラッシュ蝶番(長さ50mm)2個、プッシュ式マグネットキャッチ(26×42mm)1セット、ビス(16mm)、ビスケット(10番)、木工用接着剤、瞬間接着剤
振り子時計の製作に必要なパーツはオフ・コーポレイションでそろえられる 今回使用したのは、SKC振り子ムーブメント(924円)、振り子玉セットゴールド(550円)、時針・分針74㎜黒(176円)、秒針88㎜金(88円)、文字盤用数字セット20㎜ゴールド(253円)。これらは木工ツールのウェブショップ、オフ・コーポレイション で購入できる。文字盤の数字はブラック、シルバー、ゴールドの3色。針のデザインは10種類以上あるので、作りたい作品に合わせてチョイスしよう。*価格はすべて税込
Step1 天板、棚板、底板、側板、幕板の加工
01-1 側板を木取りし、通し大入れ継ぎの溝を彫る位置に墨線を引く。このように定規に対して鉛筆の先端をあてるように意識すると正確な線が引けるので覚えておきたい 01-2 この向きはNG 02 4枚刃ビットをトリマーに装着。刃の出幅は13mmにセットする(使用ガイド10mm厚+溝深さ3mmのため) 03 幅18mm、深さ3mmの溝を側板に彫る。ガイドにビットのベアリングを沿わせながら動かす 04-1 天板、棚板、底板、側板に文字盤と背板用の溝を彫る。使用ビットは4mm径と5mm径のストレートビット。溝深さは5mmで、位置は後述図を参照。トリマーに付属する平行定規を材に沿わせて動かそう 04-2 なお、平行定規には真っすぐな角材や板を取りつけて延長すると使い勝手がよくなる 05-1 棚板に振り子玉用の穴をあける。トリマーに平行定規をセットしたら10mm径ストレートビットを上から下ろし…… 05-2 平行定規を材に沿わせて削る。刃の出し幅を変えながら3回程度に分けて少しずつ彫ろう 06-1 トリマーに平行定規をセットし、6.4mm径U溝ビットで幕板Gの表面をデザインカットする。溝深さは2mmで、位置は後述図を参照 06-2 トリマーの動きを止めると、写真のように溝の端部分が焦げるので、常に動かすのを意識しておくといい 07-1 側板の木端と幕板の裏側に、ビスケットジョイナーで溝を彫っておく。使用ビスケットは10番。溝の位置は後述図を参照 7-2 ビスケット用の穴が彫れた
Step2 背板、文字盤の加工と各部材の塗装
01 背板と文字盤を木取りしたら、各部材をサンディング。サンディングパッドは100番、180番、240番の順に使う 02 各部材の塗装。通し大入れ継ぎの溝部分など、材の接合面には塗料が入らないようにマスキングする 03 好みの濃さになるまで、水性ニスを重ね塗りする。乾いたら耐水ペーパーをかけて仕上げる 04 文字盤は水性ペンキをローラーで塗った 05 文字盤にムーブメント用の穴、背板Pに壁面固定用の穴をあける。位置とサイズは後述図を参照。なお、背板Pの穴の径は、もっと大きくてもOK
Step3 各部材の組み立てとモールディングの加工
01 天板、棚板、底板、側板、背板を組み立てる。天板は側板の前側、棚板は側板の後ろ側とツライチになるので取りつけ位置に注意する。通し大入れ継ぎの接合面に木工用接着剤を塗り、当て木をしてハタガネで圧着 02 振り子時計のムーブメントを文字盤の裏側から取りつける 03-1 ビスケット(10番)を介して、幕板を側板に固定。溝に木工用接着剤を入れて組む 03-2 はみ出た接着剤は筆で塗り広げよう モールディングLMの飾り面取り。モールディング材は後ほど現物合わせでカットするので、長さ500mm程度の材を2本木取りし、モールディングビット【A】をつけたルーターテーブルで材の表面を削る 05 モールディングNOの飾り面取り。長さ500mm程度の材を2本木取りし、モールディングビット【B】の全体を使って材の表面を削る 06 モールディングJKの飾り面取り。長さ500mm程度の材を2本木取り後、モールディングビット【B】の高さだけを変え、ビットの上半分を使って材の木端側を削る 07 削った部分をサンドペーパーで磨く 08-1 モールディング材の端部分を現物合わせで45度にカットして…… 08-2 瞬間接着剤で固定していく 09-1 背板を出し入れできるようにするために、モールディングは固定する前に角部分をジグソーなどで切り欠く 09-2 切り欠いたら瞬間接着剤で固定
Step4 扉を作る
01 ルーターテーブルにレール&スタイルビット(オス)をセット。フェンスの位置はビットのベアリングと平行になるように調整する 02-1 ビットの高さは扉枠と同じ厚さの端材でテストカットし、写真を目安に調整する。高さが決まったら扉枠の木口側を削る 02-2 削る目安 03 続いてルーターテーブルにレール&スタイルビット(メス)をセット。ビットの高さは写真のように、オスの切り口に合わせて設定する 04 ビットの高さを調整したら、扉枠の木端側を削る 05 切断面はこのように仕上がる(右がメス側、左がオス側) 06 アクリル板はアクリルカッター、中空ポリカはカッターでカット。ホコリや木くずが付着しないように、静電気防止クリーナーを吹きつけておくと便利 07 扉枠の内側を塗装。これは組み立て後だとアクリル板と中空ポリカに塗料がつく恐れがあるため 08-1 扉枠の溝にアクリル板と中空ポリカを入れ、仮組みしてそれぞれの対角線の寸法が合っているかチェック 08-2 接合面に木工用接着剤を塗り、当て木をしてハタガネで圧着する 09 窓と扉枠のすき間を埋めるための細材を用意。テーブルソーなどで厚さ2~3mm×幅9mm程度の材を現物合わせで用意する 10 細材を塗装してすき間に埋める。うまくハマらないときはカンナで削って厚みを調整する。塗り残した部分に塗装をしたら扉の完成
Step5 扉の取りつけと文字盤の仕上げ
01 幕板の内側にフラッシュ蝶番を固定する。位置は端から50mmに設定。端材でガイドを作り、センタードリルビットで下穴をあけてからビス留めする 扉枠にも同様に下穴をあける。上下のすき間は、今回は2mmあけることにしたので、位置は端から48mmに設定(左手に持っているのは長さ48mmのガイド) 03 文字盤の数字を張りつける作業。まずは「12」から決める。時計の針をセットし、今回は長針の先端が数字にかかる位置にした 04 時計の針を回しながら、「3」「6」「9」の位置を決めたら、残りの数字も張りつける。長針と同じ長さのガイドを用意しておくと便利 05 振り子玉の長さを決め、金切りノコギリでカットする 06 プッシュ式のマグネットキャッチを取りつける。本体を棚板下にビス留めしたら、角のツメが上向きになるようにプレートを載せる 07 扉を閉めると扉の内側にプレートのツメ跡がつく 08 ツメ跡の位置にプレートを取りつけたら完成
村上英敏 Hidetoshi Murakami 正統派パイン家具にこだわる家具職人。アメリカで家具作りを学んだ経験から、さまざまな工具を合理的に活用する技術は折り紙つき。千葉県柏市にオーダー家具ショップ「ポプリローカルファニチャー」を構える。トライトンスーパーマイスターとして、さまざまなイベントでトライトン製品の講習も行なっている。YouTubeチャンネル「Triton Super Meister村上英敏の家具作り教室」でプロのテクニックを発信中! https://www.popurri.co.jp/
写真◎佐藤弘樹
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*掲載データは2020年6月時のものです。